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機動機兵ブレリア「戦場の絆」  作者: キジ白のやまちゃん
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第076話 「挨 拶」


 29日の夕方に、我が家であるアルメン基地に帰ってきた!


 30日の午前中に整備などを実施して、30日の午後から1月5日まで休暇となった。


 戦時中と言う事で、実家には帰れない…しかし、年越しをクーナさんのアパートで過ごせるから、コレはこれで良かったのかな?


 まぁ、今日の整備と言っても、ここ数日は後方の基地に下げられて帰る準備ができたから物品の格納くらいだったのだ。



 明日はクーナさんのお父さんに会うのか…


「ガイア、クーナさんのお父さんって、どんな人?」


『はい。私は今みたいに自由に行動できませんでしたから、あまり良くは分かりませんが、ABLMにセットされた状態で確認した感じでは、かなり厳しい研究者と言う印象です。』


「えっ?怖い感じなの?」


『妥協しないと言うか、目的達成のためには自分にも他人にも厳しいです。』


「今回の目的は何なんだろう…」と、独り言を言うとガイアが


『娘の彼氏の品定めではないでしょうか?娘に相応しいかどうかの。』


「だよなぁ…。不安になってきた…」


 俺は、クーナさんのお父さんに認められるんだろうか…


 

 31日の大晦日となってしまった…。運命の日だ。


 昨日の午後から休暇になったため、俺は例によってクーナさんのアパートに泊まった。


「憂鬱だなぁ…」と俺がボソっと言うとクーナさんが「そんな事言わない!さぁ!行きましょう。」


 と、明るく言っている。なんでも、自慢の彼氏を親に紹介できると言って喜んでいる…


 俺、自慢できる所なんてないんだけど…


 


 待ち合わせ場所は、アルメン基地から南に80kmほど行った所にある。


 町から外れた山の中に、演習場が隣接されている基地がある。


 確か、歩兵、砲兵、戦車、ABLMの軍曹教育隊と研究所があったような。演習場に隣接してるから、教育はしやすいんだろうな。


 第3機兵連隊も、たまに演習で使う場所だ。


 車で基地に入る。軍の身分証があるからそのまま入れるが、基地内だと言うに研究所の周りは柵が張られていて、警備も厳重だ。


 研究所は「第101技術試験隊」と言う部隊で、教育部隊の他に、第35教導連隊と言う部隊があった。


 教導連隊は、教育支援と技術試験の支援をするのだろう。


 編成を見ると、歩兵、砲兵、戦車、ABLM教導大隊がある。


 ABLM教導大隊には、教育支援中隊と研究支援中隊があった。まぁ、本部や本部管理中隊もあるが。


 

 で、クーナさんがお父さんに電話をしたら、何故か待ち合わせ場所は、研究支援中隊のABLM格納庫だった。


 2人で格納庫に行くと、何故かたくさん人がいて、どれがお父さんか分かったもんじゃない…。


 迷彩服の中に1人だけスーツ姿の人がいたが、その人かな?と思っていたらクーナさんが


「あっ!お父さん!」と言って近づいて行った。


 やっぱりあの人か…研究者っぽくないな…。クーナさんの年齢から言って、50歳は超えていると思うのに、見た目は40代前半にしか見えない。


 全く白髪がないから若く見えるのかも知れない。


 しかも、体型はガッチリしていて周りの軍人にも引けを取らないほど良い身体をしている。


クーナさんが少し怒った感じで


「お父さん!これ、どう言う事?」と聞いていたが、俺はそれを止めて挨拶をした。


「初めまして。娘さんとお付き合いさせて頂いています、クロノス・ソハヤと言います。宜しくお願いします。」


「おお!よく来てくれたね!君が噂のクロ君だね。クルタナの父のグニル・ドヴェルグだ。娘共々宜しくな!」と言って握手をしてきた。


 なかなか気さくなお父さんだ。


「お父さん!説明して!」って、クーナさんがプリプリと怒っている…


「なにね…支援中隊の隊員が第3機兵連隊に『蒼い死神』と『戦場の女神』って言う凄腕パイロットがいるらしいぞ!って言ってたから、『それ、ウチの娘と娘の彼氏だよ』って言ったら…みんな会いたいって言ってさぁ…」


「会うだけじゃないでしょ?何でABLM格納庫で会わなきゃならないの?何を企んでるのよ?」


「何か…2人とお手合わせ願いたいって…」


「だから!何でせっかくの休みにABLMに乗らなきゃならないのよ!一昨日、戦場から帰ってきたばかりなのよ?分かる?」


「分かってるけどさぁ…」ってお父さん、タジタジだな…


 そこで、間に割って入ってきた1人の男がいた…


「中隊長のジーメンス・シュケルト大尉です。疲れている所、申し訳ない。」


「第3機兵連隊 第3中隊長のクルタナ・ドヴェルグ大尉です。宜しくお願いします。」


「やっぱりダメですか?模擬戦を少しして欲しかったんですが…」とシュケルト大尉が残念そうにしている。


「ドヴェルグ中佐!だから戦場から帰ってきたばかりで疲れてるって言ったじゃないですか。」


 へっ?お父さん、スーツを着ているけど中佐なんだな。技術士官か…


「やりましょうか?ただし、人数は限定させて下さい。クルタナ大尉も疲れていますから。」と俺が言うと、シュケルト大尉は


「君は疲れていないのか?」と聞いてきたが…


『疲れてるに決まってんだろ!』と心の中で叫びつつ、「大丈夫ですよ。」と答えてしまった…


「クロ、やるの?まぁ、AIは肌身離さず持ってるけどさぁ…」と不満気に聞いてくる…


「だって…このままやらなきゃ、お父さんの面目丸潰れだよ?少し相手をするだけだよ。」と小声で伝える。


「だってクロ、かなり疲れてるでしょ?教導隊って言ったら、かなりの凄腕集団よ?ここで負けたら『俺は蒼い死神に勝った!』って言いふらされちゃうのよ?」と心配している。


「良いでしょ?別に…勝とうが負けようが。所詮は模擬戦だから。」


 俺は、別に勝っても負けても気にしないのだ。


「おいおい!俺が勝っても言いふらさないから安心しな。」


 って、誰だよ?お前は!中曹の階級章を付けてるな。


「アラド、そんな事言うなよ。まぁ、負ける気はしないけどな!」


「おい、一般部隊の隊員を虐めるなよ。俺達は特別だから負けても仕方ないんだぜ?蒼い死神さん。」


 だからね…誰だよ?お前らは!


 少しカチンと来た俺は、つい挑発し返してしまった…



「俺達は一昨日まで戦場で戦ってましたけど、あなた達は戦場に出た事あります?いくら訓練で強くたって役に立つんですかねぇ…」


「ほぉ…言ってくれるじゃねぇか。俺は1小隊長のファルツ・フォッカー中尉だ。俺の相手をしてくれるんだな?」って不気味な顔で笑ってる…気持ち悪い…


「はぁ?小隊ごと相手しましょうか?飯事(ままごと)しかしてない部隊に俺が負けないでしょ?」


「舐めやがって!後悔するなよ!」と、めちゃくちゃ怒ってる…ってか、フォッカー中尉だけじゃなく、中隊の全員が怒ってるな…


 更に煽るか…


「何なら中隊全員を相手しましょうか?何が『俺達は特別』だよ。』


「ちょっとクロ!やめなさいよ…。みんなを怒らせてどうするのよ!」


 クーナさんが慌てて止めに入ったが、時すでに遅しである。


「言いたい事を言ってもらったが、1対1で勝負してくれるか?クルタナ大尉が2人にソハヤ軍曹も2人相手してくれないかな?」とシュケルト大尉がその場を仕切る。


「クーナさん、良い?」


「私は良いけど…クロってプチ短気だよね…」


「だって、俺達、馬鹿にされたんだよ?一昨日まで命をかけて戦ってきたのに…中隊のみんなが馬鹿にされた気分で頭にきたもん。」


「それはそうだけど…」とクーナさんが困り顔である…。困った顔も可愛い!


「クロ君、あんな事を言って大丈夫かね?彼等は強いぞ。」とお父さんも心配していた…。


「大丈夫ですよ。負ける気がしません。」と俺は根拠のない自信を見せる。



「おい皆んな!死神が負ける気しないってよ!俺はアラド・ハインケル中曹だ。お手柔らかな!死神さんよぉ!」


 コイツ、最初に煽ってきたヤツだな!いきなり本気でやってやるよ!


「クーちゃん、俺が最初にやるよ。ってか俺が4人相手するから。」


「えっ?私は?」と驚くクーナさん。


「俺がやるよ。すぐに終わらせる。」と言って安心させるつもりが、逆に不安気な表情になってしまった…


「俺が使う機体はどれですか?慣れるために時間が欲しいんですが。」と言うと、シュケルト大尉が


「そちら側の4機だったら、どれを使っても構わない。好きなのを使ってくれ。」と言っていた。


「死神様は、機体に慣れる時間が欲しいんだとよ!Ⅲ型を使った事がないらしい。ハッハッハ!」


 またアラドってヤツかよ…この馬鹿、どうにかならんかな…


「Ⅲ型どころか、Ⅰ型も使った事がありませんよ。お父さん、研究所にブレリアはありませんか?」


「研究所の格納庫にあるよ。いや、君たちを呼んだのも、ブレリアの4号機と5号機の実用試験の打ち合わせの為に呼んだんだけどな…まさか、こんな事になるとは…」


 親子揃って困り顔である。


「貸してもらえます?実用試験なら、ちょうど良いじゃないですか?」


「確かにな…ちょっと隊長に聞いてくるよ。」と言って走って行った。


 しばらくすると、クーナさんの携帯電話が鳴り、研究所の格納庫に来てくれとの事。


 研究所の格納庫に行くと、ブレリアが2機並んでいた。


「クロ君がプロトタイプの0号機でクルタナは3号機を使っているが、この2機は別物だよ!」とお父さんが言っている。


 なんでも、新型の実証基盤(テストベッド)として常に改修され続けてきた機体なのだとか。


「Ⅲ型にも導入されていない最新技術が導入されているよ。フレームはブレリアだが、中身は別物だと思ってくれ。」


「本当に使っても良いんですか?」


「あぁ、使用許可はとったから、好きに使ってくれ。壊しても大丈夫だからね。」


 俺はコックピットに座ってブレリアを起動した。


 起動音から違う!静かだ。


 内装は殆ど同じだったが、シートが違う。衝撃をあまり感じない。


 少しブレリアを動かしてみたが、動きがスムーズで操縦が楽にできる。



「ガイア、これの解析にどのくらい掛かる?」


『はい。約20分程度時間を下さい。』


「この機体、どうだ?」


『制御は複雑ですが、その分スムーズに動かせるようになりました。』


「ガイア、解析が終わったら呼んでくれ。」と言って俺はコックピットから降りた。


 降りると、またクーナさんのお父さんが機体の説明をしてきた。


 とても勉強になる。油圧シリンダーは汎用では無くABLM専用に作成し、制御は複雑化したがスムーズに動く事を考えた。コックピットは、パイロットの負担を減らす為に、耐G性を高めるための技術と工夫を盛り込んだとの事。


 説明を聞いているうちに、ガイアから機体解析が終わったとの無線が入った。再びコックピットに乗り込む時


「まぁ、乗ってみて感想を聞かせてくれ!」とクーナさんのお父さんに言われ


「分かりました!なるべく限界性能まで引き出したいと思います。」と答えてコックピットハッチを閉じた。



「ガイア…これ、動かし易いぞ!」


『はい。0号機の速度調整が10段階だったとすると、この機体は倍あります。マスターみたいに微妙な調整ができる人は、かなり乗り易いと思います。』


「全てのスピードもかなり速いな…いや、速く出来ると言った方が正確か?」


『パワー、速度共に0号機を上回っています。あとは耐久性がどうかですね。』


「よし!これで戦ってみるか!ガイア、行こう!」



 そう言って、クーナさんの車を先頭にブレリアを訓練場へ向けて移動させる。



 しかし、とんでもない事になってしまった。


 休みの日まで戦う事になるとは…


 

 何故か教導隊の隊員達と模擬戦をする事になるとはな…

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