ドラフォン頑張る
ドラフォンはロロの隣に座って夢見心地でいた。
学園ではクラスが違うから日中なかなか会えないし、登下校は常にユーリがそばにいる。
二人で話をする機会なんてそうそうなかったのだ。
目の前にある色とりどりなお菓子を前にして、ロロは目をキラキラと輝かせていた。
(…かわいい!!)
今日の装いは黒を基調としたシックな物だが、もともとロロはとても可愛らしい顔立ちをしているので、もっと明るい色の服装の方が似合うんじゃないか。
そう、たとえば自分の髪の色みたいな、燃える赤色とか。
可愛いロロをうっとりと見つめながら考える。
「ロロ、このお菓子なんかどうかな?」
ロロのお皿にチョコレートケーキを載せる。
「ありがとう! わたし、チョコレート好きなの」
「…うん、知ってる」
「え?」
「…だって、フィオナとかと一緒にカフェ行った時も、この前学園でお菓子を持ち寄った時も、ロロはチョコレート系のものを選んでたから。そうじゃないかなって思ったんだ」
顔が熱くなるのを感じながら、チョコレートケーキを載せた皿をロロに渡す。
「だから、今日はチョコレートのお菓子、いろいろ作らせてるから」
ロロに喜んでもらえるように手を回しといたのだ。
ロロは一口食べて笑顔を見せる。
「美味しい! さすが公爵家のお菓子は違うわあ」
「…ロロだって、ルーク公爵のところに住んでるから、変わらないでしょ」
「まあ、そうだけど。でも、ゲストの好みまでリサーチするなんて、主催者は大変ね」
「別に大変じゃない」
(ロロに関することなら、いつだって気にしてる)
「こんなに好みまで調べたのはロロが…」
ドラフォンがロロに攻め入ろうとしたとき、ちょっと離れたテーブルで歓声が上がった。
思わずそちらを見る。
離れたテーブルではルシファーとユーリを今日のお茶会に来ている少女たちが取り囲んでいた。
どうやら、ユーリが魔法を使って水を熱湯に変えてみせたようだ。
「さすが火の属性のユーリ様。これで新たに紅茶を淹れられますね!」
「少量だけの水を温めるなんて絶妙な魔力の制御ですわ!」
少女たちが次々に賞賛の声を上げているのが聞こえてきた。
ロロはそんな様子をぼおっと見ていた。別に彼女にとってはあんなこと珍しくもないのかもしれない。
魔法が当たり前に存在するとはいえ、持っている魔力を自在に操り制御するのはなかなか難しいのだ。特に少しだけ、たくさんは難しい。
でも、ロロは魔法を使うのが非常にうまいとフィオナが話していた。
才能があるのだそうだ。
(…僕には、その力はない…)
悔しくて、思わず拳を握りしめた。