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機動機兵ブレリア「戦場の絆」  作者: キジ白のやまちゃん
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第080話 「第11独立実験隊」

 休暇も終わりか…クーナさんと過ごした毎日は、とても幸せな気分になった。


 結婚して一緒に生活したら、毎日がこんな感じなんだろうなぁ…


 しかし、それには平和になってもらわないと…戦争を終わらせる方法はないのか?


 アロン中佐か絡んでいるらしいけど…


 戦争が始まってから3ヶ月が経った。いつまで戦い続ければいいんだろう。前回の戦争は9年間だった。今回も?早く終わらせなければ…


 しかし、俺の力なんて微々たるものだろう。それでもやれる事はやらないとな。



 で、朝からクーナさんが少し怒っていた。怒った所も可愛いんだよな。こんなに好きになれる女性ができるとは思わなかったよ。


 で、何に怒っているのかと言うと…あれから毎日毎日、お父さんからメールが来るらしい…


 クロ君と一緒に研究隊に来いと。


 お父さんには本当に頭が下がるよ…


「またメール来た!お父さんしつこい!」と言ってプンプンしている。


「メール見せて!」と言って見せてもらった。


 お父さんの為に来てくれ。とか、クロ君は戦争を終わらせる為には必要な人間だ!とか…


 戦争を終わらせる?どうやって?どう言う意味だろ?


 と思って、クーナさんの携帯電話から勝手にお父さんに返信した。内容は


『戦争を終わらせるってどう言う意味?』と


『強力な兵器を開発して、戦争を早く終わらせるのに貢献するって事だよ』と返信が来た。


『人を殺して平和を勝ち取るって事?』と更に返信すると


「そうなるが…お父さんにはそれしか貢献できる事がないんだよ。力を貸してくれ。」と帰ってきた。



「あー!クロ、勝手に私の携帯電話でお父さんにメールしてるー!」とクーナさんが騒いでいた。


「クーちゃん、平和ってなんだろうね…。他人の幸せを奪ってまで成す事なのかなぁ…。」


「相手次第じゃないの?だって、相手だって私達の幸せを奪おうとしている訳でしょ?」


「幸せの奪い合いか…それが本当の幸せに繋がるのかなぁ…」


「けど、私達から奪おうとした訳ではないよ。帝国の方から戦争を仕掛けてきたんだし。」


「仕掛けたのは帝国から…抵抗しなきゃこっちがやられる…。何が正しいか分からないんだよなぁ。」


「クロって、たまに哲学的な難しい考え方をするよね…」


「俺は正しく生きたいんだけど、頭がゴチャゴチャになって何が正しいのか分からないんだよ…」


「自分が正しい!って思った道を行けば良いんじゃない?間違ったって良いじゃない。人間は間違う生き物よ。けど、間違いに気付いて修正もできる。」


「クーちゃん、良い事を言うね!」


「これ、前に私がクロに言われたセリフなんだけどね…」


「えっ?そうだっけ?」


 研究隊の件どうなるんだろう…興味はあるな…



 休暇が終わる。短い休暇だったが、クーナさんとの同棲生活は充実していたなぁ。




 MUC212.1.6(月)


 中隊の朝礼で、クーナさんが新年の挨拶をする。その後「訓練始め」としてABLMに乗り込んで剣の素振りとかをやった。


 いつ戦場に戻るんだろう…まだ命令は来ていないようだ。新年早々、各中隊長が大隊長に呼ばれた。



 俺達は年前に帰ってきたが、連隊主力は元旦に帰ってきたのだ。連隊本部が戦場にいたから昇任内示が遅れたみたいだった。


 昼礼が始まると、クーナさんから昇任内示…と言うか、1月1日の昇任者を言い渡された。


 もう6日も過ぎてるんですが…


 ボルグ中尉が大尉となり、連隊本部に配置換えになると言う…


 配置換え後は、士官中級課程へ半年間勉強をしに行く事になる。この学校を修業しないと中隊長になれないから仕方がない。ボルグ中尉は、中隊長をやりたがっていたから。


 1小隊長のグラム少尉が中尉に!

 ダーイン軍曹とラッハ軍曹が中曹に!


 その他、中隊本部の人達も昇任していた。3中隊へ大盤振る舞いたな!


 と思ったら軍曹の最後にクーナさんが


「クロノス・ソハヤ軍曹は中曹へ!」と言ったのだった…


「中隊長、嘘ですよね?俺、まだ昇任資格がありませんよ?」


 軍曹から中曹へは、軍曹承認後3年以上経過した者と決まっている。しかし、俺はまだ2年しか経っていないのだ。


「嘘吐く訳ないでしょ?だって書いてあるもの。」


中隊長(クルタナ)の所に行き、人事命令を確認したが…本当に書いてある…


「私も確認したのよ。そしたら、戦争で功績を残した者は、枠に囚われずに特別昇任させるって言ってたよ。」


 マジかよ…21歳で中曹になるの?本当?


「それと、3小隊の隊員は、昼礼が終わったら中隊長室にきて。」


「なんだ?なんだ?」と中隊が騒つく…3小隊だけ呼ばれるのだ。確かに気になるだろう。


 しかし、俺には見当がついていた。恐らく研究隊のスカウトの話だろう…



「そのまま入ってソファーに座って!」とクーナさんが言うので、俺達はソファーに座った。


「まずは、みんな昇任おめでとう!実は、私も少佐に昇任したの…」


「えっ?おめでとうございます!」とボルグ中尉…いや、ボルグ大尉が代表して言った。


「まだ大尉になって1年半よ?クロと同じで、特別昇任なの。こんな手でくるとは…困ったわね…」


「と言いますと?」ボルグ大尉が不思議そうな顔で聞いた。


「この連隊の中隊長は大尉職だから、少佐になったら下番しなきゃならないのよ…」


「えっ?」とみんなが驚く。


「多分、近々転属の打診が来る。と言うか、もう来ているの。」


「クーナさん、例の研究隊の?」


「そう。『第11独立実験隊』に呼ばれているわ。私の他、ダーイン中曹、ラッハ中曹とクロね。ボルグ大尉は大尉になったし、入校があるから断念したみたいね。」


「どんな部隊なんですか?とダーイン中曹が聞いた。


「隊長は『グニル・ドヴェルグ技術中佐』…私の父なの。実務内容は『実戦での技術検証等』で、どこかの増援に行って戦争に参加する。そのデータを新機体開発や、一般部隊にフィードバックしていくのだけど…実戦に参加するから危険よ。」


「へぇ…中隊長は、そこの部隊へ行ってどんな役職を?」


「ABLM中隊長よ。クロと年末に父に会った時は、実験大隊って言ってたの。だから中隊長は大尉だと思っていたけど、編成を変えて特別編成の『隊』に変更したの。多分、私を少佐にして中隊長にするためね。」


「前からお父さんに言われてたんですか?」とラッハ中曹が質問する。


「いえ。年末にクロと父に会いに、アザゼル基地に行ったのよ。呼ばれたから。そしたら、教導隊と模擬戦をやる事になって、教導隊の隊員をクロがボコボコにしちゃったのよ…」


「えっ?クーナさんもボコボコにしたじゃん!」


「まあね…そしたら父が『新しく部隊を立ち上げるから、お前らは来いと言われて…」


「教導隊をボコボコって…クロ、どんな感じでやったんだ?」


「いや…3機対俺1機でやって…すぐに撃破しちゃいました…」


「1対1じゃデータ取りにならんから、纏めて3機かかって来い!とか言ってたもんね?」


「そんな事は…まぁ、似たような事は言ったか…」



「教導隊ったら、相当な猛者揃いと聞いていますが、それを?」


「いや、1番強い人でもグラム少尉…中尉より弱かったですよ。ウチの中隊のレベルが異常なんですけどね。」


「で、困ったのは、まず私が3中隊から転属するのは決定的なの。で、ボルグ大尉も本部に転属する。中隊が心配なのよ。」


「それなら、私に3中隊長をやらせるように言ってもらえませんか?特別に。」


「確かに…ボルグ大尉なら入校しなくても中隊運用の心配はないわね。入校は戦争後にって言ってみるよ。それと、ダーイン中曹とラッハ中曹は?行きたい?断る?」


「俺は正直言って興味あります…ただ、中隊長も抜けてボルグ大尉も抜けるなら転属も有りかな?と思ったけど、ボルグ大尉が中隊長になるなら考えますね…」とダーインが悩む。


「俺もダーインさんと同じです。中隊長とボルグ大尉がいなくなるならと思ったけど…少し考えさせて下さい。クロはどうする?」


「俺は…こんな状況になるとは思わなかったんで…ただ、クルタナ大尉…少佐が転属するなら一緒に行きます。」


「だよな…ウチらは少し考えるよ。」とダーイン中曹が悩みながら答えた。


「返答は明日までなの。帰って家族とも相談して。あと、もう一つ困った事が…」


「中隊長、何ですか?」


「ボルグ大尉の代わりに、小隊長をやる幹部を1名選出して転属の打診をしろと…」


「えっ?そしたら、リジル中尉?」と聞いた。


「私もリジル中尉しかいないと思ってる。グラム中尉では若すぎるし、まだ未熟よ。」


「とりあえず、本人に聞いてみましょう。俺達が解散したら、リジル中尉を中隊長室によびますから。」


「ダーイン中曹、ラッハ中曹、じっくり考えてね!」


 と言われ中隊長室を後にした。俺はそのままリジル中尉に中隊長室に行くよう声を掛けた。



「クロ…本当に転属するのか?」とダーインさんが聞いてきた。


「クーナさんとも年末年始に散々話し合ったんですよ。ただ、自分が育てて、更に一緒に命をかけて戦った3中隊からは出たくないってクーナさんが言ってたんです。しかし、こんな手で中隊に居れなくするとは…」


「だよな…俺もそこが引っかかってる。愛着があるからな…」


「俺もです。ただ、中隊長もクロも行くなら、行っても良いかな?って。」とラッハさんが言った。


「ラッハ、家族はどうするんだ?」


「いや、基地はアザゼルでしょ?距離は80kmくらいだからこちらに置いて行こうかと思ってます。」


「それもそうだな…。よし!帰って家族に相談するか!」


「家族じゃなく、ダーインさんの気持ちはどうなんですか?」とラッハさんが聞く。


「興味はある。それに転属しても小隊長がリジル中尉、あとは俺、ラッハにクロだ。そうなると転属しても良いかな?とも思う。実戦に行くって、この連隊に残っても戦争に行くからな。結局は同じだ。」


 2人は悩みながら相談していた。


 クーナさんは連隊長室に行って「私とボルグ大尉が居なくなった後の3中隊が心配だ。ボルグ大尉を3中隊長にするなら転属をする」との交換条件を出したらしい。



 次の日となった。寮の自室のベットで目覚る。横になりながら左手を上げ、薬指の指輪を眺めるのが日課だ。


「クーちゃん、ナハス軍曹…今日も頑張るよ!」そう言って1日が始まるのだ。


 朝礼が終わり、リジル中尉から順番に中隊長室に呼ばれた。


 リジル中尉は転属をすると言ったようだ。


 ダーイン中曹も、ラッハ中曹も転属すると決心したみたいだ。


 俺の気持ちは知っているはずなのに、俺も中隊長室に呼ばれた。


「クロには言って無かったけど、第11独立実験隊の駐屯基地はここよ。」


「へっ?アザゼルじゃないの?」と俺がビックリすると、クーナさんは


「ええ、アルメン基地に仮設隊舎を建てるそうよ。仮設の整備工場と研究施設も。後々、本格的な隊舎工事が入るんだって。」


「それならダーインさんもラッハさんも安心だね!引越ししなくても良いし。」


「昨日、その事を2人に電話で伝えたら、電話でOKをもらったわ。今日は最終確認だけだった。」


「しかし、なんで俺には…」


「だって、クロは私と一緒ならどこでも良いって言うでしよ?」確かに…


「それと、次の3中隊長はボルグ大尉に決まったわよ!入校もしなくて良い見たい。」


「へっ?なんで?」


「なんか、私って天才じゃん?で、パイロット教官の他に、戦術教官の資格もある訳よ。その私が認めるなら、入校の必要はないだろうってさ!」


 と言ってケラケラ笑っていた…自分で天才って言っちゃったね…まぁ、天才だけど。


 しかし、隣の中隊長どうしが交際してるって凄いな…ボルグ大尉とアスカ大尉、上手く行けば良いなぁ…


「クーナさん、ところで転属日は?いつなの?」


「1月23日よ。1月20日に仮設隊舎が完成するから、その後に逐次荷物を整理して。あと、私達のブレリアは、実験隊に持っていく。」


「部隊の立ち上がりは?」


「部隊の編成完結式は2月1日ね。間に合うのかしら…」


「よし!急に決まった話だけど、転属するか!」


「まぁ、あまり職場環境は変わらないと思うわ。中隊のみんなにも説明しなきゃね。」


 クーナさんは中隊のみんなに説明した。やはりみんな驚いていたが、拍手をして快く送り出してくれた。


 クーナさんのゴリ押しにより、次の中隊長がボルグ大尉だと言うのも安心材料だったのだろう。



 3中隊は、パイロットも速やかに補充しなければならない。


 しかし、パイロットの補充調整で、3中隊に来たいパイロットを確認したら、なんと希望者がたくさんいたとの事であった。


 死神小隊パワーか?人気あるようだ…



 こうして、クルタナ少佐、リジル中尉、ダーイン中曹、ラッハ中曹に俺の5名の転属が決まった。


 転属まで、あと3週間後か…

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