第068話 「友との再会」
アスカ大尉が第4中隊長に着任後、宿営地はなかなか騒がしい…
4中隊の隊員は、宿営地横の広場で連日訓練している。中隊長自らが隊員に教えたり、模擬戦をやっている。
だいぶ鍛えられてるな…と思って模擬戦を見学していた。
4中隊長、格闘戦もなかなか上手い。4中隊の隊員が、誰も中隊長に勝てないでいた。
「4中隊長、格闘戦も強いですね。」と一緒に見学していたダーイン軍曹に言ったら
「それでもクロには瞬殺だったけどな…」と言われた。あれ?なんか、自分の自慢した感じになっちゃってたのか?
しばらく見学していると、3中隊のABLMが乱入?か?して行った。
「おい!あれ…ボルグ中尉じゃないか?」
「ナンバー『333』だから、3小隊ではありますが…いや、ボルグ中尉ですね…」
背中の無線機用アンテナが2本あったのだ。小隊長機の証だ。
アスカ大尉のABLMの前に立ち、無線で何やら話しをしている様だ。
何をやっているんだろう…?
2機とも剣を抜いた。近くにいた4中隊のABLMが、一斉に避けて周りを囲む。
と思っていたら、アスカ大尉が切り掛って行った。
ボルグ中尉も剣で捌く。だんだんと激しい格闘戦となってきた。
「やっぱりボルグ中尉も強いな…」ダーイン軍曹がそう呟いた時に勝負は決まった。
アスカ大尉が左下へと振りかぶった剣を、ボルグ中尉が剣で受け流し、そのまま流れる様に剣を振り下ろした。剣が当たる寸前て止め、勝負はついた様だった。
「ボルグ中尉…と言うか、3小隊の全員が六聖剣より強いですよね…」俺がダーイン軍曹に呟く。
「まぁ、蒼い死神に鍛えられてるからな!」と言って笑っている。
いや…本当に、3小隊の全員が敵も含めてトップレベルだろうな。
「うん?何か2人で降りて話をしてるな…」
見ていると、アスカ大尉が下を向いていたかと思ったら、突然飛び上がって喜びボルグ中尉の腕を掴んで?腕を組んでいた。
「ボルグ中尉…あの返事をしたんですかね…腕なんか組んで…OKしたんですね。」
「あぁ…意外なカップル誕生だな…」とダーイン軍曹が少し驚いていた。
MUC211.12.1
今日から俺達第3師団の交代部隊がくる。俺達は、一時キャンプに戻って英気を養うのだ。
まぁ、また数ヶ月後には戦場に戻ってくるんだろうな…
今日から逐次交代していくが、第3騎兵連隊の交代部隊は明日来る。申し送りもあるから、出発時期は3日になる。
まぁ、申し送りは宿営地だけだし、交代部隊の代表に今迄の戦闘内容と、戦場となり得る地域について案内して説明するだけだ。
第3方面軍の交代部隊は第6方面軍だと言う。
申し送りにをしているのは、大隊長と各中隊長達だったが、申し受け部隊の第6騎兵連隊の人達が、第3小隊のメンバーに会って話がしたいと言っていたようだった。
何でも第3小隊は共和国のABLM乗りの間では有名になっている様だった。
師団でも苦戦した敵エース部隊を撃破した。と…
特に俺の噂が一人歩きし、「単機で1個連隊を殲滅した」とか「帝国に賞金をかけられたている。」とか…。まぁ、全部事実だが…
第6騎兵連隊の隊員に「どうしてそんな話を知っているのか?」ときいたら、どうやら軍の広報部が大々的に宣伝しているらしい。
プロパガンダの為に宣伝している様なのだ。
確かに、たまに軍広報部が来て写真を撮ったり、インタビューされたりしたが…言ってくれれば、まともに答えたのになぁ…適当にあしらってしまったじゃないか…
軍の広報新聞にも『帝国に「蒼い死神」と恐れられる兵士』と掲載されていたらしく、第6騎兵連隊の人達にも「蒼い死神」って人はどの人だい?とか質問される…
あと、小隊ナンバー「333」の死神小隊はの人達は?とか…
しかも、ブレリアは3型より古いのに、「エース用に小数生産された機体」とかって、勝手なストーリーを作ってるし…
かなり古い機体だぞ?開発は1型と同時期だからな…なんでエース用の最新型になってるんだ?
他の部隊の人達と色々と話をした。なかなか面白かったな。
俺が「蒼い死神」だと分かると、みんな驚くんだよな…若い!とかってさぁ。
クーナさんは「戦場の女神」と言われているらしい。戦場の女神って、砲兵の事じゃないの?
機体がオレンジ色の「戦場の女神」と「蒼い死神」の首に帝国が賞金をかけた。とニュースや特集番組でやっていたらしい。
あっ!そうそう!
ボルグ中尉は、アスカ大尉と付き合う事になった。やはり、俺達が見学していた模擬戦で返事をした様だ。
最初は、アスカ大尉が勝ったら付き合うと言う条件だったらしい…。
しかし、ボルグ中尉が勝ってしまった。ABLMから降りた時にアスカ大尉が下を向いて泣いていた。その姿を見て「そんなにに俺の事を…」と思ったらしく、ボルグ中尉が付き合おうと返事をしたとの事であった。女性の涙に弱いのね…
MUC211.12.3
申し送りも終わり、今日出発だ!
13時に出発し、到着予定は6日となる。早く帰りたい!みんなそうだろな…
何事もなく…物語的には面白くないだろうが、何の問題もなく基地に到着してしまった…
12月6日に到着し、7日に整備等をして8日から15日までの1週間休暇となる。
8日から休暇なので、クーナさんとダーイン軍曹と3人でナハス軍曹のお墓参りにいく約束をした。
ダーイン軍曹は、6日にはナハス軍曹の奥さんに会いに行ったらしい。様子は詳しくは聞かなかったが…
ダーイン軍曹の家に集合し、ナハス軍曹の家に向かった。
到着し、ドアを開けて奥さんをみた。1歳の息子さんを抱っこして、無理に明るく振る舞っている様に感じた。
俺と味方のABLMを回収に行って、味方の裏切りに遭い、自分の目ので殺された…
その状況を、事細かに奥さんに説明した。当時の様子も…その後についても詳しく…。
ナハス軍曹を看取った時の事を説明しているうちに、涙が溢れてきた。
当時の俺は、あまりにも無力だった。今ならナハス軍曹を助けれたかもしれない…
「悔やんでも悔やみきれません…。当時の俺に、もっと力が有れば…」そう後悔する俺に対して、ナハス軍曹の奥さんが涙を流しながら言った。
「あの人、クロくんを本当の弟の様に思っていたわ。家に帰ってきて仕事の話を聞くと、いつも決まってクロくんの話ばかり…。そんなに自分を責めないで!話を聞いた状況だと、クロくんだけでも助かって良かったと思う。本当に良かった。」
「しかし…どうにかしたら助けられたかも…」
「クロくん、自惚れちゃいけない。たらればで話をしたらキリがないのよ?クロくんは、その時は全力だったんでしょ?だったら、それがベストな方法だったのよ。旦那はいつも言ってた。『クロが間違った判断をした事はない。アイツは凄いやつだ!』ってね。」
俺は涙が止まらなかった…
クーナさんもダーイン軍曹も泣いていた…
みんなで涙を流して泣いていた…。ナハス軍曹の奥さんが、最後に「貴方は生きて。お願いだから、旦那の分まで生きて頂戴…」と言った。
お墓参りをした後、ナハス軍曹の奥さんはダーイン軍曹の家に行くと言っていた。
「ウチで少し呑もうか…」と言って、みんなでダーイン家でお酒を飲む事になった。
両奥さんが言う。
「あんた達、軍のニュースで結構出てたの知ってる?特にクロくん。クルタナさんも「猛者を率いる美人中隊長」とかって特集やってたし。敵エース部隊を撃退した時なんか、お祭り騒ぎみたいに連日のニュースでやってたよ?」
「俺は?俺は出てないのかよ?」と、ダーイン軍曹が焦る。
「敵エース部隊を撃退した時に出てたわね。その他大勢扱いみたいな感じで…」
「第3小隊?って言うの?の4人って所で紹介されてたわよ?番組を録画してるけど、見る?」
短い特番みたいなものではあったが、みんなで見る事になった。
「美人中隊長だって!きゃー!」ってクーナさん、めっちゃ喜んでる…
「おい!俺、競技会で優勝した3小隊のエースって紹介された!あの時の写真、これに使うためだったのかよ!」ダーイン軍曹も喜んでいる。
「私、『戦場の女神』とか『オレンジ色の天使』とか言われてるわね。」
「俺…大々的に『蒼い死神』になっちゃってたんですね…これならウチらも狙われますよね…」
「そう言えば、今度基地でTVの取材があるとか言ってたわ…第3連隊かと思ったら、ウチの中隊だけだって聞いて、変だと思ったのよね…」クーナさん、確かに変でしょ…何故ウチの中隊だけ?
「何か、ウチらの中隊…知らないうちに有名になってるみたいだな…」ダーイン軍曹も戸惑う。
「ここら辺の人は、『333』の小隊ナンバーを真似て車のナンバーを変更する人もいたわよ」
「元々333って、ラッキーナンバーよね…」
と奥さん達が話すが、本当に本人達が知らない間に、噂が勝手に一人歩きしている。
たまに広報部とかが来て写真を撮っていくのは、こう言う記事やニュースの為だったのか…
「まぁ、プロパガンダに使われているんでしょうね…。これを敵国が見たら、懸賞金もかけるよね。アロン中佐だけじゃないかもね。」とクーナさんが言うが、確かにアロン中佐じゃなくても懸賞金をかけるよな…。
「話は変わるけど、今日は旦那の49日なのよね。まぁ、宗教的な事はしてないけど、いつものメンバーでお酒飲みたいなぁって思ってたの。」
「そうなんですね…49日が俺の誕生日とは…」と俺が言うと、みんながビックリしていた。
「えっ!今日、クロの誕生日なのかよ…。」とダーイン軍曹も驚いた。
「私は知ってたけど、そう言う場じゃないと思って黙ってた。」クーナさんもいう。
「よし!お祝いしよう!」ナハス軍曹の奥さんかそう言って乾杯した。




