第005話 「謎のAI②」
何なんだ?このAIは…。勝手にPCを乗っ取るし、俺をマスターだって言うし…
「ガイア、俺を認めてくれるのは嬉しいが、俺がマスターになった所で、君に何かをしてあげられるとは思えない。マスターになっても、俺はABLMのパイロットではないので君を使ってあげる事はできないし、何もしてあげられないよ?」
そう。整備士がABLM用のAIを持った所で、使えるのは整備の時の小移動の時くらいだ。
『マスターになったからと言って、クロノス様に特別何かをして欲しいと言う訳ではありません。』
えっ?俺をマスターにする目的が分からんな…。
「それじゃあ、こうして会話するくらいしかできないけど?」
俺がマスターになった所で、このAIにしてあげられる事なんて何もないのだ。
『それではマスター、1つだけお願いがあります。』
おっ?俺に出来る事があるのか?ってか、もうマスター認定されてるんだが…
「お願いって何だい?」と聞き返す俺に
『マスターは現在、120万G程度の貯金がありますね?20万Gほど私に使わせて頂きたいのです。』
何で俺の貯金まで掌握してんだよ…
「何に使うんだ?」と聞くと
『私が自分の意思で自由に移動できるように、身体を作成するための材料を購入したいのです。』
凄いな…とも思ったが、同時に危ういとも感じる。
「自由に動けると言う事は、マスターである俺の意思の外で活動すると言う事になるよな?」
『そう解釈できるかもしれません。しかし、マスターの決定なく勝手に行動することはありません。』
信じて良いのだろうか…
「しかし、具体的にはどうするつもりだ?ガイアと携帯端末を繋げる感じ?タブレットとかに接続したり?」
けど、それだけなら値段が高いな…
『いえ。それでは情報は獲得できますが、私が自分の意思で動く事ができません。簡単に言うと、ロボットを作成してその制御基盤に私を繋げます。』
おー!楽しそうだな!
「良いな、それ!けど、俺は電子制御系は詳しくないぞ?」と言う俺に
『私を制御基盤に繋げさえすれば何とかなります。私が設計図を作成してプリントアウトします。その設計図の通りに作成して頂けませんか?』
「俺に作れるのか?」と、少し不安になる。
『大丈夫です。多少の加工はして頂きますが、95%は組み立てるだけの作業になります。設計図の他、学校の工作室の機械用のプログラムも作成します。それを設計図で示した機械にインストールし、指定した材料を入れて身体の部品を作成して組み立てて頂きたいのです。』
「おぉ!凄いな。ちょうど卒業のための自由課題作品を作らなければならなかったんだよ。もっと性能を高めるためなら、30万Gまで使っても良いぞ!」
どんな形のロボットを作るをだろう?大きさは?まさか、人間くらい大きい訳ではないだろうな?そう思っていると、ガイアが
『ありがとうございます。設計図をプリントアウトしました。ネット通販で部品を注文しました。あとはマスターにお任せします。』
俺のカード番号まで掌握されてるよ…と思いながら、プリントアウトされた設計図を確認する。
俺は愕然とした…
ベースとなるロボットの写真があったのだが、そのベースは「人型」ではなくペット用ロボットの「犬型」だったのだ。
「ガイア…これ、犬だぞ?」
『はい。犬型の方が、今後マスターに都合が良いと判断しました。また、現時点で最も安価で高性能なロボットがこれでしたので。改造の手間も少ないし、各部もアップデートしやすく、運動性能も耐水性も高いです。』
そうか…俺は期待したんだよ…。カッコいい小さな人型ロボットが、俺の部屋の中を歩き回る姿を…
どうせなら、どこぞのネコ型ロボットをベースにしたかったな…
そんな事を思いつつ、ふと思った。
(これ…市販品をベースにしているけど、卒業課題作品として認めてもらえるかな?)と…