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7弾:青いボタン






 謎の大岩の先に隠されていた薄暗くなだらかな坂の通路を進む。


 これまでに人どころか魔物や生き物も寄り付いていなかったのか足下には塵や埃が積もり、歩くたびに足跡が残る。

 この先に何があるのかわからないので警戒をしながらゆっくりと進む。

 何があるのかわからないとは言ったが一歩ずつ進むにつれて、人工灯の明かりが強まり、同時に俺の予想も強めていく。

 この先にあるものは恐らく、失われし文明ステイーツの何かしらの施設だと思う。


 緩やかな坂をくだり終わると見ただけで頑丈で分厚いと想像出来る金属の扉が立ち塞がり、非常灯の弱い光が全体像を照らしていた。


 扉には施設を表しているのか『Xー001』と書かれている。


 この異世界ではまず見かけない近未来の造りに心を踊らせ、ステイーツの遺跡を見つけたことに興奮が収まらない。


 ペタペタと手で金属の扉を触り、開かないか試す。しかし、やはりと言うべきか人力で扉が開く気配はなかった。

 なんとかして開けられないかと思案していると埃に埋もれて存在を消していたコンソールに気付く。


 息を吹きかけ、埃を払う。


 勢いよく息を吹きかけたせいで埃は舞い上がり、視界を悪くする。

 埃が収まるのを待ち、コンソールを覗きこむ。


 コンソールに番号キー等はなく、パネルがあるのみでそのパネルも電源が入っていないのか沈黙したままだ。

 なんとかならないかと手を近付けてみると今まで省エネモードになっていたのか電源が入り、画面に色が戻る。


 画面には手の平を模した線が表示されており、俺はダメ元で画面に合わせて右手を重ねた。


 画面に光が走り、右手が読み取られるとラスターから貰った指輪も呼応するように光り、認証の確認を示す緑色の文字が表示される。


 静かに音もなく金属の扉がスライドして開くと中の空気が解き放たれて、抜けるように通路に溜まっていた埃を押し払う。

 恐らく施設の空調システムが生きているのだろう。


 扉の奧は真っ暗な廊下が続いていた。好奇心に誘われ、扉を越えて一歩を踏み出す。


 背中で金属の扉が閉まる気配を感じ振り向くが気付くのが遅かった。扉はすでに5分4程、締まりかけており閉じられていく扉を見送ることしか出来なかった。


 閉じこめられたと思うのも束の間、俺が立つ位置から順に天井の照明が灯り、奧の通路を照らしていく。


 さっきまで真っ暗でわからなかったが中は厳重な研究施設を彷彿ほうふつとさせる通路が続いていた。壁や天井も金属で出来ているようでSF感が出てきた。


 最早、ここから引き返す考えはなく、俺は恐る恐るも先へと進んでいく。







こつん、こつん、こつん


 歩く度に木で出来ている靴の裏が音を立てて通路に響く。

 道なりに進み、突き当った通路の先には入り口と似た厳重な扉が見える。

 途中、いくつも扉はあったがラスターから貰った指輪でも開けることは叶わず、何処かに入れる部屋はないかと進むうちにここまで来てしまった。


 扉の前に立ち、観察すると横の壁にコンソールを見つけた。

 ここもどうやら認証式のようでパネルに右手を当てる。


ピッ!


 承認されて扉が開いていく。


 開いた先の部屋は30畳程の大きさに壁に沿って機器が並び、レコーディングスタジオのようになっていた。


 ここまで来れば、恐いものはないと部屋に入り、中を物色する。


 部屋に設置されている機器類はどれも専門的な感じで何がなんだか・・・しかし、気になるものがひとつ。


 まるで俺を誘うように青く点滅を繰り返すボタン。

 赤色の点滅ならば躊躇したかもしれないが青色なら大丈夫だろうと謎の自信でボタンカバーを外す。


 ゆっくりと人指し指で押すと程よいボタンの抵抗感がなんとも心地好い。


 押して間もなく、何かが開く電子音に振り向くと中央の床から台座がせり出し、ピラミッド型のガラスケースが現れた。


 台座に近付き、ガラスケースの中にあったのは銀色の輝きを放つ、筒型のアクセサリー。

 サイズは指輪よりもかなり小さく。筒状の一部が切れて、離れているところからして耳の軟骨部分に着けるイヤリングではないかと思う。


 台座に手をかざすとロックが解除されて、花が咲くようにピラミッド型のガラスケースが開く。


 ガラスのケースに護られていたイヤリングに手を伸ばして、試しに耳の軟骨部分へと付けてみる。

 次の瞬間、イヤリングから針が飛び出し軟骨を貫通し、鋭い痛みが走る。


「痛っ!」


 付けては不味い物だったかと後悔と不安がよぎるのと同時に脳内に声が響いた。


「(DNAヲ解析中・・・)」


 戸惑いが起こるが謎の声は止まらない。


「(DNAノ解析ヲ終了。登録二移リマス)」


 いったい何が起こっているのか判らず、焦燥感に駆られるが無情にも声は止まない。


「(登録ヲ完了。コレヨリ、戦闘支援システムAI『ピクシー型Xー001プロトタイプ』起動。)」


 脳内に響く声の意味を必死に理解しようとしていると不意に視界に妖精が現れた。


 妖精は俺の視界を彷徨うように飛び回り、部屋の中を周回して俺の目の前、目線の高さで停止した。


「(これより支援を開始します、マスター)」



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