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機動機兵ブレリア「戦場の絆」  作者: キジ白のやまちゃん
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第066話 「賞金首」

 MUC211.11.20

 戦線は、国境から約10km手前の位置で膠着している。一時は半島の中間付近まで攻め込まれたが、何とか押し返す事に成功している。


 部隊交代の命令が下達された。12月1日以降に交代部隊が到着するとの事である。


 2ヶ月以上に渡って戦場で戦ってきた。前半は整備兵として従事したが、後半は本当の戦場に立つ事になった。人生とは分からないものである。


 ブレリアの整備をしたいと整備班から連絡があり、久しぶりに整備班に顔を出した。2大隊にはABLM(エーブラム)のⅡ型の他、Ⅲ型が1機にブレリアが2機ある。


 整備班には新たに補充要員として2名が配置となっているため、ブレリアの実物を少しでも見させて整備に支障がない様にしたいのだろう。


 まぁ、結局はこの2名には、俺が教えながら整備をした。元整備兵だし、このくらいは…と言うか多分、クーナさんと俺の方がブレリアは詳しいだろう。


 ブレリアは他の機体とは違うから、なるべく自分で整備をするようにしている。整備の前には機体も洗ったか。だいぶ綺麗になったな!



 現在、第3師団については、当初配置された防御陣地にいる。国境付近まで押し返したため、各部隊の配置は戦争が始まった初期と同じ位置にいるのだ。



 ここ1週間くらいは平穏な日々を送っていた。まぁ、陣地防御をしている歩兵連隊や戦車連隊達は、小競り合いはしているようだが、大規模な戦闘は起きていないみたいだ。



 と思っていたら…突然、宿営地に警報が鳴り響いた。第3師団正面の右翼部隊に対して、敵の遊撃部隊と思われる2個ABLM(エーブラム)小隊規模の敵から攻撃を受けているとの事であった。



 地形が強固な場所だったため、配置部隊が手薄な場所だった。そこに、陣地の弱点である横側から攻撃をされていると言う…


 2大隊が増援に行く事に決まったようで、すぐに出発準備に取り掛かる。


 1大隊は、一昨日に別な支援に行ったため、順番的には2大隊だよな…。なんか、2大隊って結構キツい任務が回ってくるような気がするのは被害妄想か?


 比較的近場であったため、警報から4時間後の14時には現地に到着してしまった。


 4中隊が防御部隊の護衛に付き、俺達3中隊が敵部隊を殲滅する事となった。


 陣形をとって敵と対峙する。1・2小隊を前に置き、3小隊を後ろに配置している。1小隊の後ろには中隊長(クーナさん)、2小隊の後ろには俺が付いて各部小隊を増援し、3小隊は全員110mmキャノン砲を装備して、前回とは逆の配置となった。


 いつも前線で戦う3小隊を配慮したのだろうが…クーナさん、俺も配慮してくれ…


「よし!前進するよ!」中隊長(クーナさん)が前進命令?なのかコレは…を言い、中隊が隊形を保持して前進する。


 あまり地図での戦闘予行をする時間がなかったため、行進中にミーティングをしている。


 敵部隊が攻撃を開始した。お互いにレーダーで探知できる距離では有る。しかし、敵が見えないぞ?射撃音と火光で敵の位置がバレバレなんだが…


 俺はそのまま2小隊の後ろをついて行っている。敵は何を狙っているのか、射撃を断続的に行っている。


 敵に近づいて行くにつれ、だんだんと射撃も正確になって来る。射線からの視覚は無いはずだから、レーダーのみで射撃しているんだろう。


 すると突然、1小隊からの無線が流れる。


「左側に敵影!レーダーでキャッチ!」と第1小隊の隊員が言うと同時に、前方の敵2個小隊が突撃してきた。


 敵は正面の2個小隊だけでは無かったのだ。第1小隊が奇襲を受ける。1小隊は、正面と左の敵2個小隊を相手しなければなくなるため、俺が援護に行こうとしたのだが…


「クロは自分の任務を遂行して!こちらの支援には、第3小隊が来るように。急いで!」


「中隊長、了解!時間稼ぎして下さい!」とボルグ中尉が伝える。


 1小隊は、どうやら中隊長(クーナさん)が最前線まで推進したようだ。


 俺は焦った…正面の敵1個小隊を速やかに撃破して、クーナさんの所に行かなければ…


「2小隊、援護を頼みます!俺が最前線にでる!」そう言って敵方に向かって突撃した。



 敵は4機…位置は分かっている。俺を発見した正面の敵は、何故か隠れながら射撃してきた。


 すると、1小隊の正面にいた1個小隊が、なんとこちらに向かって来たのだ。


 1小隊は、3小隊と合流する為に、少し下がろうとしていた。中隊長(クーナさん)は、その後退援護の為に前に出たのだが、正面の敵が居なくなっていくのだ。


「何?正面の敵が2小隊の方に…」と中隊長(クーナさん)が言った瞬間…


薄いオレンジ色の機体が吹き飛ぶ。


「きゃー!」と言うクーナさんの悲鳴を聞き、俺は顔が青くなった…


「中隊長!大丈夫ですか!」俺だけでは無い。みんなが心配している。


「痛ぁ〜い!チクショー!油断した。」とのクーナさんの無線を聞いて、ほっと胸を撫で下ろす。


「だって、正面の敵が居なくなるんだもん…。クロ!そっちに1個小隊行ったわよ!」



「了解!中隊長、大丈夫?」俺がそう聞くとクーナさんは


「生きてはいるけど…ブレリアの左腕を壊されたし、頭を打って痛いし…。3小隊は、2小隊の援護に行って!私は後方に下がる。」


 そう言って後ろに下がったようだ。一安心だ…


「頭にきたぞ!2小隊、俺は正面の敵小隊を撃破しに行く。左からの増援の足止めを頼む!」そう言って俺は突撃した。


 敵さえ見えていれば、俺は射撃を回避する自信はある。俺は射線から隠れる事なく堂々と広い草原を走って行った。


 バズーカやキャノン砲の射撃をされるが、それをかわして接近する。時には回避し、時には剣で斬り払いながら前進し、1機ずつ撃破して行った。


 前みたいにコックピットを狙っていない。動けない様に手足を切断したり、胴体を切り離したりして無力化していった。


「2小隊長、敵は生きているはずだから、近づく時は油断しないで下さい!」そう言って4機目を撃破したあと


「もう1個小隊を撃破する!」と言って左側に移動した。


 すぐさま近づき1機を撃破した所でボルグ中尉達が援護に来てくれた!


 ダーイン軍曹とラッハ軍曹が1機ずつ相手をしている。俺もあと1機を相手しようと思ったが、ボルグ中尉が


「クロは1小隊の援護に向かえ!ここは俺達で何とかする!」


 と言ってくれた。俺がクーナさんの事を心配しているだろうとの配慮だ。ありがたい。


「了解しました!お願いします!」そう言って、俺は1小隊の方に駆けつけた。


 心配を他所に、1小隊が敵を撃破し終わっていたようだ。と言うか、後ろに下がった筈のクーナさんが、何故か前にいる…


 どうやら、俺に心配をかけない様に無線では後退すると言ったようだ…そこから前に出て、右手だけで2機撃破したらしい…騙したな!



 3中隊(こちら)の戦いは終わった。4中隊はどうなっているのか確認すると、側背に敵1個中隊が回り込んで来たらしい。


 激しい戦闘となっている為、第3小隊が増援に行く事になった。4中隊の1小隊が何機か撃破されていると聞いて、急いで現地に向かう。


 大隊本部の付近に行くと、大隊本部辺りまで戦線を押し込まれていて、大隊本部が後退準備をしていた。4中隊が必死で大隊本部を守っている形になり、後手に回っている状況だった。


 ボルグ中尉が4中隊長と無線でコンタクトを取ろうと呼びかけたが、4中隊長機が撃破されて中隊が混乱しているとの事であった。


「指揮官がいないのか…4中隊!先任者は誰だ?」とボルグ中尉が呼びかける。2小隊長が先任者だが、2小隊長も敵が眼前にいる為に必死で、中隊に命令を出す暇がないようである。


「2小隊長、敵の規模は?状況はどうなってる?」


「あっ!ボルグ中尉!敵の規模は、約1個中隊。横から奇襲を受けて1小隊の2機と3小隊が1機、それに中隊長がやられた!」


「現在は1・2小隊が前線を張って、3小隊が後方支援をしているのか?敵を何機撃破した?」


「その通り!敵の撃破数は2機だ!」



 4中隊がまとまらないため、越権行為ではあるがボルグ中尉が指揮とる。



「1小隊、下がれ!撃破された味方機は、戦闘終了後に回収する。2小隊はその場を確保!3小隊は1小隊の位置まで前進して交代しろ!


「3小隊にはダーインとラッハ、2小隊は俺とクロが増援に行く!4中隊、頑張って耐えるんだ!」


しばらくすると、大隊本部から無線が入った。


「大隊本部、離脱準備完了!今から現地を離脱する。ありがとう!」と言って離脱した。


「4中隊、大隊本部が離脱した。1小隊の2機は大隊本部の護衛に行け!よし、攻めるぞ!」


 そう言って、俺とボルグ中尉が前に出た。



 俺が前に出ると、敵は一斉に俺に攻撃をして来たのだ。


「ボルグ中尉…コレ、完璧に俺を狙ってますよね…」


「そうだな…妙だな…」


「俺を狙っているなら、俺が陽動の為に引っ掻き回しますよ!援護して下さい!」


「了解!2小隊も援護に回ってくれ!クロが1対1になるように、他の機体を牽制してくれ!」


「了解した!」


(何で俺を狙って来るんだろう…。さっきもそうだった。俺がターゲットになっているようだな…)


 俺は、どうして自分が狙われているのか理解出来ないでいた。


「しかし!好都合だ!」そう叫び、突出している1機を狙う。


 おっ?色の違う機体がいるぞ!


「後方にパーソナルカラーの機体が1機いる。気をつけてください!色は茶色!」と言いながら1機目を撃破した。


「2機目!」そう言って次に向かう。茶色の機体の方が距離的には近いが、手強いと予想してノーマルカラーの機体に向かった。


「ボルグ中尉、茶色は最後にします。茶色いのを牽制して下さい!」


 そう言って、左腕のマシンガンで射撃する。敵が迂闊で、射線に身体を晒していたため、マシンガンだけで撃破できてしまった。


「あら?ラッキー!ボルグ中尉、次は茶色に行きます!」流石はエース。射線に機体を晒す事なく警戒し、剣を構えている。敵もなかなかだ。


 俺が近づくと、バズーカを1発撃って斬りかかってきた。剣でそれを受け止めてて捌き、そのまま右足を切った。


 体勢を崩した敵の左肩を斬りつけ、左腕を切り離す。最後にカメラを潰して仰向けにし、コックピットから脱出出来ないようにする。


「ボルグ中尉、終わりました。今後はどうします?」と聞くと、「2小隊は、3小隊の援護に行ってくれ!俺とクロはここに残る。敵エースを捕虜として捕まえる。」


「2小隊、了解!」そう言って3小隊の方に向かって行った。


「今捕まえるんですか?輸送手段がありませんよ…」


「なぁに、ABLMで握っていくさ!直ぐに聞きたい事があるんだ。」そう言って俺の方に向かってきて、茶色の機体を2機で囲った。


 ボルグ中尉がABLMから降りた。


「茶色い機体のパイロット!武装解除して降りてこい!今、降りれる様にしてやる。」そう言って、俺に茶色の機体を起こす様に指示した。


 機体を起こすと、パイロットが降りて両手を上げた。


「クロ、マシンガンをこいつに向けておけ。いざとなったら、俺ごと撃って構わん!」ボルグ中尉はそう言って、パイロットの身体検査を始めた。


 武器を持っていない事を確認し、ボルグ中尉が質問する。


「何故、この蒼い機体ばかり狙う?みんな狙っていたようだが。」


「この青い機体には、賞金がかかってるんだよ!金と2階級特進。そりゃ、みんな狙うさ。」と敵パイロットが言う。


 俺…帝国の賞金首かよ…


「それは、誰が掛けたんだ?ミノア帝国軍か?それとも個人的にか?」


「階級を上げるんだ、軍の上層部だろ?多分な。写真付きで各部隊にポスターが配られてるぜ?あと、これと同じ型で薄いオレンジ色の機体もな。」


 何と!クーナさんも賞金首だと!


「まぁ、オレンジの方は、賞金も青い機体の半額、階級も1階級特進だけどな。しかし、2機撃破すれば3階級も特進できるんだ。みんなやる気になるさ!」


「そう言うカラクリか…」ボルグも納得したようだった。




 第3小隊正面も、ダーイン軍曹とラッハ軍曹の活躍で殲滅し、俺達は掃討作戦に移った。


 俺は極力敵を殺さないように無力化していったため、捕虜が多数となってしまった。


 捕虜56名…多いな…大隊の約1/3の人数だ…


 仕方がないから捕虜を1カ所に集め、ABLM数機で囲んだ。


 2大隊には、これほどの捕虜を輸送する手段もない為、上級部隊に捕虜の輸送を依頼した。



 捕虜達を囲って警戒していると、敵兵が口々に言っている。「コレが賞金首の『青い死神』か…って。


 本当に、その通り名で定着してるみたいだな…


「蒼い死神か…もっとカッコいい通り名が良かったなぁ…」と俺が言うと、ボルグ中尉が


「蒼い死神…良いじゃねぇか。しかし、この333のエンブレムを見て、敵兵が『死神小隊だ!』って言ってたぜ?小隊名になっちまったな!」


 と言って豪快に笑った。


 死神小隊か…凄い名前だな…。もっとセンス良い奴はいないのかよ…


 

 掃討戦が終わる頃、捕虜の人数が少し増えた。

 


 捕虜の警戒を交代し、4中隊長の様子を隊員に聞いた。4中隊長は命は助かったものの大怪我をしているとの事。



 クーナさんに会って4中隊長の様子を聞いたら


「足が変な方向に曲がってて気持ち悪かった。頭から血を流してたし、あれは入院コースだね…」


 気持ち悪いって…一所懸命に戦った人に対して失礼だな…


 俺とクーナさんが、敵の賞金首になってる事は、報告した方が良いよな…宿営地に戻ってから言おう。


 師団の軍警察と輸送車が到着し、捕虜を連れて行ったので、うちらは撤収して宿営地に向かった。




 結局、敵の勢力は2個小隊どころか1個大隊だった。情報は重要だ。2大隊じゃ無ければ負けた可能性もある。


 うちら3中隊の損害は少なかったが、4中隊は被害が出てしまったな…


 そう考えながら宿営地の到着を、ABLM輸送車のなかで待った。

 気付いたら、5500字くらいになってました…


 けど、このくらいのボリュームでも大丈夫ですかね?


 3000字くらいが丁度良いと思ってましたが…

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