~第二のお客様~
「っだぁぁぁ…」
こんにちは。この物語の観測者さん。
前回よりの「レイカ=リ=フルール」です。
「んっん~♪本日もまた快晴♪清々しい気分でお店を開けますねぇ♪」
はい。この人はこの帽子屋。
「帽子の希望屋」の店主。「ホープ(偽名)」さん。
本名は確か…
「クロウ=マッド=フェイス」さん。
店の中限定ですが、常にピエロの格好で奇抜なステップを踏みたくる。言わば"変態"です。
「ホーッホーッホッホーッ」
「.......」
とにかく、前回のお話を見ていただいた方であれば既にご存じかもしれませんが、一応説明をしておくことにします。
私はある日、商店街をフラフラと歩いていたのです。「何を買いに?」と聞かれると、単に「お洒落」を求めて服屋さんとかアクセサリー専門のお店とか。そう言うところを見て回っていたのです。でも、何処にでもいる士官学生がそんなにお金を持ち合わせているかと言えば無いわけでして。
え?「お前は騎士の家の娘だろ?」…ですか?
ああ~。それについてですが。
(当時の商店街の道路)
「はぁ…私の家、お金とかには困ってないのに「お金の使い方はしっかりとした目的にのみとしなさい」だなんて。妙なところが固いのよね…」
と、まぁこう言う訳でして。
言わば
「決まりは緩いけど、何故かおこづかい関係には中々自由をくれない」
お家。ですからあまりおこづかいを貰っても額は他の子達とあまり変わらなかったのです。
そして。仕方がないと家に引き返そうとした私なのですが。そこで目にしてしまった。そう。見つけてしまった。何って?
「帽子の希望屋」ですよ。
いや、他と変わっていなかったら入ってなかった。
それは言える。けどその時の私は「お洒落」がしたい気持ちと「安くて良いもの」があるかもしれないと言う期待に勝てず…入ってしまったワケです。
……で。
(回想)
「契約書はちゃんと目を通さないと怖いですねぇ~。にょほ☆」
「のぉぉぉぉぉぉぉぉっ!」
散々振り回される結果になった上に!
半ば強制的に!
(不注意が原因だけど!)
このお店の看板娘。つまりアルバイトとして活動することになってしまいました。
で。今は何をしているかと言うとですね?
「今日もぉ~♪なぁかなか~っ!来ませんねぇ~?」
この通り、閑古鳥が鳴くこのお店のカウンターでお客様を待っているわけです。
「レイカさん?そろそろ終わりました?」
「うひゃあっ!?」
「あっはァ。驚きましたね?」
これまでの経緯について思い出していたレイカに対し、天井からロープで吊り下がるような形で勢いよく現れるホープ。
(勿論。顔面ドアップの位置である)
「驚くも何も真面目に仕事しろぉ!この変態店主がァ!」
ふざけた店主に対し、レイカは怒号と共にピエロの顔面に右ストレート。
ードバキャッ!ー
「ぶべらぁっ!?」
ジャストミート。
ホープはサンドバッグのようにぶらんぶらんとその場で揺れる。
ーブチッー
「「あ」」
そして衝撃と揺れる店主の重みに耐えかねたか。
それともレイカの拳がそれ程までに強かったのか。
ピエロ店主ホープをぶら下げていたロープは乾いた音と共に千切れ、同時にホープは床に激突。
「いたた…いやはや、前日と言い素晴らしい右ストレートですよ…ホント。」
とは言いながら、余裕を残した様子で服のホコリを手ではたき、ゆっくりと立ち上がるホープ。それを見つめながらレイカは不思議そうに口を開いた。
「そう言えば、何でホープさんはお店の中でピエロの格好をしてるんですか?その格好、普通帽子屋をするには向いてないとおもうんですけど…。」
その言葉にホープは「ふぅむ?」と唸った後、ニマニマと笑いながらクルリとその場で一回転。
「気になりますか?この格好の理由を。」
と、返した。
勿論それが気になってこの話題を聞いたレイカは
「はい。スゴく気になります。」
即答。
「よくぞ!聞いてくれましたねぇ~!レ・イ・カさん♪」
素直に答えを出した彼女に対し、ホープはこれでもかと喜びを笑顔と拍手で表現した。
「では!少しばかり長くなりますが、他の人にはまだ話していないところまでお話をー」
ーガチャリー
まさに今。良いところで秘密を聞けるとレイカぎ思った時であった。小気味良く店のドアが開く。
そう。
「ご来店どうもあ~りがとうございまぁす♪」
客である。
「い、いらっしゃいませっ!ぼ、あ。こちら「帽子の希望屋」ですっ!」
(こ、此処で来るのっ!?くぅぅっ。お店的には良いけど損した気分!)
こうして二人の前に現れた客。
身なりは「冒険者」。鎧を身に付け、背には透き通った緑の宝石がはめ込まれた剣。身長は170から少し上。と言ったところか。顔はそこそこに整った形で、髪は金髪。瞳は剣にはまっている宝石と同じかより済んだ色をしていた。
「失礼。そのー」
そう新しい客は口を開く
「帽子の希望屋。つまり帽子屋です。」
遮り気味に的外れな答えをする店主
「こら!失礼ですよ!」
「え?」
「まだなにも言ってないじゃないですか!」
店主としてあるまじき失礼を働いた店主に突っ込むレイカ
「「「…」」」
そして訪れる静寂。しかしすぐに
「ぼ、帽子屋さんでしたか。まぁ、確かに看板はありましたけど…ははは。」
空気を読んだのか、まるで説明を聞いて今此処を理解した。と言うような言葉を客は返した。
(まぁ、それでもずれてる気はするが)
「して、どのような帽子をお探しです?」
「ああ、えっとですね。俺、ちょっとした理由で冒険者してまして。」
「ほほう?」
「けど、俺まだ"此処に来た"ばっかりでこう言う…冒険の仕方とか…全然分からないんですよ。」
「ふむ。つまり案内をしてほしい。と?」
「いきなり来て初対面になに言ってるんだ。とか言いますよね。あはは…。」
何とも言えないといった顔で、その金髪の冒険者は右手で頭を掻きながら苦笑いをする。
「まぁ、此処に初対面のお客様に対してドッキリじみたことを仕掛けてくる無茶苦茶な店主は居ますけど…。」
レイカは冒険者の言葉に
「もっと酷いのが居るから大丈夫ですよ。」
と言う意味を込めて返事を返した。
「へ、へぇ…それは…」
(見た目からしてピエロ…だけど本当にそんなことしてんの!?この人!)
引いたのか言葉を詰まらせる冒険者。そしてその当事者であり呆れた顔をするレイカ。互いは顔を見合わせて苦笑する。そんな中、何故かこのちょっとの間静かにしていた店主ホープは口を開く。
「お客様。もしや"転生者"の方でしょうか?」
「えっ!?」
「…転生者?」
レイカは知らないのか首をかしげたが、客の冒険者はそれを知っている。いや、この場合「そうだ」と言わんばかりに驚きを見せる。
「お客様。お名前をお教えしてもらっても?」
「あ。はい。「シエン=ソル=ロイド」です。一応これが今の名前ですけど…」
「ふむ。ではロイドさんでいきましょう。そして、ロイドさんは今この世界の「案内」が欲しい…。ですね?」
「は、はい!」
「転生者…なにそれ。」
依然としてレイカは頭に「?」を浮かべた状態であるが、それを置いてきぼりにして店主と客の話は進んでいくのであったー
第2話です。
今回は2つで1話分となるお話になっているのでゆるりとお待ちいただければ。