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お茶会当日

「ロロ、我が家へようこそ!」


 グラフィス家に到着し、ユーリがいつものように先に馬車から降りてロロのエスコートをしようとしたら、「待ちきれない」と言いたげにドラフォンが横入りしてきた。


「…え。ちょ…」

 ユーリのことが目に入っていないような強引なドラフォンにあっけにとられたながらも、不機嫌な様子でユーリが声掛けしようとすると。

「ああ、ユーリすまない。ここはドラフォンにエスコート役、譲ってやってくれないか?」

 苦笑いを浮かべたルシファーがユーリのすぐ横に来て言った。

 不満そうな顔でユーリが見返すと、ルシファーは眉を下げてこそっとユーリに耳打ちする。

「ロロ嬢が来るとわかってから、ドラフォンは俺を指南役にしてフィオナを練習役にしてエスコートを必死で身につけてたんだ。ユーリはいつもエスコートをしてるじゃないか。譲ってやってくれ」

 そこまで言われたら仕方ない。そう思ったのだろう、ユーリはそれ以上何も言い返してこなかった。


 ロロはいきなり現れたドラフォンに驚き、目をパチクリさせていたが、すぐに笑顔になった。

「ドラフォン、今日はお誘いありがとう」

 そう言って、差し出されたドラフォンのまだ小さな手に自分の手を重ねる。

「よ、ようこそ」

 一気に顔を真っ赤にさせながら、ドラフォンはぎこちないながらもしっかりとエスコートする。

 そんな様子のドラフォンを見てクスクスと笑うロロ。

「顔が髪の毛と同じ色になってるわよ? 真っ赤」

「きょ、今日は暑いからな! …ロロ、今日の格好、可愛いな」

 女性の装いを褒めるのは紳士の務めだ。

 目を合わせては言えなかったのだろう。目をそらしてロロの格好を褒める。

「その、黒色のドレスなんて…かっこ良さもある」


 ロロは9歳の少女にしては大人っぽいドレスだった。全体は黒だが、決して喪服のような暗さはなく、スカート部分にはロロの瞳の色の青のレースを合わせている。ところどころロロの金髪を思わせる金の装飾がとても美しく、まるで夜空に浮かぶ星空のようだった。


 ロロは嬉しそうに微笑む。

「ありがとう、ドラフォン」

「うん…その、髪飾りも似合ってる」

 ロロの髪は今日は複雑に三つ編みをほどこされていたが、その脇に綺麗なバラのモチーフの髪飾りを付けていた。バラの花びらも青と黒が組み合わせてあり美しい。

「へへ、これはユーリにもらったの。レモンクッキーをあげたら、そのお礼に」


 可愛らしい二人を見ながら、ルシファーはしかしげんなりとしていた。


(まだ9歳の少女に黒いドレスねえ…独占欲半端ねえな…)


 となりの黒髪黒い瞳のユーリを見る。ユーリはロロと合わせてきているのだろう、同じく星空を思わせる黒を基調とした服装だった。

 ユーリはルシファーの視線に気づき、首を傾げる。

「…何ですか?」

「…いや、たかがクッキーのお返しにしたら随分と高額な物を返すんだなって」


(ただ単に自分が贈ったもので着飾りたいだけだろう)


 内心そうルシファーが毒づいているなんてユーリは知らない。

 するとユーリは「ああ」とにやりと口端を上げた。

「…あれは、『たかがクッキー』じゃありませんでしたから」

「へえ? どこの?」

「買える物じゃないんですよ」

「? 何それ?」

 ルシファーには意味がわからない。

 生粋の高位貴族である彼には、まさかコックでもないのに自分で調理場に入りクッキーを作るなんて発想はないのだ。

 よくわからないが、ユーリはとにかく自慢げだったので、とりあえず気にくわなかった。

 クッキーはロロがユーリのために特別に作ったクッキーです。ロロはそれをルーク公爵にも黙って全て独り占めしました。

 ロロのドレスはユーリの髪と瞳を意識した物でしたが、平民でまだ9歳のロロにはその意味はわかっていません。ユーリも意識せずに選んでいます。彼は無自覚な溺愛体質です。

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