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~何の変哲もない普通の日~


街を歩く。


視界には色んな店が目に写る。


武器防具、そして何かしらの加護を備えたアクセサリー。その数は多い。


賑わうオルレニアの街で。

今日は装備の新調と言う予定を引っ提げ、レイカとロイドは歩く。




「凄いですね~。これ。商店街以外でも武器や防具を取り扱うのがこんなにあるだなんて。」


「ふふふ…オルレニアは治安こそ平和そのものですが、"いざ"と言う時の備えとしてこの手の種類は多く取るようにしているんですよ。」


「いざと言う時?」


「ええ、それはですね。例えば大災害が起こったとします。ほら、あの魔物の大群が現れた時みたいなのとか。そう言うのに対して何も対抗が出来なければ真に平和は無い。と言うことで常に準備をしているのです。」


と、私は説明した。



どうも。いつものレイカです。

今日は何をしているのかと言うと、お買い物です。

買うのはロイドさんの新しい装備。前回の騒動で酷く損傷した装備を変え、次に備えると言うところです。



「へぇ…。つまり平和に甘えず、いつ起こるかもしれない災厄の為、常に国自身が行動を起こしている。と。」


ロイドさんは私の説明を自分なりに考え返してきた。うん、合ってる。それも簡潔にまとめてくるときた。


「流石です。まぁ、それで国の武器防具は品揃えが多いし、新しいものを探すなら此処が良いと思ったわけで。」


この言葉にロイドさんは「RPGならもう既に中盤クラスの街みたいだ」等と私にはよく分からない言葉を漏らしながら目に入る店のディスプレイを見ていく。


「うーん、「アイスメイル」に「光銀の鎧」、「竜鱗の戦鎧」…。高そうな割にえらく安いな。確かに備えは万全か。」


「国が武具を作る職人に対して素材を送るなどのサポートをしていますからね。売るにも素材的、資金的にあまり苦労が無い分、そりゃ安くもなります。」


「あ、レイカさん。女性用で「ビキニアー」


「そう言うのはいいですからっ!」


ゲンコツ。


鈍く、重たい音が響いた。


ードシャアッ!ー


続いて何かが地面に直撃する


「いったぁっ!?別に着てほしいとかそう言うのは言ってないじゃないですか!」


たんこぶが出来上がった後頭部をおさえながらロイドさんは起き上がる。我ながら凄まじい威力だ。と、私は内心、自分に感心しながらロイドさんを見た。


見せようとしたものがアレだったものの、本人には悪気は無いだろうし、少しやり過ぎた。反省。



「それにしてもこうも種類があると選びにくいと言うか、迷っちゃいますよ。」


そんなこんな、周りから「何をしてるのやら」と言う視線を貰いつつ装備を選んでいたロイドさん。選ぶのに迷い疲れたのか、先の言葉を口にすると大きく溜め息を吐いた。



「…そうですよね。店も多ければその分見られるものも多いのは当然ですし。」


そもそも選ぶと言っても、それらは"使う人"に合っていなければ上手く使おうにも使えない。


今の自分に合った装備を探さないといけない。




「あれ。レイカさんにロイドさんじゃないですか。何をしてるの?」


装備を選ぶ私達の背後。

ふと声をかけられた。


「「?」」


私達は二人してその方を見る。


「どう?ケガは治ったのかしら。」


そこにはにこやかに笑って私達を見るスノウさんが居た。


「スノウさん!あの時はありがとうございました!」


私はすぐにスノウさんの元に駆け付け、お礼を言う。それに続けてロイドさんも礼を口にした。


スノウさんは私達のお礼を聞いて


「大丈夫ですよ。後は大人がしっかりと片付けましたから。跡形もなく粉砕してやりましたよ。」


と、得意気に胸を張った。


その様子は、大の大人のくせに少しばかり子供っぽくて可愛らしいものだった。が、これを一瞬見る分には困らなかったが、その数秒後に周囲の視線が向けられるのを感じたのですぐさまやめさせた。


当の本人はそれにちょっと不服そうにしていたが、この人の家柄、私の判断は正しいと思う。


さて、話を戻して


私はスノウさんに今現在私達がしていることについてを話した。


「ふむふむ。なるほど。レイの件で装備にガタが来たと言うわけね。それで今装備の新調を。良い判断だと思う。それで、良いものは見つかったのかしら?」


「それが…」


「元々数が多いのは知っていたんですが…どう選ぼうか悩んでいる真っ最中で…」


私達の返答に彼女は「ありがちなことよ。平気平気。」と笑いながら答えた。そしてスノウさんは私達の前で人差し指を立てた。


「分かった。なら私もその買い物に付き合います。一応これでも冒険者としては貴女達より遥かに先輩ですし。私自身も旅の途中には何度も鎧や剣を変えたものよ。」


人差し指を立て、提案をしてきたスノウさん。

確かにそれはとても良いアイデアだ。


「良いんですか?」


「勿論!一応クロウの店ではお世話になったし、あの時は二人とも頑張っていたもの。先輩として何かさせて欲しいわ。」


「ありがたいですよ…。さっきから俺達二人して悩みに悩んだ挙げ句まだ装備、一つも決めてなかったんで…。」


「あるある。初期装備から新しい装備にする時、そうやって迷うのはよくあることよ。」


ロイドさんはスノウさんの言葉に照れながら後頭部を掻いた。


スノウさんは続ける。


「自分の得意な武器。そして今の自分に合った防具。意識は簡単だけど、いざ選ぶとなると最初はかなり苦戦するわ。特に防具ね。」


「へぇ…」


「何か新しくするもので軽く自分のイメージは出来てるのかしら?」


「えっと、取り敢えず武器は片手剣で…前に使ってたのがロングソードだったからそれに近いものにしようかな。と。」


「ふーん。間合いは前と同じような物で良いと言うことかしら。」


「はい。そこに関してはそう考えてます。後は俺自身、ちょっと風属性の特技が使えるようになったんでそこも合わせたいな…。」


「そう。悪くないわね。自分の慣れている武器種に慣れている属性のイメージが着いているなら話は早いわ。二人とも、私に着いてきてくれる?」


そうして私達はスノウさんに案内され、街の中枢区にある大きな店に着いた。


「でっけぇ…。」


その店を目にするなり、ロイドさんは目を丸くしていた。


「凄く大きいでしょう?此処は知り合いがやっててね。主に属性武器や属性に対する耐性を有している防具、アクセサリーを総合的に取り扱っている店よ。多分これなら他の店を別々で見るよりも早く、かつ良いものを選べると思うわ。」


私達三人は店へと入る。

店内は外からも見えるように、かなり広く、周りには動きやすい程度の幅を確保しつつも所狭しと言った感じに武器や防具が並んでいた。


「いらっしゃい。」


目の前に並べられた物達に目を丸くしていた私達の前に、一人。少しガタイの良い60歳程のご老人が現れる。


「元気そうね。ラルフの爺。」


と、現れた相手にスノウさんは挨拶する。


「ああ。久しぶりだな。前に此処へ来たのは2ヶ月程くらい前か。」


「そうね。確か「白猟狼の瞳」を買った時ね。」


「どうだい。あれは恐怖と機動力低下を無効にしつつ氷結と岩、土の属性に対して強い耐性を付与するアクセだが…。機能してるかい。」


「ええ。何も問題は無いわ。」


自分の提供した物が機能していると知り、ラルフさんと言う人は嬉しそうな顔をした。そして、くるりと私達の方へと向きー


「で。そこのお二人は御弟子さんかい?」


「えっ。あっ!初めまして!レイカです!わ、私は冒険者と言うか…この街の士官学校の生徒で…。」


「ほほぉ。となると此処等じゃ一番デカイ学校の方か。で。そこのもう一人は?」


「はい!俺はロイドって言います。皆さんとは違って、別の世界で死んで…そこから来ました。皆さんが言う転生した奴の一人だとでも思ってくれれば!」


「真っ直ぐな青年だ。それに転生者かい。スノウ。今回はえらく良いとこの出を紹介してきたじゃないか。」


「そうかしら。それはともかく…ラルフ。今回の用件はこの二人の新しい装備ってことなのだけれど。」


「あい分かった。」


ラルフさんはスノウさんに返事を返すとゆっくり此方を見て、眼鏡をかけた。


「それじゃあお二人さん。使ってた武器を見せてくれるかい。」


そして、ラルフさんはこう言った。


私達は言われた通りにそれぞれ使っていた武器を出す。ラルフさんはこれらを手にすると、剣を鞘から抜き状態を見た。



「もう良いよ。ありがとう。」


20分。

じっくりと私達の剣を見たラルフさんはそれらを返してきた。そしてー


「お二人さん、かなりコイツらを大事にしてたんだねぇ。刀身こそキズだらけだが、剣の光が消えていない。今時の若い衆にしちゃあ珍しいじゃあねぇか。」


ラルフさんは続けて「良いもんを見たよ」と満足そうに溢して笑う。


「ちょっと待ってな。ワシが二人の武器を見繕ってやるからよ。」


そう言って店の奥へと消えた。

だが、数分程度経った後、すぐにラルフさんは帰って来た。


2本の剣を手にしながら。


「ほらよ!」


ラルフさんは2本の鞘に入った剣を私達に投げる。


「おっと…」


「わっ…」


何とかキャッチ。

私は投げ渡されたものを見る。


柄は銀で装飾され、グリップには金色の皮で滑り止めが為されている。


「……」


黙って、ゆっくりと鞘から剣を抜く。


刀身は蒼く、前回使っていた剣より細身だ。

しかし、形状が異なると言うのに妙に手に馴染む。


軽すぎることも無く。重すぎることも無い。


「そりゃあ「水精の剣」と言ってね。水の妖精が住む付近からしか手に入らない金属を使ってる。グリップは綺麗な水場にしか居ない「ゴールデンブル」の皮を巻いてる。手の滑り止めとしてはかなり優秀だし、耐久性も抜群。どうだい。」


「すごい…。凄く馴染みますよ!これ!」


「そうかい。じゃあ会計は15万Gで。」


「高いっ!?」


「いえ。今回は私が二人の分払うから。安心して。」


「良いんですかっ?」


「この前頑張ってたからね。ご褒美ってことです。」


「やったぁ!ありがとうございます!」


こうして私が剣を貰い、ラルフさんとスノウさんの前で舞い上がっている中。ロイドさんは自らに勧められた剣を見ていた。


「……」


興味深そうに黙々とそれを見ているロイドさんにラルフさんは声をかけた。


「兄ちゃん。どうだい?緑の刀身に、グリップは竜皮。装飾は封風石を嵌め込んだ金。風属性の魔力の伝導率が良い素材を使ってる。鉄は渡り風の丘のモノを使ってるんだが…。これで良いかい?」


「はい!ありがとうございます。これにします。」


「あいよ。後でスノウから代金は貰うから持ってってくれ。」


無事にロイドさんも新しい剣が決まった。


次は防具。

だが私はまだ制服でいいと先に言った為、これを選ぶのはロイドさんだけとなる。先ほどのように防具も見繕ってもらえば良いのではないかと思っていたが、ラルフさん曰く


「剣はまだしも、防具に関しては本人が合ってるものを探すしか無いからねぇ。」


とのことで、これは自分で選んで欲しいとのことだった。


そのため…


「重い…」


「機能は良いけど派手すぎ…かな?」


「動きにくいな…」


悪戦苦闘。


「これ…短いマントとか格好いいし、そこまでガチャガチャしてないから動きやすいな…。これだ!」


…と。こうして決まる頃には夕方になっていた。


店を出る。


「いやぁ…初期装備から進化したって感じで…心がスッキリしてるなぁ…!」


清々しい顔でロイドさんは言葉を発しながら伸びをして、空を見上げた。


決まった鎧のメインカラーは銀と緑。金属部分は動きやすさの為に比較的少ないものの、布部分は特殊な素材を使っているとのことで丈夫だった。


選んだ本人は「マントの淡い青も良い!」と言うのもあって選んだそうだ。


ちょっと子供っぽい。


「役に立てた様で良かった。」


はしゃぐロイドさんの後ろ、スノウさんは嬉しそうに私に言った。


「今日はありがとうございました!」


私達はスノウさんに今日のお礼を伝える。

私達の言葉に少し照れ臭そうにスノウさんは振る舞ったものの、満更でもないのか「こちらこそありがとう。」と返してくれた。



スノウさんと別れ、ロイドさんは宿屋に戻っていく。



「今日は楽しかったなぁ…。」


私は足取り軽く家に向かう。


辺りはもうすぐ夜になろうとしているからか、街の道は徐々に街灯の光で照らされ始めていく。


さぁ、明日はどんなことがあるのだろう。


そんなことを考えながら私は歩く。


不安一つ。楽しみ三つで歩いてく。




…続く

体調快復!

と思ったら眠い!久々に仕事したけど疲労するのが早すぎて家に着くなりおねむになりがちです。


今回出た「ラルフ」のフルネームは

「ラルフ=スコット」。結構ムキムキのイケジジです。


店の名前は「セブンオールドワークス」。

街の武具専門店では一番歴史が長く、施設はかなり大きいものの、店主のラルフがあまり宣伝などをしない人なので店の中が人でごった返すことはあまり無いです。


しかし、スノウみたいな長い間冒険者をしている人がよく通うため、経営的には難無しとのこと。

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