~出発。草原から渓谷へ~
(「彷徨える霊魂の草原」転送陣設置場所)
ここに到着後、皆と話し合った結果。
私はホープさんと二人で組むことになった。
スノウさん曰く出る前に大方こうするのは決めていたらしく、ホープさんが言うには前のこともあり私たちは囮と言うことだそうだ。
ロ)「それじゃ。レイカさん、ホープさん。俺達はそろそろ行きます。そっちはそっちで気をつけてください…なんて、冒険初心者が言うことじゃないですよね!」
ホ)「ですねぇ。とは言えお心遣いは感謝します。そちらもお気を付けて。そしてセレストで合流しましょう。」
こうして、パーティーを2つに分割し、行動は開始される。
ロイドさん達のパーティーが視界から消え、スタート地点からは私とホープさん以外の人は居なくなり静まりかえる。そして、それを確認したホープさんは口を開いた。
ホ)「では、そろそろ私たちも行くとしましょう。勿論、彼らとは別のルートで。」
レ)「ようやく出発ですね。よーし!」
ホープさんのOKだ。
私は待ってましたと言わんばかりに気合いを入れて歩き出し始める。
レ)「…歩きにくい……。」
が、この草原、歩き始めて数分。草原と言う名前が入っているにも関わらず、相当面倒な場所だと言うことが分かった。
その理由は
レ)「なぜか分からないけど、ここに生えてる草とか花…なんか靴の裏に絡みついてきませんか…?」
此処に自生している草花だ。
歩を踏み前へ進もうとすると、軽くではあるが足にペタペタとその身を使って"自ら"絡んでくるのだ。
レ)「このっ!」
あまりにもしつこいので私は足元の草を剣で刈り取ろうとそれを振り上げる。
ホ)「ストップ。」
が、止められた。
レ)「え?」
ホ)「此処の草、ペタペタとくっついてきて確かに面倒なんですが…実はこれ何でも張り付けちゃうんですよ。特に金属。」
レ)「えっと。どういう事ですか?」
ホ)「まんまですよ。」
そう言うと彼はハサミを一本取り出し足元に絡み付いてくる草をちょきりと切った。すると、ベタベタとした粘膜のようなモノがハサミに絡みついた。その後、その粘膜は水色に変色する。そうなった時にはホープさんがいくらハサミを開こうと力を入れてもびくとも動かなくなってしまった。
ホ)「…ね?」
レ)「うっわ。」
ホ)「金属に反応し、高速で硬質化、接着する性質…。布などにはこのような反応はしませんが、しつこいと言って剣など使ってしまうと抜けなくなっちゃうんですよ。」
レ)「……説明はありがたいんですけど…それ…どうするんですか?」
ホ)「一応この状態を解く洗剤を用意してます。ですが此処でやってももしかしたらまた何かの拍子にくっつけてしまうかもなので、此処から出てからにしましょう。」
レ)「洗剤…。」
ホ)「洗剤です。」
レ)「洗剤で取れるんですね……。」
こうして、足元の不便さを我慢しながら草原を歩く。ホープさんが言うにはこの草はちゃんと加工すれば質の良い接着剤になるらしく、幾らか持っていくらしい。
追記。この草の名前は「絡みた草」。変な名前だ。
時しばらく。進んで進んで進み続け、ようやく草原を抜けた。草原を抜けると同時。視界には灰色の空の下長く続く渓谷が広がった。
私は靴に着いた汚れをホープさんに渡された洗剤と布で擦り落としてから渓谷を覗き込む。
深い。メチャクチャ深いです。
もう底が見えません。はい。
レ)「深……!」
ホ)「彷徨える霊魂の草原を抜けてすぐにこれとは…。ふむ…。」
む。もしやホープさんのこの反応。
冒険モノでよく見るお決まりのあれかな?
レ)「え。もしかして"前に来た時と違いますねぇ"って言う感じですか?」
ホ)「え。前と同じですけど。」
レ)「同じかーいっ!」
違った。
うわ。ホープさんがアホを見る目をしながら口を隠して笑ってる…。
ホ)「プフッ…ダッサイ…フフッフフフフ…」
……ちょっとやられっぱなしも気に食わない。
そう思った私は辺りを見渡してから何もないことを確認し、谷底を指差しながらホープさんを呼んだ。
レ)「……あ。ホープさん。あそこ何かありますよ。ほら。」
ホ)「ん?何ですか?」
ーゲシッー
ホ)「は?ほ?え?あ…。あぁぁぁぁぁぁぁぁぁ~はははぁーいィィィ!」
いつもやれていない分、此処で仕返し。
油断してたのかあっさり誘導されてきたホープさんを谷底に蹴り落とした私なのでした。
(15分後)
ホ)「……ふぅ。」
レ)「あ。上がってきた。」
ホ)「全く…死ぬとこですよ。普通は。私みたいに慣れてなければ今頃そこらの一般人のような容量でミートソースになってましたよ?谷底で。」
10分そこらくらいで突き落としたホープさんが帰ってきた。突き落としたのは私とは言え、ホープさんはかなり消耗している。
レ)「ふふっ」
ざまぁみろ。そんな意味を込めて私はホープさんを鼻で笑ってやった。
ホ)「ゴリラ2号が生まれそうで胃がもたれそうだ…。」
何か聞こえた気がするけど今はスルー。
私は疲弊した顔で服に着いた土埃をはたくホープさんに水筒を渡す。
ホ)「んっ…ぐっ…ぐっ…んっ。かーっ!染みますねぇ~!」
レ)「お酒飲んでるおじさんですか…。あーもう。飲み方といい反応がほぼそれなんですけど…。」
まるで缶ビールを開けてグビグビと飲むおじさんのそれなホープさん。それを目の当たりにした私は「うへぇ」と声を漏らしながらそれを見る。
そして思う。
こんな20代前半の男が居て良いものか。と。
レ)「…………」
まぁ。良いんだろうけど。
顔は良いんだし。
ホ)「ああ、そうだ。レイカさんに落とされてた途中、私一つ見つけたものがありまして。」
と、水を飲む手を止め、ホープさんが何やら気になる事を口にする。
レ)「見つけたもの?なんですかそれ。」
気になったモノが何であるのか。
気になるものは気になるので私は返事を返す。
ホ)「大量の遺体です。」
レ)「え。」
ホ)「恐らく転生者の仕業でしょう。遺体の状態的に原型がありましたし。時期的に最近のものと見ても良いかと。」
レ)「そう、ですか…。」
ホ)「…ひとまず進みましょう。形的にかなり嫌な感じですが、この場所に遺体を捨てているにも関わらず手が入っていない言うことはそこまで警戒をしているワケではなさそうですし。」
ホープさんの判断に私は首を縦に振り、応えた。
彼は
ホ)「恐らく警戒をしていないと言うだけではなく、来たとしても自分でどうにか出来る。対策を練るのが面倒。とも考えているかも知れません。もしこれが当たりならラッキーです。」
と、続けた。
私達は再度足を前に動かし、進む。
しかし、
進む前に谷底へ向けて黙祷をした。
報われる事は無いかもしれない、今更救いは無いかもしれないけれど、被害者達に祈りをせずに行くのは出来なかった。
ホ)「この渓谷を抜けたらそこから魔物がちょくちょく出てくるようになります。この大陸は外周は安全ですが、内側に行くほど魔物の数が増えてくるので…まぁ。楽に行けるのは此処を抜けるまでですかね。」
レ)「了解です。あ、そう言えば、ロイドさん達の方ってどういうルートから行ってるんだろう。」
ホ)「さぁ?どう行くかはあちらの意思に任せてますから分かりません。とは言え必ず離れているのは確かじゃないですかね。実際今私達が歩いているこの渓谷には彼らの足跡らしいものは無いわけですし。恐らく、彼方もそれなりに此方と感覚を開けつつ距離を取って進んでいるかと。」
レ)「何か…手慣れてると言うか、スノウさんとホープさん達って、何だかんだ仲良いですよね。こうしてパーティーを分けて行動しててもお互いの考えを理解して動いてる感じで。」
ホ)「……セリスさんはともかく、スノウさんとは冒険を始めたての頃から一緒ですから。お互いの事くらい少しは理解してないと。ねぇ?」
レ)「ですよね!あーあ、ロイドさんと私もそう言う関係になれたらなぁ~。」
ホ)「なれますよ。これからも関わりを持って日々を過ごしているなら……きっと。」
レ)「…はい!」
歩く渓谷はまだ続いている。
だけどまだ敵は現れず、比較的暇な時間が続く。
私達はまだ約束されたその暇をじっくりと使いながらその歩を進めていくのだった。
…続く
次回は水曜日から書き始めます。
…上げた今日(月曜日)は休みなのでこれからちょっと寝ます。うぃー。
(めっちゃどうでもいい情報)




