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機動機兵ブレリア「戦場の絆」  作者: キジ白のやまちゃん
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第063話 「青い鈴の紋章」

 アスカの放った凶弾の狙いは、薄いオレンジ色の機体だった。


「ロックオン警報?!」クルタナはすかさず中型シールドを敵方に向けた。次の瞬間、爆音と共にオレンジ色の機体が吹き飛ぶ。


「中隊長!大丈夫ですか?中隊長〜!」と、1・2小隊の隊員に衝撃が走る。


「危なかった…。みんな、シールドを前方に構えて!敵のスナイパーの射点予測データを転送するから、そこに発煙弾(スモーク)を撃ち込んで!」




 中隊長(クルタナ)を狙撃された。その行為に怒り、我を忘れて射点に向かう者がいた。クロノスである。



「アスカと言ったな?貴様は殺す!」クロノスは、無線で叫んだ。



「あっはっは!何なの?ムキになっちゃって!あんた、カーテナの事が好きなの?ハハッ!」とアスカが茶化す。


「俺の彼女だ!危害を加える貴様は許さん。あの世で後悔するが良い!」蒼い機体が戦場を駆け抜ける。


「彼女?戦場でデートかい?おかしな事をいうね〜!戦場だもん、敵を狙うのは当然でしょ?」アスカが更に煽る。


「蒼いヤツ、俺を無視するな!」ティルが後ろから斬りつけようとしたその時、ティルの赤い機体がキャノン砲により吹き飛ばされた。


 

「チッ…背中のシールドか…」ラッハが舌打ちをする。キャノン砲を捨てすぐさま剣を抜くと、赤い機体に突進した。


「お前の相手は俺だ!」ラッハが無線で叫ぶ。


「今度はお前が相手をしてくれるのか?スナイパーに格闘戦ができるのかよ?」


 ティルは直ぐに立ち上がり、クロノスを追うのを諦めてラッハと戦う事にした。


「俺は元々スナイパーじゃないんだよ!こっちの方が得意だぜ。」ラッハはそう言って一直線に赤い機体に向かった。


 


 中隊長(クルタナ)から送られた射点予測データを確認し、そこにクロノスは突き進む。


 味方の発煙弾(スモーク)の煙が落ち着く頃には、そこに敵影は無かった。


「ハハッ!いつまでも同じ場所にいると思う?無警戒なヤツ。はははっ!」


 アスカがキャノン砲を撃つ。しかし、クロノスがこれを回避する。


「火光が見えたぞ。隠れても無駄だ!」クロノスがアスカに迫る。


「私が格闘戦が苦手だとでも思ったの?」アスカはそう言うと、キャノン砲を1発射撃した後にすぐさま捨てて剣を構えた。


 クロノスがキャノン砲の弾を剣で弾く。それを見たアスカは驚愕した。


「何なの?コイツは…」


「アスカ!気を付けろ。蒼い機体のヤツは化け物だぞ!」とティルがアスカに警告する。


「こっちは帝国の最新機よ!ブレリアなんて、そんな古い機体に負ける訳ないでしょ?」アスカがそう言った直後、既にクロノスは眼前に迫っていた。


「何なの?速いよ!」クロノスの一撃目を防いだ事は称賛に値するだろう…。


 しかし、その後の連撃には反応が遅れ、クロノスの剣でなす術もなく斬り刻まれていく。


「ちょっ…ちょっと待って!いやぁ〜!」


「死にたいんだよな?今すぐ殺してやるよ!」

 

 四肢を破壊された緑色のABLM(エーブラム)を踏みつけ、クロノスが脅した。



「クロ!殺すな!捕虜にするから怒りを鎮めろ!」


 ボルグが慌てて止める。クロノスが切れた所を見た事がある者達は、またあの惨殺劇が繰り広げられるのではないかと予想してしまっていた。


「大丈夫です。こんなヤツは殺す価値もない…」


 そう言ってクロノスは剣を納めた。



「アロン中佐、撤退を!コイツもヤバい。スナイパーのクセに格闘戦が強い!」


 ティルが撤退を催促する。


「おいおい!本気か?俺達が2機も撃破されたのかよ…信じられんな…」


 アロンが驚くのも当然であろう。自分達が1番だと思っていたのだ。自分達の小隊が最強であると…


「この小隊長だけは撃破する!お前は撤退準備をしろ。アスカ、バルム、生きてるか?」


「辛うじて生きてるわよ…ってか、生かされてる…」アスカは屈辱にまみれていた。接近されてからは手も足も出なかったのだ。


 スナイパーとは言え、格闘戦のレベルは低くは無いと自負していた。それなのにである。


 バルムも応答する。「俺も生かされてます…捕虜になるくらいなら…」


「馬鹿野朗!生きてれば、いつかまた会えるさ!」


 バルムは自害も考えたが、アロンの言葉で踏みとどまった。


 次の瞬間、アロンに近づく敵影をレーダーで確認する。薄いオレンジ色の機体だった!


「中隊長、申し訳ない…敵の方が一枚上手でした。」とボルグが申し訳なさそうに報告する。


「ボルグ中尉、下がって良いわよ。アロン少佐は私が相手する。」


「カーテナ、俺は中佐だ!それに、お前が相手になるかよ。思い出させてやるよ!」


「私の名前はクルタナよ!昔のままだと思ってるなんて、随分とおめでたい性格ね。」



 ボルグが下がり、クルタナが剣を振る。それを受け止め


「速いな…確かに昔よりはマシになったようだ。」


「余裕を見せるのも今のうちよ!」


 クルタナはそう言って連撃を繰り出す。彼女もまた、クロノスと模擬戦を繰り返して技術を上げていたのだ。


 アロンは辛うじて防ぎ切った。


「何だ?この中隊は異状だぞ…」異変を感じたアロンが撤退命令をティルに伝えた。


「形勢不利だ!ティル、撤退するぞ!」


 そう言うと、辺りに発煙弾(スモーク)をまき散らして逃げていった。


「逃すか!」アスカを撃破した位置は、2機の進行方向だったためにクロノスからは丸見えであった。


 しかし、こちらにも発煙弾(スモーク)を撒き散らして一目散に逃げていく。


「クロ、深追いするな!」


 ボルグからの命令で、クロノスは追跡を止めた。



「『333』このエンブレムを覚えておけ!次に戦場で会った時の為にな!」ボルグが無線で叫ぶ。


「この借りは必ず返す!『青い(ベル)』のエンブレムを覚えておけ!」アロンが捨て台詞を吐き、この戦闘は終了した…



「さぁ!捕虜を2名捕らえたわね…。特にアスカ大尉には、聞きたい事が山ほどあるわ。」とクルタナが言うと


「私は少佐よ!言っておくけど、何も話さないからね!」とアスカが強がる。


 捕虜2名…小隊の半数を撃破し、この戦闘は第3中隊が勝利した。

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