フォレストアントクイーン討伐作戦
現時刻は13:45
コロニー内正面入った入り口の大広間に、今日の作戦に参加する団員・・・討伐部門13人と支援部門から怪我にて戦線から離脱した支援部門団員や準団員も含めて43人、そして俺を含めて47名が集まっている。
作戦開始は14:00
出来ればこれを対フォレストアント関連の最後の作戦にしたい。
その作戦開始直前の決起を、4代目団長の俺がしなきゃならないのが、憂鬱。
「えー、これからアントクイーン討伐作戦を始めていきたいと思います。事前の打ち合わせ通り、14:00から囮班の討伐部門は3階で闇溜まりを破壊した後に、襲ってくる全てのアントを殲滅させてください。支援部門は右小手弓でサポートとと、死んだアントが戦闘の邪魔にならないよう次々と収集してください。」
囮班の団員達が頷く。囮班は討伐部門9名、支援部門20名・・・特に左右の小手弓を使用できる人を選出している。
「クイーン討伐班は作戦通り、14:02から俺とノムーとテッチョが護衛アントの引き付けを。パミロムはクイーンの首のみを狙って下さい。メーホーンはパミロムが失敗したら追撃頼みます。」
「俺が絶対仕留める。メーホーンの出番は作らん。」
「パミロムさんが例え失敗なさっても、私がキチンとフォローさせていただきますのでご安心ください。」
「チッ!!」
「あら、自信がないのでしょうか?」
「ほら!開始前から二人ともケンカしないで。支援部門は上の階からアントが引き返してきたら足止めお願いします。」
クイーン討伐班が頷く。
「これを最後の作戦にしましょう。皆、よろしくおねがいしましゅっ!」
しまった・・・・噛んでしまった。
「おいおい、今からクイーン倒すって言うのに、随分と堅いなぁ!緊張してんのか?」
「頼むぞー!4代目!!」
口の悪い奴らからヤジが飛ぶ。
「最後だと思うと緊張もするでしょうが!」
ちらほらと笑い声が聞こえる。
「さ、4代目。こんなことさっさと終わらせて、例の続きをやりましょう!」
囮班討伐団員のエトトが尻尾をフリフリしながら言う。
「そうだね。さっさと終わらせますか。全員、配置に。」
そう言いながら、俺はゆっくりと右手を上げる。
各自が持ち場へと散っていく。
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俺達クイーン討伐班は、8日前にも訪れたクイーン部屋の土壁前に立つ。
今日の門番役はドボルボさんだ。
「カウ・・・じゃなくて4代目、もう切り込みは入れてある。後は土壁を取るだけだ。」
もしフォレストアントが外に出そうなくらい溢れてしまったら、この土壁を俺達ごと閉じ込める、その為の門番。
「俺の手でお前たちを見殺しにさせないでくれよ。」
「そうならないように努力します。」
両親との約束もあるしな。あの二人より先に死ぬわけにはいかないのよ、俺は。
14:00
上の階がにわかに騒がしくなる。
始まったな・・・・。
「さて、俺達も頑張りますか。」
14:02
「開けるぞ。」
ドボルボさんが土壁を取り外す。
そこを俺を先頭に、ノムーとテッチョが俺の後を続いて入る。
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中に入る。
最初に俺が来たときよりも、光苔が繁殖して照らされているせいか、この場所は更に・・・神々しくなった。
この巨大な吹き抜けに、緩やかな下り坂の床は、光苔で明るく照らされ、本当にあと数分で演劇が始まるような・・・そんな空間。
「・・・4代目が話していた以上だね。」
ノムーが走りながら俺にそう語りかける。
「クイーンアントの大きさのこと?」
「違う。そんなアントのことなんかどーでもいい。この場所さ。ここは想像してたのよりも・・・凄いっ!!」
ノムーが抜刀しながら護衛アントへと飛びかかる。
今日は俺も片刃剣を使用。得意の複合弓はキラーアントにはあまり殺傷力がないからだ。
「ホントだよ!4代目ぇ!さっさとこいつら片付けて、遊んじゃいましょー!」
テッチョも双剣を構えながら二体目の護衛キラーアントに向かって走っていく。
俺達に気がついた護衛4体のフォレストアントは、攻撃してくる俺達へと完全に注意が向いた。
まあ、俺達はデコイだから役割通りだ。でもさぁ・・・俺、弓の方が得意なんだけどな。
右手に構えた片刃剣でアントの頚椎を目掛け振り下ろす。
ガッン!!
弾かれる剣・・・ちょっと角度がずれたか!!
失敗しつつも護衛アントを引き付けつつ、後退していく。
その俺達が後退しながら護衛を引き付けてると、中央にクイーンの姿が露になる。
もう、邪魔するアントはいない。
そのタイミングを待っていたかのようにパミロムが走りこんでくる。光苔で明るくなった場所を走るその姿は・・・まるで絵本に出てくるような『勇者』そのものみたいだった。
「4代目!!クイーンの首は貰うぞ!!」
「任せた!!!」
パミロムの体が少し沈み混み、手に持っている両刃剣が水平に走る。
その両刃剣の向かう先は、未だに産卵をしているクイーン、その首もと。
次の瞬間、クイーンの頭部は宙を舞った。
「カウル!前!!」
ノムーの声に、ハッとして前を見る。護衛アントの口が目の前!!
その護衛アントの首が切断され、一瞬で消える。
「余所見、厳禁ですよ。」
メーホーンの得物、三又槍の先に、アントの首が刺さっている。
「メーホーン!助かった!」
クイーンアント、4体の護衛アントの首は落とした。
「俺達はこのまま囮班のアシストに向かう!支援部門はアント回収とタマゴの処理をお願いします!」
「はーい!」「おう!」「わかりました!」「うん!」
そして坂道を上がり2階へ、そして闇溜まりのある通路へ行き、残党を駆逐していく。
こうして、30年と長きに渡たり行われてきた『フォレストアントコロニー制圧』。
今日、その念願であった目標がついに達成した。