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~トラブル解決~


…あれからどれくらいの時間が経ったのだろう。


気絶してしまった私には分からない。


けど、音は聴こえた。


凍てつく氷が砕ける音。

光の矢が何かを焼き貫く音。

怒号を飛ばしながら剣を振るわれ、骨が砕ける音。




「う。」


目が覚めた。


「…此処は。お店の、事務室。」


「あー。おはよ…ございます…。レイカさん…。」


気が付いたのは店の中だった。

誰が此処まで運んでくれたのかは定かではないが、どうやらロイドさんも私とほぼ同じタイミングで気絶していたのだろう。全身ボロボロの状態で隣のベッドに寝かされていた。


「これは一体…いっつ!?」


同様。


私もボロボロだ。

あの時はアドレナリンが多く出ていたから気が付かなかったのか、右足と左腕、加えて背中に激痛が走った。


下手に動けない。

動くとどうしようもなく痛い。


多分、背中は打撲。足と腕はヒビか折れてるのだろう。


仕方がないので大人しくベッドで横になる。


「レイカさん。あれなんだったんですかね…。あの、大量のアンデッドモンスターと…デカいドラゴン…ったた。」


「知りませんよ…。」


「ですよね…。」


「けど、助けが無かったらあの時死んでたのは…確かだと思います。」


「はは…ホープさん達には感謝しないと…ですね。」


ベッドの上。

二人で思い思いに言葉を交わす。

動けないからなのか、取り敢えずの安心からなのか、少し心が落ち着いた。




「おや。お二人ともお目覚めでしたか。」


しばらくして雑炊だかおかゆだか。

いや、どっちも似たような物だけど。

それを持ってホープさんが現れた。


「こちら、鮭とほうれん草の卵雑炊になります。」


「うっはぁ…っい。イテテ。旨そうだぁ…。」


「…ホープさん、お料理できたんですね。何か意外です。てっきり普段はお惣菜屋さんとかコンビニのお世話になってるかと。」


「店主たる者、常に備えやつかの間の調理くらい出来てなんぼですよ。」


「それもそうか」と、私は言葉にしながら差し出された雑炊を受け取る。


温かい。

雑炊から立ち上る湯気は長時間の戦闘で傷付いた体を心から安心させてくれる。


「あ…む。」


そして私は雑炊を口にする。


「あぁ…癒されます…。」


味は至って普通に美味しい雑炊だ。

鮭の塩気と卵の甘味が口の中で互いにゆっくりと広がる。


そしてほうれん草は出汁を吸ったのか苦味は無く、塩気と魚介の風味がする。食感は柔らかく、お米と一緒にするすると喉を通っていった。


「…そういえばホープさん。」


隣で同じ雑炊を食べていたロイドさんが口を開いた。


「なんでしょう。」


「あの、あの大量のアンデッドモンスターとドラゴンってどうなりました…?」


「ああ、そちらですか。そちらは私とスノウ、セリスさんでお二人の引き継ぎ、対処致しました。」


「…アンデッド達だけ。ですよね。」


「まぁ、一目瞭然でしょう。あれが襲われてるであろう事くらいは。周りの連中だけぱぱっと倒してやったらそのまま東の山に飛んでいきましたよ。」


「そう、ですかぁ……あー、良かったぁ…。」


事の顛末を聞いたロイドさんはこうして安堵の溜め息を溢しながら、残りの雑炊を掻き込み


「ごちそうさまでした!」


と、元気良くお礼を言ってさっさと寝てしまった。




「ごちそうさまでした。」


私もそれから少し経った後に食べ終える。


「ホープさん。」


「はい。」


「今日の事件はともかく、もしかして"知ってました"?」


私は疑問としていたことを口にした。


「何をです?」


「…悩んでいたこと。です。」


「ああ、「しらべハット」の試験の件ですか。」


「…あれ。都合が良すぎますよね。帽子の効果といいタイミング的にも。」


「ええ。"勿論"わざとですよ。」


「なんで」と私は返す。


「何故って。それは"貴女自身"が告げなければいけないと思ったからそのきっかけを作った次第ですよ。」


「……」


「ぐだぐだ頭の中で考えていたんでしょう。やれ"ロイドさんに言わなきゃ"とか、やれ"これを知ったら"とか。好きなんですか気持ち悪い。」


「そこまでじゃないですけど…まぁ、考えてました。」


「図星ですか。ほぼ。」


「恋愛観とかは無いですけどね。」


ホープさんは軽く鼻で私を笑い飛ばすと素早くそこでバク転して見せた。


「いきなりなんですか…。」


「仲間を思うのは良いことですが、それが過保護では意味が無い。ましてや"自己の考え"も伝えられなくては相手はその思いを逆に「面倒」と捉えることもあります。」


「…………」


「で。出来ましたか?貴女の考えを、心配を伝えるのは。」



…全く。この人は意地悪なのかお人好しなのか。

わざわざ回りくどくも面倒を焼いてくれたのだろう。


そして実際。その面倒で私はロイドさんに心情を話せた上に、走り出そうとする彼を止めることが出来た。


さらにその上、

「一緒に行こう」という約束まで。出来た。


「フッ……」


自然と笑みが溢れる。



「ありがとうございます。おかげさまで確かに伝えられましたよ。」


「なら結構。では親御さんには既に事は伝えてありますので、快復するまでお店で過ごしてください。動くのも無理があるでしょうし。」


「はい!」



(そして、数日ー)



「おおおお!ふっかぁぁぁっつ!」


「やっと家に帰れる~っ!」


二人は朝焼けの空の下、勢い良く店の扉を開けて外に出た。


つまり全快である。



「数日、ホープさんの料理とかあったけど、少し革とかの匂いが染み付いた部屋の中に居たから空気が旨く感じる…!」


ロイドさんは目を輝かせながら言葉を放つ。


「同感です!それと、ホープさん休日以外は奇抜なピエロ姿でテンションが高くて逆に疲れたりしましたし!」


私もそれに続く。

我が事ながら看病してくれた人に失礼極まりない言葉だと思う。


けど、


久々の日の光は何物にも代えられない程に清々しく、眩しいもので。


「すぅぅぅ…」


外の空気はとても澄んで美味しいものだった。


「と。快復したは良いものの、これからどうするんですか?」


と、ロイドさんは私にこれからの行動について聞いてきた。


一言ここで


「鍛練」


と言いたいが、病み上がりですぐにそれをやることは無理だ。折角セリスさんとスノウさんが魔法を何度もかけ続けてくれて治った骨や傷をまた開かせるのは良くない。


ではどうしようか。


希望屋の活動はしばらく大丈夫だと言われているし、士官学校は先日の騒動もあってか休みと聞いた。


やることがない。


私は「うーむ」と唸りながらロイドさんを見る。


ロイドさんの装備。ここ最近で出会った頃より大分使い古されているな…。修理の跡もある。それも前回の戦いのものだけでないものも。


そうだ。ならこうしよう。


「お買い物行きませんか?そう言えばロイドさん、ずっと最初の装備ですよね?」


そう。ロイドさんの新しい装備を探す。

ついでに私もそろそろ剣を新調する。これならこの先の事に対しての対応策になるし、その先も役に立つハズだ。


「いいですね。それ。確かに俺の装備、もうボロボロですもんね…。それに、見てくださいよこの剣。刀身をよく見ると傷だらけなんですよ。打ち直ししてもらうのも考えてるんですけど…。」


「…」


差し出される形で見せられた剣を私は観察する。

ああ、確かにこれも使い込まれ、傷付いている。

恐らくこれ以上の戦いがあればこれは道半ばにして折れる可能性が高い。


「どうですか?」


「そうですね。多分、良くてあと数回の戦闘で折れてしまうかと。」


「そっかぁ…。」


「多分、この前の連戦がかなり響いているんでしょう。まぁ、丁度いい機会ですし、これは教会にある武器の墓場に送るのが良いかもですね。」


「武器の墓場?」


「はい。名前の通り武器の墓です。冒険者は武器を変える時、使い古した武器を墓に送るんです。」


「へぇ…。それはまた丁寧な。人みたいですね。」


「ええ。だって武器も一緒に成長する仲間ですから。その最期はしっかりと弔わないと。」


「仲間。か…」


ロイドさんは自分の剣を見つめる。


「……ふっ」


そしてしばらく考える様子を見せ突然笑う。


「どうしたんですか?」


「いや、冒険の最初の仲間なんだな。って」


「…その剣が、ですか?」


「そうそう。そう思ったら墓に送るのは気が引けるな。なんて思っちゃって…。」


「なら、どうします?それ。」


「うん。やめます。墓に送るの。いい記念ってことでとっときます!」


「ふふっ。本当、優しいですね。ロイドさんは。まさか剣にまでそんなに優しくするなんて。」


私に言われてロイドさんは恥ずかしそうに笑って後頭部を掻く。


こうして、私達は荷物をまとめてから街の店を回ることにした。


資金はあの時の戦闘でメチャクチャ稼げている。


さぁ、いざお買い物!必要な物を揃えるぞ!



…続く

何とか書けた。

依然として体調不良は続いていますが書けましたので投稿します。


ひとまず「しらべハット」とトラブルのお話は終わり。


次回は装備品選び。RPGでも悩むところ。

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