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機動機兵ブレリア「戦場の絆」  作者: キジ白のやまちゃん
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第058話 「初 陣」

 俺の機体が帰って来た。澄んだ鮮やかな青…ナハス軍曹が好きだった色だ。


 ボルグ中尉に、機体の種類が違う為に連携がとりにくいだろうという事を伝えたが、小隊の先頭で好きに戦って良い。他の3機で支援すると言われた。


 俺有りきの菱形フォーメーションだ。


 3機で行動する場合は逆三角形で、俺とダーイン軍曹が前衛となり、ラッハ軍曹が後ろで支援する。ラッハ軍曹がスナイパーだ。


 

 連隊も、再編成からの各中隊毎の訓練をしているようだ。メンバーも変わり連携を確認しているのだろう。


 かくいう第3小隊もフォーメーションの訓練をしていた。



 俺の場合は、ブレリアの慣熟訓練も兼ねている。


 しかし…この機体は凄い!本当に8年以上前に作られた機体なのだろうか?Ⅲ型よりも凄い…



 中隊長(クーナさん)の機体にも乗ったが、それともまた違う感じだ。初号機だからコスト度外視で作ったと言うのは本当だろう。


 クーナさんが言うには、俺の使うプロトタイプを作ってからコスト削減できる所を洗い出し、それから1号機から5号機を作ったと言っていた。


 まぁ、それでも高コストだったらしいが…


 「理想を求めすぎた」とクーナさんのお父さんは言ってたらしい。


 軍は、高コストで高性能の機体を求めていなかった。そこそこの性能でコストもそれなりで生産性が高い機体を求めていたのだ。


 質より数…戦争にとっては大切な事だろう…


 

 俺もだいぶブレリアに慣れてきた。やはり、敏感な反応は使いやすい様に調整したが、パワーはⅡ型の比ではない。


 左腕にはⅡ型やⅢ型と違い、20mmバルカン砲が取り付けられるようになっている。


 俺には無反動砲よりも使いやすいだろう。


 強制排除(パージ)もできるので、剣のみで戦う時は軽量化できる。


 盾もⅡ型用を装備できるが、左腕のガトリングはシールドと一体化されているので、必要性はないだろう。



 3中隊にもだいぶ慣れた。毎日クーナさんに会えるのも嬉しい。


 仕事が終わると一緒に居る時間が作れるけど、みんなの目もあるからイチャイチャはできない…


 けど、毎日クーナさんの笑顔を見れるだけで幸せな気分になる。夜に悪夢は時々見るが、それにも慣れてきた。睡眠時間は前ほど短くはない。


 

 噂によると、12月の初めには部隊交代をするために、第3方面軍は一時、基地に戻れるらしい。


 あと1ヵ月頑張れば…あと1ヵ月生き残れば帰れるんだ!


 

 しかし、戦況はあまり良くない。今は膠着しているが、国境よりもかなり押されて来ている。


 これ以上押されたら、我が部隊も集結地をもっと後方にするために下がらざるを得ないだろう。


 

 MUC211.11.6

 命令が下達される。膠着した状況を打開し敵の侵攻を阻止すべく、攻勢に転じて国境まで押し返す作戦である。


 我々第3機兵連隊は予備となっていたが、第8方面軍の形勢が不利となって来たために増援に行く事となった。


 出発は9日の予定であるが、準備次第出発せよとの事で急いで準備をする。


 7日の午後に出発する事になり、第3中隊も慌ただしく準備をしている。


 第8方面軍と連絡を取り合い、我が連隊は何度も作戦会議を実施している。


 我等2大隊は、最左翼の連隊の増援任務となった。大隊の作戦は、3中隊の2個小隊と4中隊で正面の敵を拘束し、残りの1個小隊が左側から回り込んで退路を遮断して敵の側背から攻撃する「包囲」と言う作戦を取る事となった。


 包囲部隊は、中隊長の指名で第3小隊に決まった。


 現地到着後、作戦会議などをして確認及び隊員に作戦内容を徹底する。攻撃開始は8日の朝からだ。



 時間になり、攻撃が開始となった。被増援部隊の状況を確認し、第2大隊主力が前線へ向かった。


 俺達、第3小隊は包囲の為に回り込んでいる。無線を傍受していると、時間が経つにつれて大隊正面の戦闘が激しくなっているようだ。


 見積もりよりも敵の規模が大きいらしい。4中隊は耐えているが、3中隊については1個小隊少ないため、1・2小隊正面が押され始めてきたとの事で中隊長(クルタナ)が2小隊の増援に出撃すると言っている。


「小隊長、行進速度を上げます。3中隊が持たないみたいです。」とボルグ中尉に意見具申する。


「了解。索敵は怠るなよ!」とボルグ中尉に言われた直後、レーダーに敵影を確認した。


 敵もこちらに気付いた様で、射撃をしてくる。


「おいおい!敵さん、1個中隊くらいいるぞ!」とダーインが伝える。


「中隊長、こちら33α(アルファ)、行進中に1個中隊規模の敵と遭遇した。作戦遂行は困難と思われる。」とボルグ中尉が報告する。


 中隊長(クルタナ)も、2小隊の増援でそれどころでは無いようだが…


「了解!無理はしないで!小隊長が突破できないと判断したら、こちらに前進してもらいたい。大隊長にもその旨を報告し、指示を仰ぐ。」


 クーナさんが危ない…早くクーナさんの所に駆け付けたかったが、俺は「中隊長、大丈夫です。任務を遂行する。」と伝えた。


「33e(エコー)、大丈夫なの?」と中隊長(クーナさん)が心配しているが…


「3中隊の危機を脱するには、俺達が任務を遂行するのが1番だ。このまま敵を殲滅する。」と伝え


「左側から攻撃する。小隊長、後方からサポートを頼む。」と言って、左の敵小隊に突撃した。



 先ずはマシンガンで牽制する。1番前にいた敵を蜂の巣にして撃破した。この20mmマシンガン、結構威力あるぞ!


 残りの3機が俺に射撃してきた。バズーカか?


 1機は砲口が見えたため、そちらに向かってダッシュし、弾丸を剣で弾いた。そのまま胴体に剣を突き刺すと同時に、左側にいたもう1機にマシンガンを撃つ。


 ボルグ中尉達は、右側の小隊に射撃をして抑えてくれている。


 残りの1機の射撃を躱し、剣で薙ぎ払った。4機撃破して、ボルグ中尉達が射撃している敵小隊へ向かう。


「こちら33e(エコー)、1個小隊撃破、隣の敵小隊を攻撃する。」


「こちら33α(アルファ)、了解。こちらは右の敵小隊に射撃をして抑える。油断するなよ!」


「33e(エコー)、了解!」そう答え、次の敵に向かった。


 ラッハ軍曹か?がキャノン砲で1機撃破していたようで、この小隊は残存が3機だ。


「33e(エコー)がその小隊を殲滅したら、全員で残りの小隊に突撃する。ラッハは後方から支援射撃をしろ!」


「33c(チャーリー)、了解!」とラッハ軍曹が答えた。


 近づきながらガトリングを撃つ。威力があり、なかなか役に立っている。ガトリングで1機撃破し、次の敵を剣で切り倒した。


 残り1機が逃げて行く…逃げる敵にガトリングを浴びせて撃破をした所で、ガトリングが弾切れとなった。


 威力はあるが…弾数が少ないな…


「こちら33e(エコー)、敵部隊を殲滅した。」


「こちら33α(アルファ)、了解!ダーイン、突撃するぞ!」ボルグ中尉がそう命令し、ダーイン軍曹と共に突撃した。


 各1機ずつ撃破し、ラッハ軍曹もキャノン砲で1機を撃破した。


 残る1機は俺の位置からは少し遠かった。ダーイン軍曹がそのまま向かい、無反動砲で足を止めて剣で撃破し、この地域の戦闘は終了した。


 普段は使わない小隊無線でボルグ中尉が言う。


「上手く連携取れたな!新生第3小隊は、なかなか良いんじゃないか?」


「クロが前線を掻き回してくれますからね!けど、油断するなよ、クロ!」とダーイン軍曹も喜ぶ。


「俺としては、クロが速すぎて…間違ってキャノン砲が当たるかと思ったよ…」とラッハ軍曹は困惑した。


「うちの小隊だけで、1個中隊規模の敵を殲滅できるとはな…」とボルグ中尉が言った後、中隊長に報告する。


「30、こちら33α、敵部隊を殲滅した。計画通り行動する。」


「えっ?あっ!了解。敵部隊を殲滅したの?」


「こちら33α(アルファ)、殲滅した。今から作戦通り回り込む。」


「了解!頼むわね。こちらへの到着は何時頃になりそう?こちらは何とか持ち堪えるから。」

 

「こちら33α(アルファ)今から約15分後の予定。」


「今から15分後、了解!近くなったら連絡して!」


 中隊長(クーナさん)は、いつも軍の無線通話要領で通話しない…普段の喋り方で喋っている…



 まぁ、それが良いって人もいるが…



 俺達第3小隊は、作戦通りに回り込んだ。


 

「30(中隊長)、こちら33α(アルファ)、予定地域に到着。今から攻撃を開始する。


「了解。第3小隊の攻撃と同時に、1、2小隊が突撃する。」


「了解!攻撃開始1分前…」


 カウントダウンが始まる。


 0と同時に第3小隊が射撃をする。と同時に、第1、2小隊共に突撃を開始した。


 俺も単機で突撃する。主な任務は「敵を混乱させる陽動役」と「敵に退路を遮断されたと思わせる」事である。



 

 作戦は成功し、敵部隊を殲滅した。何機か逃げられたが、第3中隊が目標を撃破したのだ。


 第3中隊が前線を押し上げた事により、第4中隊正面の敵は下がらざるを得なくなった。



 

 ブレリアでの初陣は、見事な勝利で幕を閉じた。



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