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壊れかけの断章

おだやかな、ありふれた

作者: 石見の人

「こんなところにいた。」


おや、久しぶり。

この時間は後輩たちの指導じゃなかったっけ?


「もう終わったわよ。

 調べものをしていたら見つかったから、来てみたの。」


そうなんだ、お疲れ様。

私はここ最近忙しかったから、少し景色を楽しんでいたところ。

戴冠式も半年後に迫ってきているから、こんな時間も最後かもね。


「そうね、次代の聖女様。

 しばらく会ってなかったけど、思ったよりは余裕があったのね。

 昔を思えば、変わってなくて安心したわ。」


それはお互い様。

出会い頭からのあれこれは、今も鮮明に思い出せるよ。

これから先のことは分からないけど・・・忘れたくないなぁ。


「ねぇ、本当に良かったの?

 役割は逆でも成り立っていたのでしょう?」


今更だよ。

それにこれは、私と貴女で決めたこと。

あと私の性格では、貴族の子女もいる候補生の中での立ち回りは無理。

貴女も知っているでしょうに。


「わかっているわよ。

 単なる確認。

 それと、「御子守りの樹」は「石の根」ともつながり、「星の調べ」が生育を促しているみたい。

 「椅子」だけじゃなく、こんなものを作り出しているなんて。」


久しぶりにみるね、その表情。

大丈夫だと思うけど、気をつけなよ。

誰だか知らないけど、本当に厄介なものを。


「まったくね。

 あのとき話し合った通り、貴女は内側から。私は外側から。

 どれほど掛かるかわからないけど、いつか必ず。」


うん。

貴女と出会えて本当に良かった。

どうか元気で。


「なに言ってるの。

 そんなにかからず会えると思うわよ。」


うん?


「私は元筆頭候補よ。

 「石の根」行きは確実でしょう。

 そっちへ行くまでに状況を整えておいて頂戴ね。」


ちょ、ちょっと待ってよ。

貴女は貴族でしょう?


「聖女選定に敗れた、ね。

 扱いに困る子には「名誉ある役職」をというやつ。

 という訳で、あちらに着いたらよろしくね。」


・・・また騒がしい毎日?


「変わらない日常、でしょう?

 出来る限りのことをしておくから、土産話を楽しみにしてなさいな。

 あいつらが気づいたら度肝を抜くようなことをしておくから。」


貴女の口から下町言葉が出てくると、凄い違和感。

ついぞ身につかなかったけど、あの上品な嫌味の応酬の仕方、今度教えてよ。


「いいわよ。

 楽しみが増えたわ。

 ・・・ここまでみたいね。」



「ああ、聖女様。こちらにいらっしゃいましたか。」


「司祭様。ごきげんよう。」


「おや、貴女もこちらに?」


「はい。何事もないとは思いますが、大事を控えた時期です。

 御側に控えておりました。」


「良い心掛けかと。

 半年後まで気が抜けません。

 皆で無事に戴冠式を迎えましょう。」


「はい。司祭様。

 聖女様はどちらまで?」


「大聖堂までお願いできますか?

 そこからは案内の者が引き継ぎますので。」


「承知いたしました。

 では聖女様、こちらへ。」



また面倒くさいご高説かなぁ。

それにしても、これだけ「聖女化」が進んでいるのに、なんで貴女にだけ私の声が聞こえているのだろうね?


「波長があったんじゃない?

 細かいこと気にしていると禿げるわよ。」


女の子に向けてなんてこと言うのさ。

はぁ、早く日常に戻りたい。


「そのためのこれから、でしょう?

 二人でやるのだから、文句言わないの。」


うん。ありがとう。


「どういたしまして。

 あと、私からもありがとう。」


え?


「ほら、もう大聖堂だからここまでよ。

 ・・・司祭様からのご依頼で、聖女様をお連れいたしました。

 お取り次ぎ願います。」


「ありがとうございます。

 それではここからは私が引き継ぎます。

 ご苦労様でした。」


「よろしくお願いします。

 それでは聖女様、いってらっしゃいませ。

 私もお勤めを果たしに行ってまいります。

 また後ほど。」


いってらっしゃい。

私も頑張ってくるから。

また後でね。

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