第050話 「開戦の鐘」
MUC211年9月14日に基地を出発し、17日にナミール州の南に到着した。
途中、ドゥルガー島から船に乗ってサンガール(六聖剣が戦死したとされる場所と同じ州)まで移動したが、特に大きなトラブルも無く到着できた。
俺はABLM回収車を、ナハス軍曹と交代で運転して来た。車長はバルク上曹だ。
良かった…レイア伍長が一緒じゃなくて!また質問攻めにあったら、たまったもんじゃない!
まぁ、ABLM整備員がABLM回収車を運転するのは当たり前だよな。
予定していた集結地に到着し、その後は野営準備をした。
予定の防御地域は、ここよりまだ少し先だ。
偉い人達が会議をしているようで、ウチら下っ端は待機している。
ABLM連隊以外、主に歩兵連隊や戦車連隊は『陣地防御』をするため、2〜3日後から陣地工事を始めるようだ。
しかし、ABLM連隊は、その特性上『機動防御』を主とするため、指揮所などの重要施設以外は築城しないのが基本となっている。
陣地防御とは、陣地・要塞など、防御部隊が選定した戦闘地域において計画される防御の方式の一つである。
地形を最大限に活用して陣地を建設し、部隊を適所に配備することにより、敵の攻撃に対して大規模な損害を与える防御である。
機動防御とは、機動打撃に主体を置き、敵を撃破して防御の目的を達成しようとする方式である。
このため、敵を不利な態勢に陥れ、自軍の主力をもって機動打撃を行い、敵部隊を撃破して敵の攻撃を破砕する。
MUC211年9月19日、防御地域に到着した。
我が2大隊は、第32師団の第322歩兵連隊に直接協力するための増援部隊となる。
到着後すぐに、大隊長、中隊長や小隊長達は陣地の偵察に行った。
偵察が終わり小隊長が帰ってきた。その後に小隊は移動して、大隊段列予定地域へ向かった。
段列とは、軍の作戦において必要な後方支援の事である。
前線にて戦闘活動を行う中隊以上の規模の部隊は、常に万全の体制で作戦行動を行う為、常に一定以上の補給・整備支援を必要とする。
その支援を担う部隊等の活動区域・人員等を段列と言うのだ。
大隊段列の長は管理小隊長である。
段列には弾薬や補給系統の他、整備や衛生といった後方での支援部隊も入るのだ。
段列地域に関しては、一般的に前線から離れ、戦闘行動による損耗等が起きにくい地域等が選定される。弾、飯が無ければ、戦闘を継続する事ができないからだ。
予定地域に到着後、俺達整備班は整備所を開設する。大きめの整備用天幕を組み立て、敵砲弾からの避難場所の穴を掘る。
整備所を作り終えたら、小隊本部の築城を手伝いに行った。
先程から『築城』と言っているが、ようは穴掘りである。
本部機能は重要なので、頑丈に作る。
油圧ショベルで穴を掘り、鉄骨や木の板で内部構造を組み立てて土で埋める。秘密基地の完成だ!
まぁ、そんなに楽しいものでは無いが…
4大隊は築城してるのかな?警戒部隊として前方に配置されてるんだよなぁ…
歩兵連隊や戦車連隊は、10日くらいかけて要塞の様な陣地を作っていた。遠目でしか見ていないが、かなり凄い陣地だった。
MUC211年10月1日、整備班の指揮所でTVを見ていた時、ニュース速報が流れた。
ミノア帝国が、我が国に戦線布告をして来たと言うニュースを見て、大隊内に衝撃が走った…
開戦してしまいました。
開戦までのほのぼの系文章をかなり端折ってます。読者的には戦闘描写が見たいのだろうと…




