ありがとう
今日は短いです。
「…ありがとう、ロロ」
心からの感謝の気持ちが口から出た。
「僕、ないものねだりをもうしない。与えられたものを、最大限に活かしていくよ」
幸い、剣術は性に合っているようだ。厳しい鍛錬も苦ではないし、上達していることを実感するのは悪くなかった。
「僕、剣術頑張るよ。だから」
だから。
「次の剣術大会、見に来てくれるかな…? とはいっても、せいぜい2回戦か3回戦止まりなんだけど」
勇気を振り絞って聞いてみる。
「もちろん。ユーリに連れて行ってもらうわ。始めから強い人間なんていないもの。そこで諦めずに努力し続けられる人間が結果強くなるんだから」
ロロは快く了承してくれた。
(もう僕は、手に入らない魔力なんて欲しいと思わない)
今までもやもやとしていたが、霧が晴れ渡った気分だ。やるべきことがはっきりした。
「…そうだ、ロロ。庭園を案内するよ。ルーク公爵邸には花園がないだろ? 花を教えてあげる」
そう提案すると、ロロは目を輝かせた。
「お願いするわ、ドラフォン。ルーク様のお庭は木が多くて殺風景だから。わたし、花を知りたい」
「わかった。じゃあ、屋敷から花の図鑑持ってきてあげるから、それを見ながら案内してあげるよ」
そう言うと、ドラフォンは大慌てで図鑑を取りに屋敷に戻って行ったのだった。