第064話 「捕虜への尋問①」
今回の戦闘で、俺達第3中隊は勝利した。完全勝利とは言えないかも知れないが…
俺が撃破したアスカ少佐の所に中隊長と第1小隊を呼んだ。一応は女性らしいので、武装解除の身体検査は女性にさせるべきと判断したからだ。
撃破した緑色のABLMを隊員達が銃を構えて囲む。俺はABLMに乗ったまま、もしもの時の為に待機する。
俺が緑色のABLMのコックピットの扉が開くように機体を起こす。無線でアスカ少佐にコックピットから降りるよう促した。
降りないと言うならば、コックピットに剣を突き刺すだけだ。
そう言うと、アスカ少佐は素直にコックピットから降りてきた。
「条約に従い武装解除する。貴女には身体検査を拒否する権利はない。手を頭の後ろで組んで足を広げろ!」
中隊長がそう言うと、アスカ少佐は言われた通りに従った。
「カーテナが中隊長ねぇ…。アンタの彼氏が見たいね。私を撃破してくれたヤツをさぁ…」
中隊長から身体検査を受けながら、そんな事を言っている。
身体検査も終わり、武器となる物を全て取り上げて拘束した。あとは大隊本部→連隊本部→軍警察からの師団司令部へ行って尋問されるだろう。
第2小隊の方も、バルム大尉の武装解除をして拘束したようだ。
このまま撤収となり、集結地の宿営場所に帰るのだが、ついでだから撃破した帝国のABLMの残骸を残らず車両に積み込んで持って帰る。
サイクロプス小隊?だっけ?の使っている機体は、帝国の最新型だと言っていたので、研究本部に回して解析させる為だ。
手順通りに捕虜の後送を行った。しかし、次の日に、軍警察から第3中隊へ電話がきたのだ。
なんでも、捕虜の2名が第3中隊長と第3小隊の人間にしか話をしないと言っているらしい…
大隊長、連隊長からの命令もあり、師団の捕虜収容所に行く事になった。捕虜のクセに、なんて我儘な奴らだ。
俺達5人は、小型車で師団捕虜収容所へ向かった。到着すると、軍警察の人に面会所の控え室に案内された。
そのまま軍警察に捕虜から聞き出して欲しい事項を伝えられた。
①所属、階級、氏名、認識番号、生年月日
先ずはこれを聞かない事には、捕虜としての待遇できるか、階級による特権を与えられるかの判断ができないし、捕虜として保護する必要も無い。まぁ、名前と階級だけは言っているようだが…
それ以上の事は捕虜の任意となるが、できれば
②帝国の目的
③現在の帝国主力の配置及び規模
等、聞き出せる事は聞き出して欲しいとの事であった。
元共和国の軍人で元六聖剣だと軍警察に伝えると、軍警察は知らなかったようで驚いていた。
じ後は反逆罪で軍事裁判にかかるだろうとの事で、そこら辺の事も聞いて欲しいと頼まれた。
一通りの注意事項を聞いて面会所に行く。最初はアスカ少佐からとの事であった。
機体色と同じ緑色のセミロングの髪。目は青く、肌は少し日焼けしたような薄い褐色である。見た目は綺麗なお姉さん?に見える。
「よう!カーテナ。あっ!クルタナだっけ?」と、明るく挨拶してくるアスカに違和感を感じる。
まぁ、元が共和国の軍人だから、共和国は人道的な待遇をすると知っているだろうし、軍の裏側も知っている人間だ。緊張感もないのだろう。
「どの男が彼氏?」と、全く緊張感が無い。
「先ずは、貴女の所属と階級、氏名、認識番号、生年月日を教えてもらいましょうか。」クルタナが淡々と話を進める。
「あんた、認識番号以外は知ってるでしょ?」と言うアスカに対し、クルタナが
「言わないと、捕虜としての待遇を受けれなくなるよ。」と脅しをかける。
「分かったわよ!帝国軍皇帝親衛隊、サイクロプス小隊。アスカ・ロン少佐。認識番号はA0258138。生年月日も言うの?歳がバレちゃうじゃない!」
「言うのよ!捕虜の義務でしょ?少佐にもなって、知らないとは言わせないわよ。」
「分かったよ!MUC175年6月28日ですぅ!」
36歳か…もっと若く見えるな…。しかし、少佐だからこのくらいか?
「あんた、見た目は若いな?って思ったでしょ?分かってるって!」と俺に向かって言うのだが…
こいつエスパーか?なんで分かった?その力を戦闘に活かしてくれ。
「で?どれが私を撃破してくれたヤツよ?蒼いブレリア乗りはさぁ。」
「俺だ。何か話したい事でもあるのか?」
「嘘ぉ〜?1番若いんじゃないの?これが彼氏?」とクルタナを見ながら驚く。
「こんな若造に手も足も出なかったなんて…」と言ってブツブツと独り言を言ったあと
「まぁ、クルタナはこの男に手や足どころか、色々と出された訳ね!」
この女…いきなり下ネタかよ…
「こんな若造って…あんたの所の一個連隊、クロが単機で壊滅させたのよ。ウチのテイン中曹が裏切った時にね。」とクルタナが言った。
「あぁ〜!あれもアンタだったの?機体色は普通だったって聞いたから、こんな化け物が共和国に2人いるのかと思ったよ…同一人物か。」
変に安心している…
「何で裏切ったの?何で2人を…クラウ大尉とエクス中尉を殺したのよ!」
クーナさんが怒っている…
「だって、命令されたんだもん。」
「誰に命令されたのよ?」
「アロン中佐に。俺達全員で、帝国に行かないかって言われて。私のお爺さん、元々帝国に住んでたのよ。で、共和国に移住したら風当たりが強くてね…私は共和国生まれだってのに、国どうしの小競り合いが始まると『帝国のスパイめ!』とか差別されてさぁ…」
「だからって仲間を殺すの?」
「帝国側に付くんだもん。もう敵でしょ?」
「けど、それまで一緒に戦ってきた仲間じゃないのよ!何でそんな事ができるのよ!」
「さぁ?私、感情が欠落してるのかしら…割り切って行動しちゃうからね…」
アスカ少佐は、少し考えるような素振りを見せると
「小さい頃から差別されてたから、軍人になって努力したわ。けど、軍でも差別された。そんな状況、アンタに分かる?待遇も良い帝国側に行く決心をするのには悩まなかったよ。」
アスカは、その他にも色々な差別や迫害を受けていた事を打ち明けた。軍に入ってからの事も。
クルタナは言葉が出なかった。そんな差別を受けていたなんて…
「帝国のスパイだ!スパイだ!って言われ続けたから、本当に帝国に行ってやったわ!共和国の為に努力をしても報われなかったし。」
「アロン中佐は、何で裏切ったの?あの人の目的は何?」
「さぁ?私はただ『帝国に行かないか?』って誘われただけで、深くは聞かなかった。あの人、元々貴族の出だから、貴族繋がりじゃない?まぁ、共和国になって貴族は衰退したからね。」
あの事件以降はブルーベル一族が帝国に亡命したとのニュースをやっていたらしい。
クルタナは話題を変えた。
「皇帝親衛隊の規模はどのくらいなの?何で親衛隊なのにアスカ少佐達は戦場に出てるのよ?」
「私達は特別なのよ。親衛隊って、大体1個師団程度で首都を守るけど、唯一、皇帝に命令権がある特別機動中隊なの。皇帝に大部隊の命令権を与えるとろくな事にならないでしょ?アロン中佐が戦場に出たいから、皇帝に意見具申したらしいよ。」
「その中隊、エースが集まってるの?」
「まぁ、みんなエースね。ただ、ウチらの小隊が1番だったし、世界一だとも思ってた。アンタらと闘うまではね。」
「とこで、帝国の目的ってなんなの?」
「半島を取り返す事じゃないの?知らない。」
こいつは本当に少佐なのだろうか…政治的な事に関心が無いとは…
「それよりさぁ、アンタ、随分若い彼氏を作ったわね!彼氏は何才なの?」
「俺は、来月21歳だが?何か問題でもあるのか?」クロノスが困惑する。調子狂うんだよな…
「えっ?何才年下?6歳?羨ましい〜!私も彼氏欲しいのよねぇ…」
まだ独身かよ…
「現在の軍の配置は?どうなってるの?」と、クルタナが話題を切り替える。
「知らないし、知ってても教える義務は無いはずよね?これ以上は軍関係の事は言わないよ?」
何だよ…捕虜条約を知ってるじゃないか…
「それより、クルタナが中隊長?それで、あなたが隊員を鍛えたの?凄いね!私も中隊長をやりたくなっちゃった!」
こりゃ…もう有益な情報は引き出せないな…
「ちょっと〜!久しぶりなんだから、もっと話しましょうよ〜!」とアスカが言っているが…無視!
これ以上情報は引き出せないと判断し、尋問を終わらせる事にした。
最近は文章の読み直しが、あまりできてません…誤字・脱字がある場合は連絡下さい(ー ー;)




