第042話 「何気ない幸せ」
本編とは趣旨が違うかもしれません…
ちょっと休憩?的な感じです。
連隊 ABLM競技会が終わった。
クーナさん率いる第3中隊は、「小隊戦の部」優勝、「個人戦の部」代表2名が1位と2位と言う、完璧とも言える成果を収めた。
ここでゆっくり休みたいだろうが、各中隊は次の技術競技会に向けて練成している。
俺は、訓練装置の取り合いになるんじゃないか?と予想していたが、そこは競技会の運営。キチンと各中隊に平等に使用できるよう、使用日を配分していた。
小隊用訓練装置の部の難易度は『中』でやる事になった。
3中隊の競技会の時は難易度『低』でやってアレだったから、10分も持ち堪える人は少ないだろう。
今回は、整備兵などの「準パイロット資格」がある者も参加可能となった。多分、俺の例もあるから少しでもパイロット適正の有る者を発見したいのだと思う。
この者達は大隊内で調整して、自分が使用するABLMやAIを借りる事になる。
俺は出場しない。この前やった展示の記録で十分だ。もうやりたくない。
まぁ、クーナさんは「私のために優勝してっ♡」と言っていたが…断ってしまった。
俺は「NO」と言える人間なのだ!
色々な中隊に、競技のコツについて教えて欲しいから、俺に訓練教官をしてくれとの調整が来ているようだ。
しかし、大隊長が断っているらしい。そりゃあ、自分の所の中隊を勝たせたいからなぁ…
競技会終了後なら教官として差し出すと言っているようだ。
で、3中隊だけではなく、4中隊にも教官として訓練をしている。本来の仕事はABLMの整備なのに…
まぁ、大隊長の命令だ…断る事も出来ないってのが実情だろう。
3中隊に、格闘訓練装置のコツを教えた時は、かなりの質問攻めにあったため丁寧に教えた。
俺はターゲットのロック表示を2個だけとしている。1つ撃破する時に、その次のターゲットを撃破しやすい体勢に持っていけるようにし、撃破したら次。その時、新たなターゲットが表示されるため、新たなターゲットが斬り易い体勢になるようにそのターゲットを撃破。
ただコレの繰り返しである。理屈が解れば難しい事では無い。みんな理解はしてくれたようだった。
俺はパイロットとして登録され、自分のAIを貰った。これには利点が2つあった。
1点目は、クーナさんが言ったように、他の人のABLMを使う事になっても、ABLM使用者のAIを借りなくて済むと言う事だ。ガイアを堂々と使えるのだ。
ダーイン軍曹の様に、AIに戦闘記録がないと気付かれても、堂々と自分のAIを使ったと言える様になった。
2点目は、ガイアに人前で会話をさせる事ができる様になった事だ。
みんなには「犬型ロボットに、パイロット用AIを組み込んだから会話ができる様になった。」と公言した。その事により、ガイアも他の人とコミュニケーションが取れる環境になったのだ。
1番、2点目が嬉しい。ガイアも堂々と他人と会話ができる様になって喜んでいるみたいだ。感情はよく分からんが…積極的に知らない人と会話している。
おかげで基地では、「喋るロボット犬『ガイア』」は有名になった。
問題が1つある。貰ったAIをどうするか?である。使うにしても、どう使うか…。
大切に隠しておくのも勿体ない気がする。どう活用するか悩んでいるのだ。
各ABLM中隊は、日を追うごとに訓練が本格的になっているようだ。整備工場も、小さな不具合でABLMが代わる代わる入ってくる。
忙しい中、訓練装置を使った訓練をする時は3中隊と4中隊の訓練を見に行ってアドバイスをする。
みんな、かなり上達したと思う。特に3中隊の3小隊の人達は、飲み込みが早くて良いタイムを出しているようだ。
1日を終え、自分の部屋に帰り一息ついた。
TVをつけると、最近は戦争の話題ばかりだ。毎日毎日戦争の話題を繰り返している。本当にまた、戦争が起こるのだろうか?
そう思うと、このような日常も幸せに感じた。
クーナさんと付き合うまでは「平和な方が良いな」くらいしか思っていなかった。俺も、戦争参加経験があると言っても、第一戦に行く事もなく終戦したから理解していなかった。
しかし、クーナさんみたいに戦争に参加した事によって、今もまだ苦しんでいる人達がいるんだ。
勝った、負けたの話では無い。それぞれが受けた心の傷は一生消える事は無いだろう。
戦士は将棋の駒では無いのだ。心があり、感情がある。それでも戦争を繰り返そうと言うのか?
メディアでは、早くてあと2ヶ月後には戦争が始まるだろうと予想している所が多い。戦争を回避する努力はしているのだろうか?
初めて人を好きになって、この幸せを失いたく無いと思った。
何気ない日常が幸せだと感じる事ができるのは、それが崩れた時の事を想像しているからだ。
怖い…想像すると、本当に怖くて仕方がない…
戦争なんて無くなれば良い。戦争なんてしなければ良いのに…




