~時に慌ただしい出会い~
時として私はふとした瞬間、自分でも考えたことの無い行動に出ることがある。
そう。私が何も考えていなかったような行動だ。
気がつけば事を起こしている。
例えば、今。
少し散歩をしていた私はいつの間にか隣国まで飛行し、大量の魔物をくっつけてしまっている。
魔物がどこから着いてきたのかはハッキリ覚えてはいない。ボーッとしていたからかだろうか。
魔物達からのちょっかいが痒い。
ーグオォォォォォオン!ー
夜空に向かい、咆哮する。
この声はどこまで響いているのか分からない。
これを人間が聴いているのかも分からない。
ただ、分かることは
「私は姿を出すだけで世の人々を驚かせてしまう」
と言うことだ。
(数日後)
「………」
「あらあら…。クロウさん、今日はお休みなんですか?」
シフトの時間になり、いつも通り"帽子の希望屋"にやって来た二人の目の前には2枚の置き手紙があった。
「読みます…。」
「はいー。」
「レイカさんとセリスさんへ。お二人共、来た時に私が居なくてビックリしましたか?んー。してないとは思いますが。ホホホ。さて、今日なのですが、私昨日レイカさんとロイドさん、それとスノウのアホにボコボコに殴られた上に剣で刺されたりして体がボロボロ。あちこち痛くて堪らないので家で休ませてもらいます。あーいてて。」
「そんなことがあったんですねぇ~。けど、普通人はそんなに蹴ったり殴られたりした上で剣で刺されたら普通死んでしまいます~。」
「はぁ…。もう一枚は「本日店長休み」ってあるだけですか。あっさりしすぎて元気なんじゃないかって思っちゃいますよ。」
こんにちは。
今日もいつも通りのレイカです。
「それで~。どのくらい刺したんですか~?」
今回はセリスさんと一緒です。
「えーっと、軽く16回くらい。ですかね?」
「えっ…?」
「あははははは!いやだって昨日は散々ホープさんに馬鹿にされて弄ばれたんですよ!?」
私は昨日の出来事を知らず、私達がホープさんを刺したと言うことしか伝わっていないからか、刺突した回数に目を丸くする。
勿論。このままだと私達3人が悪者みたいになるので、私は昨日の出来事をセリスさんに説明をした。
説明をしている間、お店には誰一人として来なかったおかげで話は1時間くらいで終わらせられた。
「ああ~。それなら刺されても仕方ないですねぇ~。」
説明をされ、事の詳細を知ったセリスさんはほわほわとした雰囲気で「納得しました」と手を合わせながら言った。
「最悪、一度殺して教会送りにしても良かったと思いますけどね~。ふふふ~。」
等と、同時に怖いことも口にしたが。
無論!絶対にそこまではしないのでそこは安心してくださいね。
(20分後)
「よし!お掃除!」
「お~♪」
ひとまず店のホコリを取るために箒とハタキ、モップとバケツを持ってきた。
開店から大分経ってしまっているが、やらないわけにもいかない事なのでちゃんとやる。
「~♪」
手慣れた手付きで箒を扱うセリスさん。
魔法でも使っているのか、箒を動かすとみるみる小さなゴミやホコリが自分から塵取りの中に入っていく。
気が付けば店内の床は箒だけでもピカピカになっていた。
「箒の扱い上手いですね!普通はこんなに出来ませんよ!」
あまりの綺麗さに誉めるしか出来ない。
「ふふ~ん♪」
セリスさんが此処、オルレニアに、この店に来て少し経った。
彼女は出会った時からあまり、慌てているとか、何かに怯えているとか。そう言うのは無かったから分からないけど…。
今。彼女の心の中はどうなっているんだろう。
最初からホープさんに心配をさせないよう振る舞っているのかもしれないし、私たちの事も気にかけてくれているのかもしれない。
心配性なのか、私は一見楽しそうに掃除をしているセリスさんに対し、こうして不安を覚えている。
「あの、無理とかしてませんか?」
ふと口に出た。
「え?」
それを聞いてこちらにゆっくり振り向いたセリスさんは「何が?」と答えた。
「会った時からですけど、セリスさん。妙に落ち着いてるから気になってしまって…。国が滅ぼされたのに冷静にこの国、オルレニアまで来てましたし。」
私はその後「普段何を考えているのか分からない」と多少失礼なことも口にした。
私の言葉に驚いたのか、セリスさんは目を丸くして面食らっていたがすぐに笑ってこう口にした。
「いいえ。別段考えているのは明日の事ばかりです。明日は何をしよう。とか、何を食べようかな。とか。」
「…」
「私、マイペースなので肝心な所で慌てたりすることが無くて。慌てたりしてもそれが表情にも出にくいみたいなんです。それのせいか、今のレイカさんみたいな事を時々聞かれたりしちゃうこともあります。」
「別にレイカさん達を気遣ってない訳ではないんですけど、そこまで深刻に捉えたりなんだったりしてませんよ~。」なんて、最後に付け、足取り軽くセリスさんは掃除を再開した。
「杞憂だった…。」
私はほっと息を吐いた。
セリスさんが特に無理をして今を取り繕っているわけではないと知って安心したのだ。
ただ、彼女がマイペースなだけだった。
「よし…!」
ハタキを持ち直し、ぱたぱたと展示している帽子のホコリを落としていく。
心配は引っ込み、考えもスムーズにまとまるようになったせいか。作業はその後時間を要すること無く終わってしまった。
「ふぅ…。」
「終わりましたねぇ~。」
今日はお客さんが一人として来ていない。掃除をしている最中にも来ることはなかった。一応窓から外を見たが外の道路にはたくさんの人でごったがえしている。こちらを見る人は居るが入ってこない。
掃除が終わり、店は綺麗になったが人は来ず。
掃除の意味があるのか。と疑問が浮いてくるが、それをハタキで煙を払うように追い出す。
(結局、その後も人は来ず。2時間が経過…)
「暇ですね…。」
「ですねー。あ。そう言えばカウンターの棚にお菓子とお茶の葉が置いてあるのを見つけたんですが~。」
掃除と整理が終わったものの、誰も来ないので暇が続いていた私達は外の様子を見ることにすら飽きてしまった。
「サボってお茶でもしましょうか!」
「ですね~♪」
そんな二人が菓子と茶を取るため、見ていた窓から目を離した。
その時でした。
「頼もーっ!」
と、大声が外から響いた。
あまりの声の大きさに耳を塞いで目を閉じる。
すると続けて
ーバダンッ!ー
店の入口であるドアから何かが吹き飛びそうな音がした。
「な、何事ーっ!?」
目を閉じながら私は叫ぶ。
すると何事もなかったようにしーんと辺りは静まり返る。
私はここでようやく閉じた目を開けた。
「なっ!」
「あらあらぁ~。」
目を開け、視界に入った光景は酷いものだった。ドアがあった場所はその形を残したまま。肝心のそれは無く。吹き飛んだであろうその物は"粉微塵"になっていた。
つまりはこうだ。
「ドア無くなってるっ!」
勿論、店内は先の衝撃で滅茶苦茶になっていた。
「わははは!すまない!人間の物は扱いが難しいな!」
ドアのあった場所の外から声がした。
二人は声のする方を見る。
「驚かせるつもりはなかったんだ!どうか許してほしい!わは!あははははは!」
そこには私とそう変わらない17か18位の女の子が立っていた。
黒くて長いマント。その下には布面積の少ない服。
ドアを触ったのだろう、突き出した右手は人のそれではなく、"竜"の手。足は普通の人間だったがチラリと後ろからは長い尾が見えた。
「私は炎竜の「メリナ」!この前此処らへんで世話になった者だ!」
得意気にそう口にした者。
ショートヘアーで燃えるような赤色の髪。
トカゲなど、爬虫類の様な目。その瞳は澄んだような蒼。
頭からは黒と金色の角が2本後ろに向かって伸びている。
「ど、ドラゴン…」
私は目の前の出来事に苦笑いしか出来ずに居た。
「そうだ!ドラゴンだ!」
………
…続く
2~3話で構成する予定です。
続きは恐らく土曜日から書くかも。
セリスさんは普段からのんびりしています。
仕事は早いですが日常などに置いて時々どんくさく、頼りすぎると何かしら起こしてしまうことも。
魔法においては右に出る者無し。




