第061話 「祈 り」
キャノン砲の射撃が弾着する。しかし、アロン中佐達が居る場所とは見当違いの所に撃ち込まれていた。
「何処を狙ってやがるんだ…下手くそか?」ティル少佐が呟く。
「敵は俺達を分断させたいらしい。各機の正面に1機ずつ敵機が向かって来てるぞ。」
アロン中佐は、第3小隊の企図に気付いたようだ。先程のキャノン砲の攻撃は、各機の間に撃ち込まれていた。密集隊形にさせない様に発煙弾まで使って各機に壁を作っているのだ。分からない筈がないだろう。
「タイマンなら勝てるつもりか?舐めやがって!」
と、ティル少佐が怒る。
戦場の様相は、クロノスがティル少佐、ボルグ中尉はアロン中佐、ダーイン軍曹がバルム大尉とそれぞれ対峙する事になる。
「ちょっと!ティルの正面に行ったABLM、あれ…ブレリアじゃないの?懐かしい〜!」とアスカ少佐が驚く。
「何?アスカ、映像を回せ。」とアロン中佐も確認する。
「確かにブレリアだな…。ティル、敵のブレリアと個人回線を繋げ。話をしてみたい。」
「了解!あっちが受けてくれるかな?」と言いながら、ティル少佐がクロノスに個人回線の信号を送った。
さらにアスカ少佐が報告する。
「ちょっと!もう1機ブレリアがあるよ!後方の中央…薄いオレンジ色ってカーテナじゃないの?」
「オレンジ色とも話がしたい。ティル、オレンジ色にも個人回線を送ってくれ。」
「了解!アロン中佐、今回は楽しめるんじゃないですか?」
と言いながら、ティル少佐は不適に笑った。
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クロノスとクルタナは、個人回線信号をキャッチした。
「ボルグ中尉、敵から個人回線信号が来たんですが…受けた方が良いですかね?」とクロノスは困惑した。
「おう!受けろ、受けろ!俺達3小隊の皆んなも繋げてくれ。ガッハッハ〜!」とボルグ中尉は豪快に笑う。
「ガイア、個人回線を受諾し、3小隊皆んなも繋げてくれ!」
『了解しました。個人回線に加入しました。3小隊に個人回線信号を送信します。』とガイアの報告を受け、3小隊に確認する。
「ボルグ中尉、皆さん、加入できましたか?」
「おぉ!加入したぞ!」と、ボルグ中尉を筆頭にダーイン軍曹、ラッハ軍曹も応答してくれた。
「何を人が開設した回線で盛り上がってるんだよ?青のABLMパイロット!貴様は何者だ?」
「お前こそ誰だよ?まずは自分から名乗るのが礼儀じゃないのか?」とクロノスが返す。
「ハッハッハ〜!こりゃ一本取られたな。俺の名はティル・フルンディング少佐。お前の目の前にいる、赤いABLMのパイロットだ。」
「俺がここの小隊長の、アロン・ブルーベル中佐、中央の黒と紫の機体のパイロットだ。俺の相手をしてくるのは誰かな?」
「共和国のガラド・ボルグ中尉だ。小隊長をやっている。小隊長対決といこうじゃないか!」
「帝国のニーベル・バルム大尉だ。黒のABLMのパイロットだ。」
「あんたの相手は俺だ!スライブ・ダーイン軍曹と言う。宜しく!」
「あっ!私はアスカ・ロン少佐よ。スナイパーだから機体色は教えないわ。そちらの支援機は誰かしら?」
「緑色のABLMだろ?俺はフラガ・ラッハ軍曹と言う。元々スナイパーじゃないんだがな…。」
「なんだ…機体色、バレてるのか…」
それぞれの自己紹介が終わった。そして戦闘が始まるかと思いきや、対峙したまま膠着した。敵がのらりくらりとして攻めて来ないのだ。
「おい!青のABLMのパイロット。お前は名乗らんのか?」とティル少佐が自己紹介を催促する。
「俺はクロノス・ソハヤ軍曹。青い機体のパイロットだ。お前らを殲滅する。今から投降するなら攻撃はしない。大人しく投降する事を勧める。」
「若造が…言ってくれるね!ところでソハヤ軍曹とやら、君の使っているABLMはブレリアじゃないのか?」とアロン中佐が質問する。
「そうだ。あんた達、元六聖剣だろ?ブレリアに見覚えがあるのも当然か…」
「ほう…俺達が元六聖剣だと知っているか…やはり後ろのブレリアはカーテナか?そこら辺の事情は聞いてるみたいだな。」
「カーテナじゃないわ。この中隊の中隊長、クルタナ・ドヴェルグ大尉よ。あなた達を殲滅する!クロが言う様に、投降するなら今のうちよ。」
「やっぱりカーテナじゃないかよ!久しぶりだな!まぁ、直ぐにお別れになるけどな。あの世でクラウと仲良くするんだぞ。よし!始めるぞ!」
アロン中佐の掛け声と同時に、前衛3機が突進して来た。
クルタナが中隊無線系で1・2小隊に命令する。
「敵が連携を取りそうになったり各機が近づいきそうになったら、間にキャノン砲を打ち込んで!あと、敵スナイパーを牽制する役を決めておくように。敵スナイパーは発見したら集中攻撃よ!」
「あとは3小隊次第か…私も増援に行く準備をした方が良いわね…」
3小隊…クロ…頑張って…。クルタナはそう祈りながら戦いを見守る。




