第099話 「アクシデント」
いよいよアロン大佐達との戦闘が始まる…
最初に戦闘となったのは、ラッハ中曹とティル少佐だった。
お互いに射撃をして牽制し合っている。
「ここだ!喰らえ!」とラッハ中曹が左腕の無反動砲を撃つが、シールドで防がれた。
「こいつ…動きが今までの奴らとは違うぞ…」ティル少佐が警戒を強めた。
「アロン大佐、コイツら…恐らく強いです。俺の相手だけじゃない。全員が今までの相手とは違いますよ!」
「ああ!俺の相手も大概だ…こんなのがクルタナの小隊の他にも居るのか…共和国も侮れんな…」
アロン大佐に報告しながら、ティル少佐は無反動砲を撃った。
「何っ?これを避けるのか…」ティル少佐が驚愕する。
剣の間合いとなり、お互いに振った剣が交差する。
鍔迫り合いとなり、お互いに間合いをとった。
「こいつ…強いな…」ティル少佐の正直な感想だった。敵からの無反動砲の射撃を足元に受け、ティル少佐は更に後方に下がった。
「何者だ…コイツは…」ティル少佐はパーソナル回線信号を送った。
ラッハ中曹が認証し、話しかける。
「久しぶりだな、ティル少佐!」
「ラッハ中曹か?共和国に強い奴もいるもんだと思ってたら…お前か!」
ティル少佐は、ある意味安心した。共和国側に、こんなに強い人間がたくさん居たらたまったもんじゃないと思っていたからだ。
「って事は、他の奴等も?青い死神やクルタナもいるのか?」
「ああ。けど、クルタナ少佐は、今日はABLMに乗ってない。」
「そうか…お前達なら楽しめるな。リベンジさせてもらうぜ!」
ティル少佐が開いたパーソナル回線に、ティル少佐もラッハ中曹も、他の隊員達に加入申請を送り次々とみんなが加入する。
「何だよ!クルタナ達か…どおりで強いと思ったんだよな…アトル、コイツらが、この前話した奴等だよ。」
「へぇ…俺の相手は誰だい?」
「茶色か?俺はダーイン中曹だ。」
「ダーインか…俺の名はアトル・チャック、階級は中尉だ。」
「って事は、俺の相手はクロノスって奴か?青い死神の。」
「そうだ。変な腕は俺対策なんだろ?その多重関節の腕は…」
「ほう…良く分かったな。本人相手に試せるなんて思わなかったよ。しかし、ブレリアじゃ無いしパーソナルカラーじゃないから、お前らだって分からんかったぞ!」
クロノスとアロンも対峙する。
「さぁ、ラッハ中曹!続きをやろうぜ!」
ティルはそう叫ぶと、左腕の無反動砲を射撃しながら接近した。
ラッハが左に回避する。それを見越したようにティルが剣で斬りつける。
「コイツ…また強くなってやがる…」
激しい攻防が続く…ラッハはティルが強くなっている事に驚いた。
「ティル少佐、短期間で随分と腕を上げたな!」
「久しぶりに努力って奴をしたよ。俺の頭の中には、常にラッハ中曹、お前が居た。」
「男にそんなに思われても嬉しくないな!」
剣と剣が交差する。互角の勝負。しかし、数分の格闘戦の最中に、それは起きてしまった…
「しっ…しまった!」
ラッハ中曹が、腐葉土で足を滑らせてバランスを崩した。
「もらったぁぁぁ〜!」
この好機を逃さず、ティル少佐が剣を振り下ろした。ティル少佐の剣が、ラッハ中曹の機体の右腕を落とした。
落ちた右腕から、ラッハ中曹は素早く剣を拾ってまたもや対峙した。
「ヘッヘッヘ!運が悪かったと思うな!運も実力の内だからな。」
「いや、運ではない。地面の状況を把握していなかった俺のミスだ。実力さ…」
「まだ戦えるんだろ?続きをやろうか!」
そう言って、ティル少佐が斬りかかる。
ラッハは、慣れない左腕一本で良く捌いていたが、事態が急変する。
『ビリビリ!バチバチバチ!ボン!』
その時、ラッハの機体の肩…斬られた場所がバチバチと音を立てて小さな爆発が起きたのだ。
「ラッハ中曹、機体から脱出して!爆発する可能性があるわよ!」とクルタナが叫んだ。
「ティル少佐、今回は俺の負けだ!」
「それでは、この前の俺の捕虜の話はチャラにしてもらうぜ!スッキリしなかったが、次は圧倒的にな差で完勝するならな!」
その台詞を聞き、ラッハ中曹はABLMから緊急脱出した。
「負けたか…」脱出して地面に降り立ったラッハが呟く。
「ラッハ中曹、指揮車まで自力で来れる?」とクルタナから無線が入る。
「はい。歩いてそちらに向かいます。」ラッハが携帯無線機で応答した。
「ティル少佐がね、『まだ俺は1勝2敗で負け越してるから、次に会った時も勝たせてもらう。それまでに腕を上げておけ!』だってさ。」
「ははっ!『ブレリアなら負けないぞ!』と伝えておいて下さい。中隊長、基地に帰ったら、訓練の相手をお願いします!」
「分かったわ。戦闘に巻き込まれないように、気をつけて帰ってきてね。」
クルタナからそう言われ、ラッハは無言で戦場を後にした。
この悔しさを胸に刻んで…




