第051話 「戦線布告」
ただの戦線布告文です。
読み飛ばししても問題ない内容です。
とうとう、ミノア帝国が戦線布告をした。整備班の隊員達がTVにかじりついて見る。
TVでは、ミノア帝国の国王ではなく、首相が演説を行なっている。
戦線布告の演説が始まった…
『我々ミノア帝国は、本日、ここにトロイア共和国に対し戦いを宣する。
2年5ヶ月前、我々は戦争を終結させた。約9年間の長きに渡る戦争は終結したのだ。
しかし、古来より我々ミノア帝国の領土たるクレタ半島は帰ってくる事はなかった。我が国は、今まで長きに渡る屈辱に耐えてきたのだ。
トロイア共和国は、南東列島周辺のみならず、東の大地周辺の禍乱を助長し、平和の美名に匿れて東の大地制覇の非望を成し遂げんとする。
あまつさえ、帝国周辺に於いて武備を増強して我等に挑戦し、更に帝国の通商にあらゆる妨害を与え、更に経済断交を敢えてし、帝国の生存に重大なる脅威を加える。
これらが許される行為なのか?いや!決して許してはいかんのだ!
東の大地安定に関する帝国積年の努力は、ことごとく水泡に帰し、帝国の存立の危うきとなっている。
今や帝国は、自存自衛のために、我が国に及ぶ一切の障害を排除する以外に道は無いのである。
国民全員の力をもって速やかにこれを排除して、東の大地の平和を確立し、以て帝国の栄光を保たん事を期す!
国民よ、今こそ立つ時である!
怒れ!国民よ!この無法者どもに怒りをぶつけよ!我等帝国の栄誉と繁栄を守るために!』
「言いたい事を言いやがって!断交は帝国側からやってきたんだろうが!」とナハスが叫ぶ。
「お前らが平和を乱してるんだろ!いつも戦争を仕掛けやがって!」とバルク中曹も言う。
確かに歴史上、トロイア共和国から戦争を仕掛けた事実は無い。常にミノア帝国からだ。
どうやらミノア帝国の目的は、クレタ半島の奪還支配のようである。
しかし、何回も戦争を仕掛けてきたミノア帝国に対する緩衝地帯として、昔の戦争で勝利した我が国が奪った領土だ。
もし、クレタ半島を返還したら、今度は共和国本土を攻めてくるだろう。
お前らが、何回も戦争を仕掛けて来るから奪ったのだ。
この半島は、長きにわたりトロイアの領土だった。もう、元の帝国側の住民はいないはずだ。
しかし…
戦争は始まってしまった。賽は投げられたのだ。
こんな事になるなんて…本当に信じられない気持ちでいっぱいだ。
敵はもう、そこまで来ているのだろうか?
見えない影に怯える日々を過ごさなければならないのだろうか…




