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ナウ大森林討伐劇団  作者: つふら
プロローグ
5/34

3代目団長マロラ


『ナウ大森林討伐団』として独立した後、2代目が最初に行ったことは、組織編成や規律の整理。


協力者であった人々にも討伐団に加入するかどうかの選択肢をしてもらい、望むものには入団手続きをとり、正式な書面で契約を交わしていった。


まあほとんど全ての人が入団を決めたそうだけど。


資金・人手・物質が整いだし、ここからようやく(コロニー)に対して新たな動きを始めることが出来た。



無闇に穴を開けて、フォレストアントを外に出すわけにはいかない。そこで、(コロニー)内の外壁から少しずつ区画を切り取り、徐々に(コロニー)内部の巣を小さくしながら内部の地理を明らかにし、闇溜まりの破壊とフォレストアントの討伐を行うというその名も『切り取って追い詰めよう作戦』。


因みにその名を付けたのはまだ入って間もない10代の3代目だったらしい。今は『バブル作戦』に改名されている。


あの人・・・昔っからネーミングセンスだけはない。


(コロニー)の内部から切り取りしても、アントに破壊されては元も子もない。


なので薬医士が生物学者と共同製作した新薬『フォレストアントが嫌がる匂いのする薬』、建築士と鉱石学者の共同製作『フォレストアントの力では壊せない素材』の完成が、この作戦の大きな鍵。この薬と素材はバージョンアップを重て今も使用している。


勿論この名前も3代目がつけた。


幼い頃の3代目は研究者や学者からものすごく可愛がられていたそうだ。


因みに、ダサい薬の名前は改名し『アント回避香』、壁は『強化壁』って呼ばれている。


その薬を混ぜた土を使い、建築士の指示を受けながら、(コロニー)内部の壁沿いに、8m×8mの程度の六角形空間を作成。その内側に建築士が作成した図案通りに、工士達が強化壁で壁・天井・床を組み立てていった。


その空間内にいるフォレストアントを討伐し、また壁沿いに空間を作っては、中のフォレストアントを討伐・・・の繰り返し。


そして頃合いを見て闇溜まりを破壊。


勿論、死者や怪我をする団員も沢山いたそうだ。


2代目は死亡した団員の家族には金銭面での手当てを、怪我で討伐参加が難しい団員には、団の中で他の仕事につけるよう、引退後の生活保証や仕事の斡旋もしたようだ。


まぁその結果、畑あり、果樹園あり、教育施設や研究施設が出来、工場や店があり、宿屋や食事処や家が出来と、今現在のこの村みたいな状態に繋がっている。ここら一帯に住んでいるのは元団員か団員家族しかいない。


あと、新規団員にも積極的に指導を行って、死者の数を減らすようしたそうだ。凄いスパルタだったもんなぁ。


保証あり、教育ありってことで、団員への入団希望者は増え、様々な種族が集まるようになっていった。


それでも死者や怪我人は中々減らすことが出来なかった。


まだ若かりし頃の3代目を始め、研究者が更なる研鑽を重ねた結果、フォレストアントだけではなく『闇溜まり』から産み出される『バース』の種類や習性や弱点、攻略方法が綿密に蓄積されはじめると『バース』に対して命を減らす冒険者の数が少し軽減。


更に3代目を始め、研究者や鍛冶士が協力して新しい武器や道具も開発されてきたことで、討伐しやすくなった。


14年かけて(コロニー)内側の外壁全てに六角形の個室を作り終え、アントが外に出る危険性はほぼなくなり、後は内部の探索を開始するところまで準備も整った。


内部探索準備が整ったところで、団長として14年勤めてきた2代目は引退し経営・裏方へと回る。

そして本格的な(コロニー)制圧に向けて3代目団長にマロラが就任。


俺はその時、まだ6歳だったけど、マロラが団長になった時のことをよく覚えている。


『あんなに綺麗な女の人が、団長になるんだぁ』って、思った。


中身が壊滅的なのは後々理解した。


しっかりと準備を重ねて始まった本格討伐。これまでの停滞が嘘のように、徐々にアント達個体数を減らしつつ、地底湖への道を発見し、闇溜まりを潰す。また個体数を減らして・・・・と、更に14年。


クイーンアントがいる場所を特定し、その周りは最後の闇溜まりに続く道以外は囲い込んで隔離を終え、あとは最後の闇溜まりと、クイーンアントのいる産卵広間への総攻撃をかけるところまで追い詰めた。


今日の作戦、『クイーンアントを黙視確認する』っていう実はとっても大切な作戦だったのだ。


なのに、自分の開発した道具の使い心地をまず先に気にするとは・・・・3代目らしいと言えばらしいんだけども。


本部に戻ると、鍛冶室の棚に『済』と張られた俺の名前の張ってある箱。


流石ドボルボさん、仕事が早い。


箱に入った装備や道具を持ち、二階の自室へ向かう。


部屋の定位置に装備やら防具やらを置き、武器も立て掛けておく。いつもと同じ場所に置いておかないと、夜中にバースが襲ってきたときに、俺は絶対寝ぼけてわからなくなるから。


時測計を見ると、16:22


うーん。仮眠を取るには微妙な時間。


夕食は17:00からだから・・・本でも読んでるか。


*****************************


17:00から夕食開始。


といっても、『みんな揃って頂きます!』ではない。18:30から定例報告会があるので、その前に18時迄には夕食を取らなきゃいけない決まりなのだ。


「よーぅ、今日はお疲れ様!」


今日、囮側のタイムキーパー兼リーダー担当だったヘリュ。


「そっちもお疲れ様。」


「今さ、カウルが食べたフィアスラビットの唐揚げ、今朝俺が仕留めたやつなんだ、美味いだろー!」


「嘘だぁ、俺も3体狩ったから俺の獲物かもしれないじゃん。」


「なにいってんの!俺にはわかるぜ。『ワタシハ、へリュサンニ、カラレマシタ』ほらな!」


「なぁにが『ほらな!』なのか、俺にささっぱりわからない。」


「もー、冷たい!俺ともっと遊んでよー!」


(コロニー)やナウ大森林のなかじゃなければ、俺ら団員は歳相応のくだらない話をする。


20歳の俺と27歳のヘリュの年相応の会話なのか?と問われると・・・どうなんだろなぁ。


食後、それぞれ風呂に入ったり、自室に戻ったり、軽く酒を飲んだりと、過ごし方は人それぞれ。


開始5分前になると、各々集まってくる。


この団に入団すると必ずこの時測計が渡される。現在時刻と経過時刻(タイマー)が備わっている3代目の発明品だ。


3分くらいまでは体内時計でカウント出来るように訓練しているけど、こういう機械があった方がより正確。


まぁ、作戦遂行時に時間厳守しないと死んじゃうかもしれないしね。


団長であるはずの3代目が誰よりも遅くギリギリに到着し、定時報告会が始まった。


****************************


支援部門の総務部(経理・情報・営業)、人事部(教育・治安)、厚生部(薬医・調理・衛生)、開発部(鍛冶・研究・建築)の順で、それぞれ報告や提案や問題点など伝え、その場で解決出来るものと後日議論しなければならないもの等に分けられてサクサクと話を進めていく。


それが終わると討伐部門の報告になる。


討伐部門は現在14名。さっき、人事部教育班から『体験入学団員が15人辞退、現在0名。訓練団員2名も継続できるか微妙』って言ってたから、死人がでない限りは当面この人数だろう。


まずは午前中からの報告。


俺達討伐部門は午前中は4人一組(チーム)でナウ大森林に行き、収集と野良バースの狩り。午後は(コロニー)での個体数調整ってのがいつもの仕事。


必ず7日に1日は休息日を設け、よっぽどの事がない限り完全当番(シフト)制。これは2代目が現役団長だった頃に取り決めたらしく、現在も変わってない。


午前中の各チームリーダーが報告し、午後・・・俺の番だ。


「じゃ(コロニー)報告。カウル、初めて入ったクイーンの部屋はどんな感じだった?」


空気よりも軽い3代目の促し。


どんな感じ?


淡々と出来事だけ伝えようと思ってた俺の思考が止まる。


あの時、俺はどう感じたんだっけ・・・・。




「・・・カウル?どーした?大丈夫か?」


ヘリュの言葉で我に返る。


そうだ。


俺は・・・・あの時、思った。


「緩やかな下り坂、その先には吹き抜けの2階席からは勿論、どこの席からも見える舞台。その中央に・・・まるでこの国で一番の女優かのような存在感。まるで王都の劇場に迷い混んだような気分でした。」

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