第071話 「戦場のメリークリスマス」
執筆が終わりました。少ししか足してないけど…申し訳ありません。
現地部隊と合流するために後退していると、クーナさんから中隊みんなに無線が入った。
「ドゥルガー大橋が破壊されたらしいわ…」
「何だって!それじゃ、連隊主力がこちらに来れないじゃないですか!」ダーイン軍曹が驚いた様子で聞いた。
「船でしか来れなくなるわね…。って事は、当分は現地部隊と2大隊だけでの行動となるか…」
こちらの戦闘は陽動で、島に掛かっている橋を破壊して、島を孤立させるのが目的だったようだ。
「しばらく増援は見込めないか…」とボルグ中尉が呟いた。
この島の面積は約36,000K㎡(九州くらい)であるが、基地は3個しか無い。
橋の長さは所々、途中の小島と繋がってはいるが、総全長約60km以上もある長い橋なのだ。
橋の一部を落とされただけで、橋の上には長蛇の列の軍車両が曝け出される事となり、格好の的となってしまう。
世界重要建築物として、国際法上ではドゥルガー大橋は軍事目標にしてはいけないと定められているのだが…敵は勝つためには手段を選ばない。
共和国、帝国共に、この島に上陸するには船しか手段がなくなった。
第3機兵連隊に大隊長が連絡を取った所、船を手配して積載するため、到着は早くて4日後だとの事であった。
現地部隊が海岸堡(部隊を上陸させるために海岸地域を確保するためのもの)を構築し、増援部隊を待ち構えている。
しかし、敵も次々と上陸し、海岸堡を構築していっているようだ。陣取り合戦だが、こちらの戦力は少ない。橋を落とされる事は無いとの油断から我が軍は対応が後手に回っている。
橋を爆破した敵部隊(戦車、砲兵に支援された1個ABLM中隊基幹)は、そのまま橋のある地域を確保されている。
敵の大船団がこちらに向かっているとの情報もあり、帝国は本気でドゥルガー島を占領する気のようである。
現地部隊は、すぐさま地対艦ミサイル部隊を沿岸に配置して大船団を攻撃した。しかし、部隊数が少ない為に、数は減らしているが全てを撃破する事は不可能であった。
敵の強襲揚陸艦が次々と海岸に到着する。敵部隊が展開し、海岸堡を拡大している。
海上戦及び海岸戦は、かなり激しくなってきていた。しかし、次々と上陸する敵を止めきれずにいた。恐らく敵は、1個師団規模は上陸しただろう。
こちらの戦力は、2個歩兵連隊、1個戦車連隊、2個砲兵大隊に2個ABLM連隊+我々の1個ABLM大隊だけだ。
MUC211.12.24
まだ味方の増援は来ない。上陸した敵部隊は、恐らく我が軍より多いだろう。
海上では、海軍が上陸船団と交戦し、海上戦も激しくなってきている。
地対艦ミサイル部隊の弾薬が底をつくため、これ以上持久するのは無理との判断から、敵が海岸堡として確保している地域に攻撃を仕掛ける事になった。
攻撃部隊は、防御側の3倍の勢力が無いと勝てないとの定説だが、今回は1対1くらいしか無いため明らかに劣勢だ。
劣勢の中、戦闘展開している第21歩兵連隊の増強部隊として我々第2大隊が行く事になった。
2大隊の任務は「陽動部隊として迂回経路を前進し、敵の側面を攻撃する」であるが、海岸線のために経路は限られる。
味方が攻撃前進を開始する前に、我々は出発していた。
整備班がブレリアのスペアパーツを持ってきてくれていたおかげで、左腕を交換する事ができた。俺の機体も万全である!しかし、色は薄いオレンジだが…
俺の機体が損傷するとは思って無かったらしく、色はクーナさんの色にしていたらしい…
「厳しい戦いになるな…」ボルグ中尉が小隊無線で呟く。
「そうですね…明らかに劣勢です。」と俺が言うとラッハ軍曹が
「俺達は、常に劣勢を跳ね返して来たじゃないか!今回も頑張ろうぜ!」と言た。
「ラッハの言う通りだ!俺は今回で、撃破数20の大台を越えるぜ!」とダーイン軍曹が張り切る。
「皆さん、撃破数は何機なんですか?」と俺が聞くと、ボルグ中尉は
「俺は今現在、11機だ。」と言い、続いてラッハ軍曹が「俺は14機だよ。」と答える。
「何っ!ラッハ、俺と同じじゃねぇか!負けられん!」
「ダーイン軍曹、そんな事より生き残る事を考えましょうよ。」とラッハ軍曹がツッコミを入れる。
「そうだぞ、ダーイン。所で、クロは何機なんだ?」
「俺は…戦車とかを入れると75機機ですかね。」
「クロ、年末に特別昇任とかあるかもしれんぞ?それだけ撃破してればなぁ…」とボルグ中尉が言った。
そんなもんなのかなぁ?
「ダーインとラッハだって、1個中隊を潰してる事になるから、昇任が来ない理由が無いしな。」
「よし!帰ったら、昇任の内示を確認するか!」とダーイン軍曹は張り切っていた。
相互のレーダー索敵圏内に入った。この作戦は、速度が鍵だ。敵の予期しない地域に迅速に移動して奇襲をかけるのだ。
「みんな、全速力で移動するわよ!攻撃目標は計画通り。隊形は保持してね!」
クーナさんの命令?に従い、全速力で敵に向かう。
隊形は、いつものように3小隊が前の三角形だ。
側面から攻撃を仕掛けると、1個ABLM連隊規模の敵がこちらに向かって来た。
我1個ABLM大隊対敵1個ABLM連隊…圧倒的不利である。
大隊長からの命令で、俺が先頭で目立つ行動をさせろとの事であった。
『蒼い死神』を目立たせて、敵を恐怖に陥れる作戦のようだが…そんなに簡単に行くのかよ…
と思いきや、意外にも…丘の上に堂々と立ち尽くす俺の姿を見た敵が混乱し、浅はかだと思われた作戦が成功してしまった…
3小隊にフォローしてもらい、俺が先頭で突撃して右翼の敵小隊を殲滅させると、敵が混乱状態となり逃げ出したのだ。
もう、俺が恐怖の対象のような感じで、俺を見ると逃げていくのだ…
まさか1日でこの地域を確保できるとは思って無かったな…数の上では、敵は4倍の勢力だった。それがこうもあっさり崩れるとは…
敵を殲滅した訳ではない。半分以上は逃げ出したのだが、俺達の任務は地域の奪還である。任務は達成したのだ。
掃討作戦も終わった。
敵の支配していた海岸堡を奪還し、港に停泊している船や港の物資を押収したが、かなりの量である。
本当にパニックになって逃げ出したんだな…
捕虜の話では、青い機体と、俺の後ろにいた機体のシールドに書いている『333』のエンブレムをみた者が「噂の死神小隊だ!」と叫んだのがきっかけとなり、更にあっさりと1個小隊を撃破した事でパニックになったと言う。
1個小隊を10分もかからず撃破され。「これは本物だ。敵は単機でも1個連隊を壊滅させる力があるんだから勝てる訳ない。」と混乱したとの事。
大隊長の作戦、効果あったんだ…。ある訳ないと思ってたよ…。
他の地域の戦闘も、かなり奮闘しているらしく、逐次海岸線の敵部隊を減殺して地域を確保しているとの事であった。
勢力は劣勢ながら、我が軍が有利に戦闘を進めているようだ。
MUC211.12.25
今日はクリスマスらしいが、俺はクリスチャンではないから祈る事はしない。
俺達第3中隊は、ドゥルガー大橋にいる敵ABLM中隊の撃破に向かう。今度の任務は地域の確保もだが、敵の撃破も含まれている。
海岸線の方は、もう歩兵連隊等に任せている。大丈夫だろう。現地のABLM部隊も居るし。
橋の地域だが、戦車部隊では射撃で橋に更なる被害が出る恐れもあるために射撃等はできないし、敵もABLM部隊であるために3中隊が行く事になった。
少ない戦力だ…たらい回しにされるのも致し方ないだろう。中隊の隊員には、疲労した表情の者もいる。任務がコロコロと変わるから、疲れるのも理解できる。
4中隊は、別な任務で歩兵連隊の増援に行った。大隊長が、3中隊だけで大丈夫だと判断したそうだが…敵は防御してるんだろ?攻撃の勢力は3倍必要じゃないのかよ?
さらに、敵は戦車と砲兵が増強されてるんだぞ?
この作戦は、橋を修理したくても敵がいるためにできないし、この地域を確保しても敵部隊を逃してしまうと、また逃した部隊がもう一度破壊に来る可能性もあるために敵部隊を殲滅するのも重要となる。
「いつも通り行こう!」と、クーナさんも楽観的だが…敵の情報があまり無いんだよな。
敵部隊と対峙した…情報通り1個ABLM中隊+αくらいのようだが…敵ABLMを見ると、ほとんどがパーソナルカラー、色付きなのだ。
「これ…エースを集めたんですかね?」と俺はボルグ中尉に質問した。
「こけおどしでは無いだろうな…本物だろう…」
「メリークリスマス!みんな、敵はほぼエースよ。いつも以上に慎重に行動してね!行くよわ!」
クーナさんがそう言って、中隊の前進が始まった。
これは…この前よりも激しい戦闘の予感がする…




