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未来からの伝言  作者: 涼
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社内大騒動

■ 2018年5月11日(金)


今日は金曜日でやっと週末を迎える前日だというのに、明日、土曜日の天気予報は雨とのことで朝からちょっとテンションが下がっている。いつものように朝食を終え、家の外に出てみると見事な快晴なのだ。それなのに明日は雨が降るなんて、神様は意地悪だと思わされる。出勤時の電車の中でもう一度、明日の天気予報を確認してみたが、雨になっていた。天気図を見てみると西から低気圧が近づいてきているので間違いなく明日は雨だろう。明日は何をして過ごそうかと思いふけていると会社の最寄り駅に到着した。


朝10時前に出社して、いつものようにパソコンを起動する。昨日で開発しているメール管理システムの動作確認テストも無事に終わって問題はなかったので、今日はいよいよ本番環境に移行して来週からメール管理システムを稼働させる予定だ。俺は開発に夢中になっていたこともあって今週の月曜日にきた変なメールのことをすっかり忘れていた。本番環境移行の準備をはじめているとシステム開発部の日根野部長から呼び出された。


「水嶋君、メール管理システムの本番環境移行は今日だったね?」

「はい、今、移行の準備をしていました」

「社内全体のメールに関わることなので、くれぐれも障害を起こさないように注意してやってね」

「了解しました。動作確認テストの結果はこちらのファイルにまとめていますので目を通しておいてください」

「わかった。あと、池上さんなんだけど、もうデザイナーの作業はないでしょ?他の業務をさせても大丈夫かな?」

「大丈夫です。本番環境の移行は私と児島君の二人でやります」

「じゃあ任せたのでよろしく」

「はい。では失礼します」


日根野部長の言う通り、このメール管理システムは社内全部のメールに関わるので、障害なんて起こったら大パニックになりかねない。自分の席に戻って本番環境移行の手順書を作成して準備を進めていった。それと同時に同じ開発メンバーの児島信二にはもう一度、設計書に見落としがないか確認をしてもらっていた。こういう作業をしていると時間が経つのが早く感じて、もう昼食の時間になった。他の社員達はいつも誰かと昼食をとっていたのだが、俺はいつも一人なのだ。一人のほうが気が楽だし、これといって社内で楽しく会話できそうな人間はいないからだ。今日は豚骨ラーメンセットだな。そう思って会社から少し離れた場所にあるラーメン屋に向かった。そこのラーメンは豚骨ベースの醤油味でゴマとマー油がいいアクセントになっている。ストレート細麺でこのスープとの相性はバッチリなのだ。そして、セットでついてくる白ご飯もスープと一緒に食べると絶妙に美味しい。俺は週に一度は必ずこのラーメン屋に来ているが、唯一幸せを感じる時間といってもいいだろう。


昼休みも終わり自分の席に座った。設計書の見落としをチェックしてくれていた児島信二からも「見落とし等ありません」と報告を受けていたので、いよいよ本番環境へ移行する。移行といっても開発したプログラムをテスト環境のサーバーからそっくりそのまま本番環境のサーバーへファイルをコピーして、設定ファイルを本番環境に変えるだけなのでそこまで難しい作業ではない。ただ、本番環境のサーバーは他のプログラムも稼働しているため、余計なことはしないように注意しなければならない。午前中に作った本番環境移行の手順書通り、開発したプログラムを本番環境にコピーして、設定ファイルを変更した。あとはこのプログラムを稼働させるために、本番環境のウェブサーバーをリロードするのみだが、これをするにはサーバー管理者である水谷主任の許可が必要である。早速、水谷主任の席に行ってウェブサーバーのリロード申請を出した。ウェブサーバーのリロードは水谷主任が行うとのことでリロードしてもらった。そして自分の席に戻り、本番環境でメール管理システムの画面を開いた。画面表示は何の問題もなさそうだ。しかし、環境が変わったので念には念を入れるために児島信二にお願いした。


「児島君。一応、本番環境でデザイン関連の崩れがあったりしないか確認してもらえるかな?一応、本番のメールアドレスは使用しないで、テスト用のメールアドレスとパスワードの登録、編集、削除の確認もお願いしたい」

「わかりました。では確認それぞれしていきます。この確認テストはテスト項目書に記載しなくてもいいですか?」

「うん。本番環境での最終チェックだけだから、テスト項目書に記載しなくてもいいよ」

「わかりました。では確認していきますね」

「よろしくお願いします」


児島信二に確認してもらっている間に俺はテスト用メールで送受信のチェックを行っていた。そうこうしているうちにもう17:00になっていた。児島信二は「何の問題もありません」とのことで、俺も全てのチェックして何の問題もなかった。あとはテストデータを削除して、最後に社員全員のメールアドレスとパスワードのインポートをしておけば、月曜日からシステム稼働開始となる。それらの作業は一瞬にして終わった。そして19:00になったので日根野部長に全ての作業が完了して来週の月曜日から稼働させることを伝えて退社した。


■ 2018年5月14日(月)


週が空けた月曜日。土日の休日は雨だったのに快晴になっていた。本当に神様を恨んでやろうかと思う朝であった。いつものように10:00前に出勤した。いよいよメール管理システムを稼働させるのだ。朝の朝礼でいつものように社長が話しているが、ほとんど上の空で聞いている。社長の話が終わると社長秘書である西浦真美が「今週もみなさんがんばりましょう」といつものように言って朝礼は終わった。


自分の席について申請書を作成していた。メール管理システムを稼働させているが、現在のメールサーバーを変更しないといけない。そのためにはサーバー管理者である水谷主任の許可が必要である。早速、作成した申請書を水谷主任のところへ持っていってメールサーバーの変更をお願いした。メールサーバー変更の反映には1時間ほどかかるということで待っていた。これほどチェックにチェックを重ねて何度もテストしてきた開発プログラムなので障害なんて起きないと思っていた。ところが、1時間半ほど経った時から社内がざわめきはじめた。そして、システム開発部に社員数名がやってきた。


「すみません。総務部の多田ですが、メールの受信はできるのですが、送信するとリターンメールが返ってきます」

「こっちも同じです。メールの受信はできますが、送信するとリターンメールが返ってくるのです」


メールで障害が起こっているのだ。社員達は仕事ができないと大騒ぎになっている。俺は自分の会社用のメールで送信してみたが、やはり同じようにリターンメールが返ってくる。どういうことか全くわからないが、メール管理システムで何か障害が起こってるのは間違いなさそうだ。しかし、金曜日にあれほど送受信のテストを繰り返したはずなのに、社員用の本番メールアドレスだと何故このようなことになっているのか全く見当がつかない。ついに日根野部長に呼び出された。


「水嶋君。どうなってるんだ?社内のメールが送信できなくなってるようだ」

「すみません。テストでは何の問題もなかったのですが、どういうわけか社員用のメールアドレスだと送信できなくなっているようです」

「とにかくこれだと社員全員の業務に支障をきたすので、早く復旧させてほしい」

「わかりました。すぐに調査して復旧させます」


メールが送信できないというだけのことだが、これほど大パニックになるとは思いもしなかった。とりあえず児島信二にはプログラムの確認をしてもらい、俺はメールの送信サーバーに問題がないか調べてみることにした。何かのセキュリティに引っかかってるのかもしれない。色々調べてみたが、送信サーバーの設定には何の問題もなかった。さらに上部にあるネットワーク関連機器に障害が起きているかもしれないと思い、そこも調べてみたが何の問題もない。そもそも金曜日にテスト用のメールで送受信できていたのは間違いないのだ。もう一度、テスト用のメールアドレスを登録して送受信をしてみる。するとテスト用のメールだと問題なく送受信可能であることはわかった。やはり会社用のメールアドレスのドメインは何かセキュリティに引っかかっているのだろうか。児島信二のほうもプログラムに問題はないという回答をしてきた。こうやって色々と調べていったが特にこれといった問題は見つからなかった。しかし、社員達は混乱状態になっている。こんなことをしているうちに昼食の時間になったが、今はそれどころではない。なんとか原因を突き止めないと社内全体の業務に支障がでてしまう。焦って原因を探してる時、社長秘書である西浦真美が俺の席までやってきた。


「大変なことになってるようね」

「そうなんだよ。原因が未だに不明でお手上げ状態なんだよ」

「こういう時はまず冷静になったほうがいいんじゃない?」

「でも社員達は混乱してるし、焦ってしまうんだよ」

「そこを落ち着いて、もう一度見直してみるのがいいと思う」

「わかった。ありがとう」


そう言って西浦真美は自分の席へと戻っていった。たしかに、ここは冷静になってもう一度考えてみよう。まず、どうしてテスト用のメールアドレスだと送信できるんだろうか。そう考えていると児島信二が「テスト用に使ったメールアドレスってフリーのやつですよね?あれって送信サーバーが違うんじゃないでしょうか?」と言った。「それだ!」と俺は少し大きな声で言った。社内の送信サーバー自体に問題はないが、開発したメール管理システムは送信サーバーに通す前にフィルターを通す。問題があるとすればそこかもしれない。フィルター部分のプログラムも児島信二に確認してもらったが問題はなかったはず。しかし、考えられるとすればフィルター部分にある。その瞬間に俺はあることを思い出した。それは一週間前に送られてきた変なメールのこと。そこにはたしか「→原因はスペルミス」と書いてあった。まさかとは思うが、あの2033年の俺から送られてきたメールの内容によれば「近々、俺は会社で大きなミスをして社内中が混乱する」と書いてあった。それがこのことなのかはわからないが、一応スペルミスがないかチェックしてみようと思った。


「児島君。送信フィルター部分のプログラムに英語のスペルミスがないか、チェックしてみてほしい」

「わかりました。すぐに確認します」


すると児島信二はすぐにプログラムを確認して念入りに英語のスペルミスがないかチェックしていた。すると児島信二は口を開いた。


「水嶋さん。この部分を見てください。『Transfar』となっていますが、英語のスペルは『Transfer』ではないでしょうか?」

「それかもしれない!すぐに修正して反映させて!」

「はい、わかりました!」


プログラムを修正して反映させたところ、社員用メールの送信が可能になった。まさかこんな一文字のスペルミスでメールが送信できなくなるなんて思いもよらなかった。午後になり、メール管理システムが復旧したことを社内に告げた。ただのスペルミスだが、会社にとっては大きな障害になり、それは大きなミスでもあった。当然のように日根野部長からは障害報告書を提出するように言われた。なんとかメール管理システムが復旧したことにホッとしたのだが、それにしてもあの2033年から送られてきたメールが奇妙に思えてきた。これだとあそこに書いてあった内容と一致する出来事が起こってるではないだろうか。いや、ただの偶然かもしれない。それか、イタズラでメールを俺に送った誰かが英語のスペルを書き換えたのだろうか。そう思った俺は、この部分をプログラムした最初のファイルを開いて確認してみた。するとやはり『Transfar』になっていた。最初から俺がスペルミスをしていたことになる。誰も書き換えた形跡なんてなかったのだ。だったらあのメールは一体何を意味しているんだろうか。俺は2033年から送られてきたメールが不気味に感じるようになった。

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