出会い
「おやすみ」
両親にそう告げて、凪夜は自室に向かう。
(…寝たく、ないな…やること全部やり切ってから寝るまでのこの自由な時間は楽でいられるのに…)
しかし、意図せず寝たくないという願いは叶ってしまう。
部屋のドアを開けた瞬間、驚きで凪夜は息を呑む。
金髪の可愛らしい少女が、そこにいた。
「…!あっ、待ってましたよ、凪夜さん!」
「………は?」
知らない人が部屋にいて、しかも自分を待っていたというのだから混乱するのも当然だ。
しかし彼を最も困惑させたのは、その少女がふわふわと宙に浮いていることだろう。
「やっぱり状況が飲み込めてない…ですよね?…あっ!幻覚とかではないですからね!ほらっ!」
そう言って少女はスーッと凪夜の方へ行き、その肩を叩く。
真っ先に自分の頭がイカれたと思った凪夜は心なしか安心すると同時になおさら混乱した。
「お…お前は誰なんだ…?どうしてここにいる…?」
「私の名前はミラ。あなたにお願いがあって来たんです。」
「お願い…?」
「私が住んでいる場所は魔界と言います。こちらの世界は人間界、と呼ばせてもらっています。それで、魔界では人間界の負の感情から魔物が生まれて暴れるんですが…ここ最近魔物が大量に発生していて、魔界の魔法使いだけでは戦力が足りないんです…」
「う、うん…?え…?」
とりあえず少女の話を頑張って理解しようとする凪夜。
「それで!私たち使い魔は人間の願いを叶える代わりに魔力を与えて魔法使いとして戦ってもらう役割があるんです!」
「………えー、つまり俺にも一緒に戦って欲しい、ってことか?」
「そうです!結構困惑してたのに大雑把な説明であっさり理解してくれましたね。」
「まぁ…正直冷静に考えれば知らないうちに部屋にいるわ宙に浮いてるわでもうこの世界のもんじゃねーしな…」
と言ってもそれは彼がゲームやアニメ大好き人間だったからなんとなく飲み込めたのだろう。
これが勉強一筋の真面目っ子ならそう簡単には理解できない。
「じゃあ…どうですか?魔物たちと戦ってくれますか?」
「…願いを、叶えてくれるんだっけ?」
「はい!限界はありますが、大体のことは叶えられますよ。」
「そうか…じゃあ…」
ふぅ、と一息つく。
その気になれば今、自分自身で叶えることさえできてしまう願いを彼は言った。
「…死なせてくれ」