第070話 「女神の暴走」
サブタイトルを変更さしました。こっちの方がしっくりきたので…
休暇中に取材が来るため、その対応で3中隊のみんなが出勤した。
連隊長、大隊長の他、本管中隊長と第4中隊長も何故か来ている。連隊の広報担当者に一通りの説明を受けた。
みんなTVに出たがりなのか?中隊のほとんどの人員が参加した。とりあえず、段取りを聞いていく。
中隊長のインタビューがあった。遠目で見ていると、インタビュアーが色々な質問をしていた。
「あっ!指輪をされてますが、ご結婚されてるんですね?」と質問されてクーナさんが戸惑っていた。
「いえ。結婚はしていません。婚約指輪です。」とクーナさんが答えると、3中隊の隊員が「ヒュー!ヒュー!」と騒ぎ出した。
「相手はコイツですよ!」と言って、ダーイン軍曹が俺を引っ張ってクーナさんの隣に連れて行く…
「ちょ…ちょっと!ダーイン軍曹、これ、TVの取材ですよ!」と言って困惑する俺を見て、中隊のみんなが笑っていた。
「あれ?『蒼い死神』じゃないですか?それが『戦場の女神』と?お似合いですね〜!」とインタビュアーに言われ、俺もそのまま質問を受ける事になってしまった…。
「俺、まだ両親に彼女を紹介してないんですよ。どうしてくれるんですか!」と焦る俺…
そんなこんなで取材は和気藹々(わきあいあい)と進んで行った。
中隊の紹介、各小隊の紹介…そして蒼い死神と戦場の女神について…
元整備兵がパイロットになった話しをすると、それは興味深い!と言って特集記事となった。
3小隊も、『死神小隊』として、他の小隊よりも取材時間が長かった。まぁ、3小隊全員がエースだからな…
中隊を支える本部要員の人達…
連隊長、大隊長も取材を受けていた。
「女性が中隊長って珍しいですよね?」と聞かれて、大隊長が「ウチのABLM中隊は、どちらも中隊長は女性ですよ。」と答え、アスカ大尉を呼んでいた。
このためにアスカ大尉が居たのか…
取材も終わり、また俺達は軍のプロパガンダに使われるのだろう…けど、今回の取材は楽しかった。
放送日は21日だと言っていたので、録画しておこう…あっ!両親にも電話して見てもらおう。婚約者と公言してしまったし、クーナさんが映ってるからね!
休暇中は、クーナさんのアパートにいた。短い期間だったが、同棲生活だ!
一緒にずっといると、相手の嫌な所が見えると言うが…そんな事はなかった。短所も含めて大好きなのだ!
それに、お互いに猫を被る事もなく、隠し事もせずに普段から本音で話しているからだろう。
ってか、短所ってあったか?俺が気付かないだけかな?
しかし、色々な事に気付けた。クーナさんの事だけではなく、人生と言うものも人を愛すると言う事も…
1人では何1つ気付けなかっただろう事を、たくさん知る事ができたと思う。
そんな幸せを感じる時は、長くは続かないものなのだろう。
取材されたTV放送があるMUC211.12.21、緊急出撃要請が来た。ドゥルガー島の西側から敵の着上陸部隊が奇襲してきたのだ。
ドゥルガー島は、共和国本島と国境線で戦場になっているクレタ半島の中間付近にあり、共和国本島とは大きな橋で繋がっている。
我々第3騎兵連隊のアルメン基地は、共和国本島の最北端に位置しており、ドゥルガー島に1番近いのだ。
まぁ、ドゥルガー島にも基地があるが、その増援で行けとの命令だ。
更に、連隊の先遣として2大隊が行く事になった。4中隊長(アスカ大尉)も、着任後初の戦闘となるためやる気になっているようだった。
出発は15時との事で、急いで糧食、弾薬、燃料を積載する。1週間分の量を管理小隊のトラックに積載した。足りない分は、戦場近くの基地から受領するよう調整している。
当日18時に戦場に到着し、現地の部隊との調整と、現在までの情報を聞く。
作戦として、俺達の大隊は中央で待機し、敵ABLM部隊が出現したら対応する事との事であった。
敵の主力は、こちらの歩兵連隊の正面を拘束し、戦車中隊に支援された1個ABLM大隊が右翼に展開、包囲行動をとっているとの情報が入った。
包囲されないように足止めするため、現地部隊から出撃要請が来た。
はっきり言って分が悪い…。敵は1個戦車中隊が増強されているのだ。
右を3中隊、左が4中隊で戦闘展開しながら前進する。3中隊は、3小隊を先頭に1、2小隊が後方から支援する。
俺が先頭で目立つ所を前進している。俺を狙わせて、周りで支援して行く作戦だ。
最初に4中隊が接敵して戦闘になった。アスカ大尉に鍛えられ、4中隊もかなり練度が上がっているようで、中隊長から無線で
「4中隊が戦闘状態になった。かなり優勢に戦闘を進めている。」と連絡があった。
ボルグ中尉も安心だろう。彼女が無事だからな。
俺達は、第4中隊より少し遅れて接敵した。しかし、戦車1個中隊の主力はこちらに支援しているようだ。
「中隊長、敵戦車部隊は、約3個小隊規模います。」と、俺は確認した情報を報告した。
「4中隊正面には、約1個小隊がいるらしいわ。こちらが主攻撃部隊のようね。歩兵の対戦車ミサイルに気を付けて!」とクーナさんが注意喚起する。
「まずは右側の小隊からやる!左側からの増援を遮断して下さい。3小隊、行きます!」
そう言って俺は飛び出した。目の前に3機!左腕の固定武装マシンガンで先頭の1機を撃破し、後ろの2機へ向かう。
「1個小隊、3機編成ですかね?あと1機が見当たらない…」と言う俺にクーナさんが
「スナイパーが隠れている可能性があるわ。こちらが主攻撃なら、敵は1個小隊4機編成で来るはずよ。気を付けてね!」と言ってくれた。
「なるほど…確かにそうだな。」そう言いながら、目の前の2機の戦力を無効化する。
最初の1機目のバズーカを剣で斬り払い、そのまま両腕を切り落とした。足にダメージを与えて動けないようにし、2機目も剣で斬る。
「3機撃破!あと1機…。しかし、左側の敵小隊に目標を変更する。」と言った瞬間、前方の戦車中隊の砲塔が、全て俺の方に向いている事に気付いた。
その後、轟音とともに激しい射撃を受けた。
後方の戦車中隊の間にキャノン砲を持ったABLMが数機おり、一斉に俺に向けて射撃をして来たのだ。戦車12両とABLMが3機の計15門の射撃を一斉に受けた。
「しまった!避け切れない!」そう叫び射線に向けて半身になり、しゃがみ込んで剣と左腕で防ぐ。
激しい弾着音と共に、俺のブレリアか吹き飛ぶ。吹き飛んだまま転がって窪地に入り、敵の射線を切って追撃を免れた。
「キャー!クロ!クロぉぉ〜!」クーナさんの叫び声が無線で響くと同時に、クルタナが叫ぶ。
「よくも…よくもクロを!」
最愛の人を危ない目に遭わせた敵に対し、怒りに我を忘れてクルタナは飛び出した。
「クーナさん、俺、大丈夫だよ生きてるから落ち着いて!」
「よくもクロをやったわね!許さない!」
俺は左手を犠牲にしてしまったが、コックピット、足とカメラは守った。
しかし、クーナさんが止まらない。
「ヤバい!ボルグ中尉、止めて下さい!」
俺は必死で叫んだ。クーナさんを失ったら、俺は立ち直れる自信がない…
「中隊長!引いて下さい!3小隊が前に出てクロを守りますから!」
「戦車部隊を潰します!3小隊、援護して!」
誰の言う事も聞かずにクルタナが飛び出して行く。3小隊が慌てて中隊長機について行く。
ラッハ軍曹も慌ててキャノン砲を捨て、剣を握って最前線へ向かう。
「中隊長が暴走してる!1小隊、2小隊は射撃支援して下さい!俺も3小隊の所へ向かいます!」
俺はそう伝えると、爆撃で左腕を失って倒れた機体を起こし、右手に剣を持って急いでクーナさんの所へ向かう。
「ガイア、左腕の損失以外に不具合はあるか?」
『今のところ、左腕以外は正常です。バランス制御が追いついていません。五分お待ち下さい。』
「走りながらで大丈夫か?」
『はい。動いていた方が微調整しやすいです。』
「分かった。クーナさんを助ける。頼むぞ!」
俺はそのままクーナさんの所…と言うか、敵戦車中隊へ向かって行った?
遠目でクーナさんの戦闘の様子を見たが…凄かったな…
戦車の射撃を躱し、接近戦となった。接近すると、敵戦車は友軍相撃をしまいと射撃をやめて後退し始めた。
錯雑地であるので後退速度が遅いため、クーナさんのABLMが追いつく。
接近し、すぐさま砲塔の旋回部分に剣を刺して撃破して行った。
敵のABLMも護衛しているが、敵1個戦車小隊に1機である。合計3機。
クーナさんの前では、赤子も同然に次々と撃破されて行ったのだった…
3小隊の援護もあって、俺が到着した時には戦車7両のABLM2機を撃破していた。
残りは戦車5両とABLM1機である。
クルタナは、必死に逃げようとする敵戦車を執拗に追いかける。
「許さない…逃がさないわよ!」
1両たりとも逃がさないとばかりに、次々と撃破して行く。
戦車に射撃されても、冷静に避けているのには驚いた。ABLMのキャノン砲よりも初速は速いはずだし、いつ撃って来るか分からないだろうに…
「クーナさん、落ち着いてよ!俺も到着したよ!」
そう言って、俺も戦闘に参加した。
残り4両は、俺とクーナさんで2機ずつ撃破した。ABLM1機はラッハ軍曹が仕留めた。
一方的な戦闘…ここでの戦闘は終了し、次の敵小隊へ向かう。
右の小隊を俺が撃破して、クーナさんと俺達3小隊が敵の後方に回ったため敵部隊が混乱していた。3小隊達が敵の退路を断つ感じになったのだ。
残りの敵2個小隊は二正面での戦闘となって混乱し、殆どが1、2小隊の射撃に背中を撃たれて撃破されていた。残りは俺達3小隊が掃討する。
クーナさんが大隊長に無線を入れる。3中隊正面の敵を撃破したと。大隊長の命令により4中隊の援護に向かったのだが…到着した頃には戦闘は終了していた。
それにより、ここでの戦闘は終了した。
クーナさんには説教をしないとな…




