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~風は何かを運ぶもの~


「凄いな…俺の元の世界じゃこんな綺麗な場所、秘境とか遠くにでも行かない限りは絶対会えなかったって言うのに。」


「へぇ…。ロイドさんの世界ってこう言うところ少なかったんですね。」


(オルレニア国領内 ~渡り風の丘~)


「いや、少なくはなかったけど…街から1日足らずでこんなところに来れるのは無かったからさ。」


ロイドさんはそう言うと、両腕を広げて、丘に隣接する海からの強い風を受ける。



どうも、レイカです。

現在、私達二人はホープさんの新作の試験。みたいなものの為に「渡り風の丘」に来ています。


「渡り風の丘」は、私達の居るこのオルレニアの街から約半日程歩いて着ける位置にある場所で、海がとても近く、ほぼ毎日のように強い風が吹いています。



「そう言えば、ホープさんの新作のお試しだったっけ。レイカさん。帽子は?」


「あ。はい!確かマジックポーチに…あったあった。」


私はロイドさんに今回の帽子を、肩から下げたマジックポーチから取り出して見せた。


「マジシャンが使いそうな帽子ですね…。シルクハット?」


ロイドさんは帽子を見るなり言葉を漏らした。

確かに、シルクハットだ。何の変哲もない。普通の。


「いつも通り被れば効果が出るってホープさんが言ってましたけど…。」


「取り敢えずまずは俺が被りますよ。」


私はロイドさんに帽子を手渡す。

だけど、少し気がかりが。


「待ってください。被るのストップ。」


「え?」


私は早速帽子を被ろうとしていたロイドさんを止める。


「何ですかいきなり。」


いきなり止められたものだからロイドさんは首をかしげて不思議そうな顔で此方を見てきた。


「いや、普通に帽子のお試しとかならお店でも出来ますよね。」


「あ。」


そう。普通は"こんなところでわざわざ試す"なんて事有り得ないのだ。帽子を試すくらいなら店の中でも出来るはずだ。


「何かありますよ。絶対。外でやらないといけない理由が。」


「…」


私達はお互い、シルクハットに視線を送りながら沈黙した。そりゃあ、わざわざ外でかつ街から離れた所でやらせるなんて何かあるに決まってる。


「でもどうします?これやらないとやらないでホープさんも困りますよね。」


「……」


確かに。そもそも此処で怯んでたら家にすら帰れない。


やるしかない。


「ロイドさん。」


「はい?」


「私がやります?その、ロイドさん、まだこの世界に詳しい訳じゃないですし。どこかに吹っ飛ばされたりとか、魔物を誘き寄せたりみたいなものだったら…」


こう提案を出した私だったが、ロイドさんはシルクハットを離さず。


「いや!そこはやっぱり男が危険を背負うべきですよ!俺がやりますからレイカさんは少し離れてもらって!」


と、頼れる笑顔で返事を返してきた。

ここまで言われてしまってはお願いするしかない。私はロイドさんに帽子を被ってもらう事にした。


「よい…しょ。」


帽子を被ったロイドさん。


すると


ー♪ー


突如、何処からともなく音楽が流れ出した。

私は辺りを見渡すが、誰も居ない。私とロイドさん以外誰も。


じゃあ、この音楽は帽子からと言うことになる。


ー♪ー


しかし、聴いていると心が安らぐような良い音楽だ。風がまるで音楽を運んできたような。優しく、されど力強い。


「しょっと。」


ロイドさんが帽子を外す。

するとピタリと音楽は止んだ。


どうやらいつも通りに被ることで効果を発揮する帽子らしい。


「なんだ。あんまり警戒するほどの事でもなかったですね。ははは!」


「ですね!にしてもこのシルクハット、名前からして「しらべハット」ってとこですかね?」


「音楽を流すシルクハットだけに「しらべハット」ですか。いや、また直球過ぎやしません?それ。」



確かに。私もホープさんみたいにネーミングセンス無いのかな。まぁいいや。それはそうとして。



「確か商品の説明書みたいなのも貰ってるんで、私見てみますね。」


出かける前、帽子を渡された時に貰っていた一枚の紙。その存在を今頃思い出した私はポーチを探ってそれを出す。


「ありました!」


「んー?どれどれ。」


見つけた紙は四つ折りにされていて、私はそれを開いてロイドさんと見る。


(手紙)

「説明書及び今回のお試しについて。今回のこれは「しらべハット」と言います」


私の考えてたのそのまんまだった!


「今回、渡り風の丘でその帽子を試してもらうと言うことですが…。お二人とも最近「私の事だ。何かあるに決まってる」とか思ってましたよね。ええ。多分。ね。」


その通りです。まぁ、危ないものではなかったから良かったですけど。


「私は悲しい!お二人とも普通に私の事信じてないだなんて!」


私達は顔を見合わせる。


「…そりゃ、ですよね。」


「死神森の件は絶対に許しませんよ。俺。あれは下手すりゃ死んでましたよ…。」


「本当…おかげで私も学校の制服買い直しになりましたし。」


前に酷い目に遭わさせておいて、今でも色んな意味で困らせてくるあなたの言うことじゃないです。


次。


「さて、本題ですが。その帽子は被った時。その場所に吹く風に反応して音楽を流します。更に。被る時期、つまりタイミングで違う音楽を流すと言う代物です。そしてその重要なタイミングの事ですがね。それは大きく3つほどあります。1つ。「風の状態」例えば嵐とかそよ風とか。そう言うのです。2つ目。「季節」もうこれはそのままです。最後。3つ目は「風に感情がある時」です。」



…風の…感情?



「風に感情があるのか。と思うかもしれないので説明はしっかりしておきます。これは言い換えれば「人の感情」を反映する。と言うことです。しかし、ただ人の感情を読み取ると言ってもそれは「風が運んできたもの」であり。つまり「何処かの人の感情を風が持ってきた」。難しいですが"人の感情が混ざっている風"に反応するわけです。」



ここまで来ると今回はかなり扱いが難しい感じだ。

ただ一概に楽しむだけではなく、人の感情を受け取り、音楽として出力するとは。


「つまり、悲しい音楽とか荒い音楽とかを流したら、風の吹いてくる方向に何かあるってことか…。」


帽子を見つめながらロイドさんが口を溢す。


うん。つまりはそう言うことだろう。


………………


もし、セレストの方向から風が来ていたとしたらどんな音楽を流すのだろう。


私はそんな事を思った。


二日前。

セリスさんがお店の新しい仲間として来た時。

色んな人が犠牲になったと聞いた、あの時。

多分セレストのあった所は今、たくさんの悲しみに満ちている事だろう。聞いていた限り、恐らくだが犠牲者達の遺体はそのまま野晒しになっている可能性が高い。


なにより、戦場に居なかっただけで、セレストの何処かに居る人達はどうなっているのだろう。


あまり良い想像は出来ない。


ー♪ー


「!」


不意に悲しいような、弱々しい音楽が流れた。


私は慌てて背後を見る。


「レイカさん。もっかい被ったんですけど、これ。」


ロイドさんは私を見る。


何処か心配そうな顔で。


「あ…」


しまった。

風は常に変化するもの。

いつまでも同じ方角に吹く風等ありはしないことを忘れていた。


「何か考えてました?」


「…………」


黙る。

多分こうしても聞いてくるから無駄だろうけど。


「何かすいません。でも、何か悩んでるんだったら相談とか乗りますよ。」


案の定。相談に乗ると言う言葉が私に飛んできた。

「別に大丈夫」と返したが、ロイドさんは私に


「1人で背負うことないですよ。ましてやレイカさんの方から吹いてる風がこう答えてるんだから。余程なんかあるのは明白じゃないですか。」


と、返されてしまった。


観念するしかない。


「実は…


私はロイドさんにこの前の事を。セリスさんの事や、セレストとと言う国が滅ぼされたこと。そしてその国を滅ぼした者が転生者であることを話した。


話を終えると、ロイドさんはその場にただ呆然とした様子で立ち尽くしていた。



「…………」


「伝えようとは思ってたんですけど…。同じ転生者のロイドさんにはやっぱり言いにくくて…。」


「何でですか。」


「その…、ロイドさんは悪い人じゃないですし…むしろドがつく程真っ直ぐと言うか、お人好しじゃないですか。こうして一緒に行動してくれたりして…ますし。」


「ならどうして言ってくれないんですか。確かに俺まだ頼りないかもしれないですけど。その話の奴が同じ所の出だとしたら俺が行かないと!」


「"そうなる"だろうと思ってたから言えなかったんですよ!そもそもあなたが旅をする理由で「同じような転生者を探す」って言ってたから!」


「…あぁ。はは。気を遣ってくれてた訳ですか。ははは……。」


「まだ、事に当たるとか、そう言うのは無理だと思うんです。いくらロイドさんがセレストに行っても、ましてや私やホープさんが着いていったとしても。それで解決できるような規模の問題じゃない。そう思うんです。私は。」


私は私の考えている事を伝えた。

「それを解決しに行くにはまだお互い力不足」

と言う事を。


それに対してロイドさんは少し考える様子を見せた後ー


「分かりました!悔しいけど全くもってごもっともだ。いくら転生して昔よか強いとは言っても無謀はありますからね…。」


と、悔しそうにしつつも何処か安心したような顔つきで私に言葉を返してくれた。


「ひとまず保留ってことで!」


なんて付け足して言いながら。



そして同時に。

いつか私達二人で。いや、もしかしたら三人とか四人かもだけど。「必ずセレストに行こう」と約束したのだった。



(その日の午後3時頃)


しばらくして、私達は荷物をまとめて街に帰ることにしたのですが…


お使いとかそう言うのは

「終わるまでが」

それなのです。


忘れてたけど。


帰るまでの道中、私達の前にちょっとした危ない冒険が待っていることなんて、当時は思いもしませんでした。


…続く

今回も2話以上の構成です。


帰りに「風来帽」が使えるのでは。なんて思ってる人が居るかもしれませんが、前回くらいにホープさんが持っていたのは第1話でレイカが持っていたもの。実は返していたんですねぇ。アレ。そして、肝心のそれは今もホープさんが持っています。


ズルい。

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