第084話 「死神小隊討伐」
第083話を修正しました、
パーソナルカラー、やはり最初の設定通り全員が違う色としました。
小隊で揃えると、後々の物語と矛盾が生じてしまう事に気づきまして…
思い付きで書いちゃダメですね。
MUC212.2.24(月)
6号機と7号機が完成し、本日引き渡しとなった。これで格納庫にブレリアが6機となる。
「俺のブレリア、新品だからなぁ…楽しみだよ。」とラッハ中曹が喜んでいた。
「俺も楽しみです。0号機とは違うでしょうし。」
「けど、クロは4号機に乗った事があるんだろ?そんなに違うか?」
「ラッハ中曹は、今日まで4号機や5号機で操縦訓練してたから違和感はないと思いますが…ゼロや中隊長機とは別物でしたね。」
「けど、ゼロも3号機も、4号機仕様になるんだろ?」
「はい。けど、やはり何かが違います。特にゼロは…ハッキリ言うと、どんなに4号機らが高性能だとしても、ゼロの方が戦いやすいんです。」
「へぇ…何でか分かるのか?」
「ゼロは重いと言ってましたが…バランスが良いんだと思います。ただ軽くすれば良い訳ではなく、軽くした上でウェイトバランスを良くする必要があるかもしれませんね。」
「難しいな…どこを重くとかは具体的に言えないよな…」
「しかし、格納庫にブレリアが6機並びましたね。色もそれぞれ…まぁ、ゼロはまた直ぐに改修されるらしいですけど。」
「赤、青、黒、白、オレンジか…予備機は黒にするって言ってたけど、クロが使った時のままだな…綺麗な青だ…」
「よし、慣らし運転といこうぜ!3日間やれと言われたからな。」
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同じ日、ミノア帝国軍では、怒りに震える男がいた。アロン中佐である。
事務室に帰るなり、いきなりロッカーに蹴りを入れながら大声で愚痴を言っている。
「何で軍の上層部は分からんのだ!だから前線を押し戻され、一向にクレタ半島を奪回できないんだよ!」
「アロン中佐…軍の備品を壊さないで下さいね。」
「そんなのは良いんだよ!中将、少将達は、どうやってあの階級になったんだ?木偶の坊だぞ、あれはよ!」
「そんな事言ったら、木偶の坊に失礼ですよ。」
「はっはっは!お前、なかなか良い事を言うな。」
先程からアロン中佐の相手をしている男…この男の名は「ニーベル・バルム大尉」である。
そう。クロノス達に負け、共和国の捕虜になった筈であったが、なぜここに居るのか…
バルム大尉が捕虜になって間もなく、共和国の捕虜収容所が襲撃にあった。その時に逃げてきたのだ。
と言うより、バルム大尉を脱走させる為の襲撃であった。帝国にとって、バルム大尉はただのパイロットではない。どうしても取り返さなければならない理由があったのだ。
バルム大尉、実は帝国軍大将の息子であり、父が皇帝親衛隊の隊長なのだ。
「で、私の父に何か言われたんですか?」
「お前の親父は良い。その取り巻きの幕僚連中が腐ってやがる。お前の親父も苦労してるぞ。」
「親父も言ってました。幕僚を全員入れ替えたいってね。」
「自分は安全な場所にいて、しかも作戦計画は全然ダメときた…意見具申をすれば『お前は分かってない』って?お前が分かってねぇんだよ!現場を見に行けっての!」
「で、今回はどんな意見具申を?」と、新加入のロディ・オリオン大尉が聞いた。
「俺達の中隊を戦場に派遣しろって言ってきたんだが…。青いブレリアの討伐部隊を編成し、撃破して軍の士気を高揚させる目的と言ってな。」
「首都の防衛が手薄になるって?」
「たかが一個中隊が抜けた所で、大した影響はないだろ!」とアロン中佐は、まだ怒りが収まらないようだ。
「それだけ我々の中隊を評価してるって事じゃないですか?いなくなったら困るって。」
「だから、俺を大隊長にして、特別機動大隊を新編したいと言ったらダメだと言いやがって!」
「けど、皇帝直轄だから、それは無視しても良いのでは?」
「そう言う訳にもいくまい…しかし、一個小隊規模なら出撃しても良いとは取り付けてはきた。一個小隊じゃ、アイツらの相手は無理なんだよ!」
「アイツらって?クルタナ大尉達ですか?」
「あぁ、化け物が1人いる。それに、他の連中も俺並みなんだろ?バルム。」
「そうですね…話を聞くと、そんな感じでした。」
「しかも、我が軍の1個連隊を1人で撃破した青いヤツもいるんだぞ?」
「我々には、ロディ中尉がいるじゃないですか。」
「まあな…軍の科学技術の結晶だからな。ロディは…」
ロディ中尉は、今まで帝国で記録したクロノスのデータを元に、対クロノス用として科学的に作られた。
元々育成していた資質の高いエリートパイロットに、スポーツ選手の様な科学トレーニング、そして数々のドーピングや、果ては脳に特殊チップの埋め込みまで…
この『強化戦士』と呼ばれた人間はABLMパイロットだけではない。歩兵やその他の兵科でも、それぞれの特性に合わせて育成されていた
ABLMパイロットは特に、筋肉系のドーピングのみならず、五感を向上させる為の様々な試みをなされた。
それらを施されたロディ中尉は、シミュレーター上のクロノスに勝利する事が出来ていた。
非人道的…まさに人体実験のオンパレードの様なその育成は、ロディ中尉により育成方法が確立された。
「しかし、トロイア共和国も強化戦士の技術を確立しているのか?あの青いABLMパイロットは強化戦士じゃないのかよ?」とアロン中佐がバルム大尉に問い掛ける。
「それは無いと思います。第一、共和国は帝国と違って人体実験なんてしませんよ。」
「天然物であれかよ…どうなってるんだ?人類は進化してるって言うのか?」
「進化なんですかね?たまたまかも知れないし、退化かも知れません。ただ、今の時代に適合はしてますよね。」
「今の時代に適合して変化して行く事を進化と言うんだよ。一部は退化とも取れる現象でも、それが時代に適合するための変化ならな。」
「まぁ、そうですね…。」
「しかし、部隊派遣に関しては、皇帝にも直訴したんだが…やはり1個小隊を出すのが限界だと言っていた。まぁ、俺達4人でやるしかないか…」
「1個小隊では限界がありますよ。」
「しかし、俺達がやるしか無いだろ。とりあえず、クルタナ達の討伐部隊を編成すると言う所までは漕ぎ着けたんだ。あれだけTVで騒がれちゃ、帝国の上層部も何かしらの対処をしているとアピールしなきゃならんからな。」
「相手は連隊?大隊?」とロディ中尉がバルム大尉に聞く。
「諜報部によれば、最近は技術試験の部隊に小隊ごと行ったらしいぞ。アロン中佐を相手にした小隊長以外はな。中隊規模らしいが、実質はまだ1個小隊しかないらしい。」
「相手が1個小隊なら、ウチらも1個小隊で十分ですよ。」
「ロディ、シミュレーターで青いのに勝ったからって調子に乗るなよ。あれがアイツの全力とは限らんのだぞ。ただ、ウチらが収集したデータの一部にすぎんのだ。過信するな!」
「分かりました…」
「よし、青いブレリアの討伐部隊を編成する。1個ABLM小隊と小隊本部だ。小隊本部には兵站部隊も入れて独立的に行動する。これは皇帝も了承済みの事だ。」
「了解しました。しかし、軍は中央にエースを集めるらしいけど、目的は何ですかね?」
「確かに、エースは各部隊にばら撒いて技術指導とかをさせた方が部隊の底上げにもなるからな。集めたからって、クルタナの部隊の討伐って訳でもないし。上層部は何を考えているか分からん。」
「そんな事より、先ずは作戦を練りましょう。クルタナさん達の動きを掴むよう、諜報部には伝えてあります。」
「あぁ。そうだな。フォーメーションの訓練もしないといかんし。やる事はたくさんあるな。」
「次は勝ちますよ!あの、ダーインって男にね!」
「それも良いが、アスカが裏切るとはな。戦場でアスカを見たら、確実に殺さねば。」
アスカ大尉の裏切りは、バルム大尉経由でアロン中佐の耳にも入っていた。
「よし!出発は3月1日だ。各人、それぞれ準備しろ。ティルには俺から伝えておく。」
「了解!所で、部隊名は?まさか…青い死神討伐部隊とかって名前じゃ無いですよね?」
「サイクロプス小隊の名前は使えないからな。そうだな…bell the cat小隊だ。」
「猫の鈴?なんです?それ。」
「イソップ寓話にあるんだよ。『他人が嫌がる中で進んで難局に当たる』という意味もある。俺の苗字のベルともかけてみた。」
「俺達は、さしずめネズミを追い回す猫か…」
アロン中佐が部隊を率いて、蒼い死神の討伐に乗り出している事など…当の本人達は知る由もない…
イソップ寓話については、「ネズミの相談」と言う物語です。
ネズミたちは、いつも猫のためにひどい目にあわされていた。何とかしようとネズミたちが集まって相談し、その中の一匹が、「猫が来たらすぐわかって逃げられるよう、猫の首に鈴を付けよう」と提案する。皆は名案だと喜んだが、では誰が猫に鈴を付けに行くのかという段になると、誰もその役を買って出る者はいなかった。
教訓として、いくら素晴らしい案でも、実行できなければ絵に描いた餅であり、無意味である。
とWikipediaに書いてました。




