4弾:真実
母親に言われて改めて、『心刃使い(ブレイバー)』になると決意した翌日。
俺は謎の男に言われた通り、村の東にある森に来ていた。
「よう、来ると思ってたぜ」
男は俺が来ると信じて疑っていなかったようで木にもたれ掛かり待っていた。
「あんたの言う通り来たんだ俺の【心刃】について教えてくれるんだろうな?」
少し威圧的かもしれないが素性がわからない以上、これぐらいの対応が無難だろう。
「そう急かすなよ。まずは自己紹介でもしようか」
もたれ掛かっていた体勢から俺の正面に立ち直すと自己紹介を始めた。
「俺はラスター。わかってはいると思うが『心刃使い(ブレイバー)』だ。これでもそこそこ強いだぜ」
次は俺の番だと手を差し向けてくるので俺も自己紹介をする。
「アレクだ」
ブレイバー登録もしていない俺はまだ何者でもないのでこれで充分だろう。
「はあ~、まあいいか」
心をなかなか開かない俺に諦めたのか、それでも話を進めてくれるみたいだ。
「そうだな。アレクが気になっているのはお前自身の【心刃】がどうやったら強くなるってことだろうがまずはランクについて教えてやろう」
そう言うとラスターは徐に落ちていた枝を拾い、地面に何やら書き始めた。
・Gランク:~100
・Fランク:~200
・Eランク:~400
・Dランク:~600
・Cランク:~800
・Bランク:~1000
・Aランク:~1200
・Sランク:1200~
「これが大まかなランクを示す【心刃】の総合値だ」
「?」
「正確に言うと教会で使われている石版、鑑定板の規格だかな」
「石版の規格?」
「あ~、難しかったか?」
「いや、続けてくれ」
「わかった。それで教会で使われている鑑定板は実は模倣品でな、正確ではないのさ」
話がなかなか見えてこないがとりあえず、聞いていく。
「本来、【心刃】の能力を確認するには専用の道具が必要なんだ」
そう言うと腰に着けていた革の袋から指輪を取り出して、俺に手渡してくる。
「その指輪をはめてから【心刃】を発現して『プロパティ』と言ってみな」
俺は言われた通りに指輪をはめて、【心刃】を発現して叫ぶ。
【心双刃銃L・R】
《ランクG》
威力:50
射程:10
連射:1
弾倉:3
再充填:500秒
┏威力
┃┗威力Lv:0/50
┃ ┗威力2Lv:0/40
┃ ┗威力3Lv:0/30
┣射程
┃┗射程Lv:0/5
┃ ┗射程2Lv:0/5
┃ ┗射程3Lv:0/5
┣連射
┃┗連射Lv:0/3
┃ ┗連射2Lv:0/3
┃ ┗連射3Lv:0/3
┣弾倉
┃┗弾倉Lv:0/10
┃ ┗弾倉2Lv:0/10
┃ ┗弾倉3Lv:0/10
┣再充填
┃┗再充填Lv:0/30
┃ ┗再充填2Lv:0/30
┃ ┗再充填3Lv:0/30
┗???
「っ!?」
「どうやら見えたみたいだな」
驚きのあまり、ラスターの顔を見れば「どうだ?驚いただろ?」みたいな顔をしていた。
「それがお前の【心刃】の今の能力だ。残念ながら他人の俺には見ることは出来ないが能力値の下に強化ツリーがあるだろ」
コクンコクン!
「その一番下、今はまだ「???」になっていると思うが強化が進めば、いずれランクアップの項目が出るはずだ」
「まさかっ!?」
「そう、【心刃】は魔族を倒すことによって、誰でも努力と根性次第でSランクに至ることが出来るのさ。ただし、自身の【心刃】のランクより低いランクの魔族をいくら倒しても強化されないから気を付けろよ」
この驚愕の事実は俺に大きな希望を抱かせた。
しかし、ならば何故みんなは知らないのか疑問が沸き上がる。
「ならなんで皆知らないんだみたいな顔だな」
ラスターは俺の疑問を嗅ぎ取ったように見透かしてくる。いや、ラスター自身も初めて知ったときに思ったのだろう。
「まず、一つめはその指輪がメチャクチャ貴重な物でな。一般には出回ってないのさ」
俺は指にはめている指輪を見つめながらこのまま持ち逃げ出来ないが思案する。
「二つめはこのご時世のせいだろうな」
ラスターは思いふけるように頭上の木々を見つめながらポツポツと語りだした。
「知ってるか。魔王が誕生してからすでに人類はその生活圏を3分の2も失っているんだ」
いったいこの男は今日だけで俺を何度、驚かせるのか。
「急激な生活圏の縮小によって人類は強い【心刃】を持つ人材を可及的に必要とした。つまり即戦力と成りうる高位の【心刃】を授かった者が重宝されたのさ」
つまりはそういことだったのだ。
「本来なら時間をかければ、例え、ランクGだろうが同じように強くなれるのにブレイバーズギルドは高位ブレイバーを前線に送る理由として、その事を伏せているのさ。もし、公開すれば高位の【心刃】を授かった者達が反抗するとブレイバーズギルドは本気で考えているのさ」
真実を聞かされ、急にジンバ達4人の身が心配になってきたが今の俺にはどうすることも出来ない。
「どうだ?『心刃使い(ブレイバー)』になるのが嫌になったか?」
俺は首を振り、力強い言葉で言い切る。
「なら俺が強くなって、この暗い世界を変えるだけだ!」
今度はラスターが驚く番だったように眼を見開き、驚愕の表情を浮かべる。
「あっはは、これは傑作だぜ!」
一潮、笑うと真顔に戻り、真剣に俺の眼を見てくる。
「気に入ったぜ!アレク」
そこには一流を想わす、『心刃使い(ブレイバー)』の顔があった。
「その指輪はくれてやる。大事に使えよ」
そして、俺から距離を取るとラスターは凶悪な笑顔を向けてきた。
「興が乗ったから俺の【心刃】を見せてやる」
ラスターが両手を胸の前で構えると大気が震え出し、両手の間に集まる光は一点に集中すると剣の形へと姿を変える。
顕れた剣を掴む姿は神に仕える騎士然としており、【心刃】が纏うオーラと合わさり、何者も寄せつけぬ雰囲気を持っていた。
「これが俺の【心刃】『剣心聖刃』、ランクSだ」
「」
ただただ圧倒された。これがランクSの【心刃】なのかと・・・。
「アレク、お前ならいずれこの領域まで辿り着けるだろう」
「」
ラスターの姿から目が離せないが言葉は直接、頭に入ってくるように刻み込まれていくようだ。
「・・・前線で待っている。強くなれ、アレク」
【心刃】をしまい、その場を後にしようとするラスター。
「ラスター!必ずっ!!俺もその領域へ行ってみせるから!」
背中越しに片手を挙げて、ラスターは行ってしまった。
この日の約束を胸に俺の中で燃えるように熱い気持ちが宿った。