第073話 「エース部隊との戦闘②」
戦闘は、ますます激しさを増して行く。
1小隊は敵戦車部隊と後方のABLM小隊の前面にスモーク弾を撃ち続けている。2小隊が、敵の左側の小隊に牽制射撃をして正面を拘束する。
全て中隊長の命令だ。
その頃、ボルグとラッハは全力で敵砲兵部隊に向かっていた。
砲兵は、守る部隊が無いならば脆い。迅速に近づき火砲を壊すのが最善だろう。
ボルグとラッハが近づくと、砲兵部隊の隊員だろう…対戦車ミサイルを射撃して来た。
「ラッハ、攻撃が来たぞ!敵は自走砲だな。もう陣地変換し始めてる。」
「了解です。見える火砲に射撃します!」ラッハが停止し、キャノン砲を撃った。
ラッハのキャノン砲が敵火砲に命中した。
「小隊長、1門撃破!小隊長は右の火砲に行って下さい。左側を牽制します!」
ラッハがそう言うと、目標を変えてもう1度射撃する。
「2門目を撃破!6門編成か?残り4門です。」
「良いぞ!俺ももう少しで敵火砲まで着く。見える火砲を撃ちまくれ!射点は逐次変更しろよ。」
ボルグがラッハに注意喚起し、敵火砲に取り付く。まだ陣地変換準備中だった火砲は、なす術なくボルグに破壊された。
「こっちも1門撃破した。残り3門か?」
「いえ、俺がもう1門撃破しました。残り2!」
ラッハがそう答えた後、左側から土煙が激しく上がるのが見えた。
「1門に逃げられる!射点を変えて狙います!」
「了解!俺は次の目標に向かう。あっ!逃げて行くぞ!ABLMの足じゃ追い付かん。」
ラッハは最初に逃げた火砲に射撃したが、弾丸は横をかすめて行った。
「小隊長、外した!1門は逃げられた。もう1門を狙う。」そう言って射撃目標を変更した。
目標変更して射撃したラッハの弾は、火砲の履帯に命中した。
「小隊長、残り1門の履帯に命中!動けなくなってるから撃破して下さい!」
「了解!」そう言って近づくボルグに対戦車ミサイルが放たれる。
ボルグが中型シールドで防いで更に前進すると、今度は携帯対戦車砲が3発がボルグ機の足に襲いかかった。
「しまった!避けきれん!」とボルグが言った瞬間、ボルグの左脚に2発の弾丸が撃ち込まれた。
バランスを崩したボルグの機体が転倒し土煙が上がる…
「小隊長!ボルグ中尉!」ラッハが叫びキャノン砲を射点に打ち込んだ。ボルグが追撃をされないように更にキャノン砲を撃ち込むと、ラッハはボルグの方に走って行った。
「俺は大丈夫だ!残った火砲をやれ!」ボルグがそう言うとラッハが行進目標を変更して、敵火砲にむかう。
「了解!小隊長、追撃に気をつけて下さい。」
ラッハはそう伝えると、キャノン砲を捨てて剣を握って前に出た。
「了解した。ラッハ、まだ敵の攻撃があるかもしれん。接近時には注意しろ!」
ボルグはそう言うと、うつ伏せに倒れたままの機体の前方、敵方に対して中型シールドで防御した。
防御した瞬間にボルグ機に着弾の衝撃がきた。
「小隊長!小隊長!」ラッハが叫ぶ。
「ラッハ、大丈夫だ!ラッハのおかげで命拾いしたよ。シールドで防いだ。」
ラッハは安心し、敵火砲に左腕の無反動を撃ち込む。履帯を損傷して動けない敵火砲に命令し、炎が上がった。
「小隊長、敵火砲を撃破しました。今、そっちに向かいます。」
「まだ気を抜くなよ!後ろから攻撃されるかもしれないからな。」
「ボルグ中尉、大丈夫ですか?」クロノスからも無線が入った。小隊の系を使用していたため、ボルグ機が攻撃を受けた事は聞いていたのだ。
「ああ、生きてる。ABLMの左脚はやられたけどな…。ダーイン、そっちはどうだ?」
「こっちは戦車4両を撃破。次は後方の敵ABLM小隊に攻撃します。」
「頼んだぞ!俺とラッハは合流が遅れる。無理はするな。」
ボルグがダーインにそう伝えると、中隊長に無線で敵砲兵部隊の5門撃破、1門は逃げられた事を報告した。それと、自分の機体が損傷した事も。
「了解。お疲れ様!ラッハ軍曹と2人でゆっくり帰ってきて良いからね。こっちは何とかするわ。」
中隊長にそう言われ了解する。ボルグはラッハ機の肩を借り、なんとか2機で帰って行った。
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「ボルグ中尉、怪我はないのかな…」とクロノスが心配する。戦車小隊を撃破したダーインとクロノスは、後方に居る敵小隊を目標に前進した。
「しかし、ボルグ中尉が中破させられるとはな…敵も強いぞ!クロ、気を抜くなよ。」とダーインがいった。
「了解です。敵エース級に2対4とはは厳しいですね。」とクロノスが言うとダーインは
「大丈夫だ。俺達もエースだぜ。何とかなるさ!」と楽観的に答えた。
「はい。幸い敵は少しバラけています。素早く1機ずつ撃破して、次の相手に行きましょう!」
「クロ、どれに行く?俺が先頭の1機を抑えようか?」
「あれ、スナイパーですよね?ダーイン軍曹、抑えてもらって良いですか?俺は右側の赤いのに行きます。撃破後は、1番後ろの赤いのに行きますので、ダーイン軍曹はノーマルカラー2機を相手して下さい。」
クロノス達から見ると先頭だが、2人は戦車小隊を撃破するために後方の奥まで行ったために、隊形敵には1番後ろにいる敵が先頭となる。
「分かった。俺がノーマルカラー2機、クロが赤を2機相手しよう。1機目は、なるべく素早く撃破する様にな!」
敵もこちらには気付いている。スナイパーの援護に向かっている敵もいる。
「クロ、俺が突っ込んだら右に駆け抜けろ!行くぞ!」そう言ってダーインが飛び出した。
クロノスは、戦ってるダーインの横を走り抜けて敵の赤いABLMへ向かう。行く途中、左側の敵がスナイパーの元に向かっているのが見えたため、左腕のバルカンで牽制射撃をした。
すると、その敵がクロノスに目標を変えて走って来ているのである。
「ダーイン軍曹!ノーマルカラーがこっちに来ました!俺が相手するので、ダーイン軍曹はそいつを撃破したら奥の赤いのに向かって下さい!」
クロノスはそう言うと、目標を向かって来たノーマルカラーに変更して接近する。横からは赤い敵機が近づいて来ているが、距離的にはノーマルカラーの方が近かったので目標変更をしたのだ。
斬りかかる敵の剣を受け止め、すかさず腰の旋回部に剣を刺す。そのまま蹴り倒して両肘に剣を刺して腕を切り落とした。
「1機目を撃破しました。次に行きます!」クロノスは次の目標、赤いABLMの方を向いてダッシュして行く。
「よし!こっちも撃破した!俺は奥の赤いのに行くぞ!油断するなよ!」ダーインも次の目標に向かって行く。
ダーインが自分の相手を見ると、バズーカ砲をクロノスの方に向けていた。
「クロ!こっちの敵がクロにバズーカを向けてる。気を付けろ!」そう言って、左腕の無反動砲を牽制のために射撃した。
ダーインの相手が、バズーカ砲の向きを変えダーインの方に向けて撃つ。
「牽制か?そんな適当に撃って当たるかよ!」
ダーインが叫び、更に敵に接近する。敵はバズーカ砲を投げ捨て、ダーインに斬りかかってきた。
ダーインが剣を受け流して回転しながら横に斬りつけたが、敵がそれを躱す。
「あれを避けるのかよ…やるな…」ダーインは剣が当たると思っていた。しかし、回避されたのだ。
「いきなり大技は当たらんか…」ダーインがそう呟き正面を向くと、敵は剣を上段に構えていた。
「真剣勝負と行こうじゃないの!」
ダーインも剣を正面に構えた。
敵が突進して右から左へと剣を振り下ろす。ダーインがそれを受け流し、左から右へと剣を振った。
敵はバックステップして剣を躱す。
「こいつ…強いな…」とのダーインの呟きが無線に入り、クロノスがアドバイスをする。
「訓練で俺が言った事を思い出して下さい。敵の可動域を見極め、防御し難い所に攻撃するんです!」
ダーインは「あぁ、すっかり忘れてたよ…大技に頼っちゃいかんよな。」と言うと、今度は右から左へと剣を振り、敵が受けた所で素早く時計回りに回って敵の膝を目掛けて剣を振った。
敵の両脚を切断し、勝負はついた。
「俺、この技ばっかり使ってるな…。あっ!クロ、こっちは撃破した。そっちはどうだ?」
「こっちも終わりました。残りは1個小隊ですね。後ろから行きましょう!」
クロノスがそう言って、残りの敵に向かい前進する。
「1・2小隊、敵を撃破したかな?レーダーには、敵は2機しか表示されてない…まぁ、行けば分かるか!」
ダーインはそう言うと、残りの敵に向かってクロノスと共に走って行った。




