第039話 「鬼神の如き」
番外編の様な物語です。
館内放送が流れる。
「1600から格闘訓練場に於いて、ABLM技術競技会の実施要領の展示を行います。各部隊の関係者はお集まり下さい。繰り返します……」
「あっ!忘れてた…これ、俺がやるんだよな…」
そう、応援に夢中になって、すっかり忘れてたのだ。詳細を聞いてないな…
すると、またもや館内放送が流れる。
「第2大隊 本部管理中隊のソハヤ軍曹、至急、格闘訓練場の天幕までお越し下さい。繰り返します……」
おっ!格闘訓練場に行けば良いのか?
格闘訓練場に行くと、先程の競技会運営幹部がいたので、一通り説明を聞いた。
3中隊の時とルールは同じだったが、ターゲットの数が倍の60になっていた。
「ソハヤ軍曹、できるか?」と心配そうに見ているが…ターゲット60個は、やった時が無い。
「1分は掛かると思います。まぁ、やってみますよ。」
と言ったら、クーナさんが応援しに近づいて来た。
「クロ…頑張ってね♡」
おっ!ハートマーク付きの応援だ!メチャクチャやる気出た!
「クーちゃんの前だ…カッコつけるよ!」
「カッコいいとこ、期待してるぞっ!」
やる!俺はやるぞっ!
要領は3中隊の時と同じだ。ABLMに乗り込み、ガイアをセットする。
「ガイア、今回は、ABLMの負担を関係無しに全力でやる。サポート頼むぞ!」
『了解しました。やり方は前回と同じで宜しいですか?』
「あぁ。最速で撃破できるであろう2個だけロック表示してくれ。」
『了解しました。』とガイアが言うと、展示開始の合図まであと少しとなった。
集まった隊員達に、競技会の運営が実施要領の説明をしている。
これが終わってから開始となる。
説明も終わり、開始位置にいるスタッフが手を挙げる。さぁ、スタートだ!
競技開始のブザーが鳴った直後から全力だ!ターゲットを次々と斬っていく。
短いと思っていたが、60個は長いな…飽きてきた…
ギャラリーには、3中隊の人達も来ていた。
「鬼神の如き凄さだな…」とボルグ中尉は呆れている。
「この前よりも凄いですよ…無駄が無い…」とラッハ軍曹も唖然とする。
「これ、クロにコツを聞いた方が良いですね。あいつ、教えるのも上手いから。」とダーインが言った。
「ガイア、あと何個だ?」
『20個です。』
長げぇ…しかし、ここで集中力を切る訳にはいかぁ〜ん!
ガイアがカウントダウンする。
『残り5、4…3…2、1…0。終了しました。』
「結果はどうなんだろう…」と言うとガイアが
『58秒12です。』と答える。
「おっ!1分切った!俺、頑張った!」と、自分で自分を褒めた。
競技会運営側から言われたタイムは、58秒14だった。まぁ、少しの誤差はあるよな。
ABLMから降りると、先程の幹部が近づき「お疲れさん!凄かったよ。」と言ってくれた。クーナさんも走ってきて…
「クロ、めっちゃ凄かった!うちの競技会の時よりも凄かったよ〜!」と褒めてくれた。
「ありがとう!」と言うと、運営幹部が
「君達、本当に交際してるんだな…」
しまった!人目があるのに、クーナさんにタメ口を使ってた…
「あっ…はい。基地内では敬語を使う様にしてたんですが…つい、癖で…」と言い訳をしておいた。
「いや、大丈夫だろ?基地の隊員は、君達が交際している事を全員知ってるよ。あの公開告白は有名だからな…」
確かに…有名だよな…
「いやぁしかし、助かったよ!良い競技展示になったし、皆んなには目標タイムになっただろう。ありがとう!」
と、お礼を言われた。
まぁ、何にしても1日が終わった。
小隊戦は3中隊の優勝かぁ…親しい人達が優勝するって、結構嬉しいね!
3中隊、明日も頑張ってくれよー!
あっ…選手は目の前にいるクーナさんか…
「クーナさん、明日、頑張ってね!」
「うん!クロのために優勝するよ!」
優勝するってあっさり言ったな…




