第038話 「操縦者」(連隊競技会)
今日はUMC211.7.30の火曜日である。
連隊 ABLM競技会の初日なのだ。
俺は…何故か競技会の会場にいる。しかし、選手としてではない。整備支援の要員としてだ。
誰かのABLMが壊れたら、それを修理するために待機しているのだ。
まぁ、修理に時間がかかるようなら、選手以外のABLMを使ってもらうしかないんだけどね。
整備支援と言っても、自分の大隊のABLM整備だから、やる事はいつもと変わりない。
3中隊と4中隊の整備をするだけだ。ナハス軍曹も隣にいる。
待機しているだけで暇なので、ナハス軍曹と色々と話をした。バーベキューの後、奥様連中が酔っ払い過ぎて、旦那2人が子供達の面倒を見る羽目になって大変だったとか…
競技会の方は、内容に変更は無い。
連隊規模の大会だ。コロコロとルールを変更出来ないのだろう。各中隊から文句も出るだろうし。
実際、連隊長の提案により3中隊の競技会で実施した、訓練装置を使った方法も検討されたようだが、それはまた後でやる事となったみたいだ。
なんでも、1ヶ月後に個人技術のみを競う競技会を計画するとの事。
開戦の雲行きが怪しい今、連隊長等の首脳陣は、どうやってパイロットの練度を向上させるかに頭を悩ませていると言うのが本音だろう。
今日は「小隊戦の部」である。メインであるはずの小隊戦の部が初日に行われるのは、実際に盛り上がるのは個人戦の部だからなのだ。
競技会の場所は、個人戦で使用したフィールドを全開放する。そこで30分間戦闘し、撃破数、部位破壊数等が多い方が勝ち、と言うのは個人戦と同様だが、集団戦なので作戦と連携が重要になって来る。
3中隊の代表である3小隊がダーイン軍曹では無くテイン中曹を選手にしている事からも、作戦の重要性がわかるだろう。
全員が接近戦タイプだと、作戦の幅が狭まるのだ。
スナイパーのテイン中曹を選手にし、スナイパーが後ろから見た全般の情報を共有し、前線は敵の位置をスナイパーと共有することが重要となる。
小隊戦は、スナイパー用の110mmキャノン砲とスナイパーライフルも装備可能となっているので、スナイパーも活躍するだろう。
競技会の各第1戦目は、4中隊が…いきなり連隊直轄小隊(以下、連直小隊)と対戦し、あえなく撃沈…。3中隊は、連直小隊とは別ブロックのため決勝までは当たらない。
3中隊の最初の相手は6中隊だった。まぁ、危なげなく勝ったな…。テイン中曹の本領発揮だった。スナイプで、部位破壊判定を取りまくってたな。
「しかし…なんか、クロの噂話を凄い聞くようになったなぁ…」とナハス軍曹が言う。
「えっ?やっぱりあの…公開告白が?」
「違うよ!あっ…そっちも有名だな…。いや、整備士のクセにABLMの操縦が凄い上手くて、3中隊の競技会で全部門で優勝したって。」
とナハスが言い終わると、大会を運営する幹部から声を掛けられた。
内容は、今日と明日の競技終了後、1ヶ月後に実施する「連隊 ABLM個人技術競技会」で、どんな事をやるのかを展示したいので、その時にパイロットとして、各競技を実施して欲しいとの事。
「まぁ、確かに1度やってますから、やり方は分かりますが…正規のパイロットに頼んだ方が良いんじゃ無いですか?」と言う俺に意外な返答が…
「君は正規のパイロットだぞ?先週、ドヴェルグ大尉からパイロット申請が提出されたから上級部隊に上申した。昨日、パイロット申請の許可が下りている。君用のパイロット用AIが届いている筈だぞ。」
クーちゃん…何を勝手に…
「何だ?知らなかったのか?君はもう、連隊の予備パイロットとして登録されているからな。しかし、ドヴェルグ大尉は凄いな。開発者特権を使ったら、あっさり許可が下りたもんな…」と言った。
「はぁ…分かりました…。使うABLMとAIが有りませんので、準備をお願いします。」と言うと、運営幹部は
「ABLMは準備しておく。しかし、AIはドヴェルグ大尉に渡した筈だが…君から確認をとってくれ。」と言われた。
「クロ、どう言う事だ?」とナハスが聞く。
「俺にも分かりません…」と答えると、満面の笑みを浮かべながらクーナさんが走って来た!
「お〜い!クロ〜!」と…。到着後
「クロにプレゼントがあるんだっ♡」と微笑んだ。
あっ…多分、パイロット用のAIだな…しかし俺は空気の読める男…しっかり喜んでやろうじゃないか!
「はい、これ!」と黒い四角い物体を手渡した。
やはり…パイロット用AIか…しかし、俺は空気の読める男なのだ!
「えっ!どうしたの、これっ?あっありがとう!」
「クロ…芝居が下手過ぎるぞ…」とナハスが言った…
「なんだぁ…知ってたの?」
「ごめん…クーちゃんの笑顔を見たら言い出せなくて…」
「もう!クロって、優しいんだから〜♡」
「あのぉ…基地内でイチャイチャするの、止めて貰えませんかね?」完全に存在を消し去られたナハスが言った…
「あっ!ごめんなさい。けど、私達は秘密を共有する者、許してね♡しかし、誰から聞いたの?」
「なんか、競技会の運営してる幹部の人が来て…来月の技術競技の展示をしてくれとか言われたんだよね。」
「へぇ…そうなんだ?で、『お前は正規のパイロットになったからやってくれ』って?」
「うん…けどクーナさん、何で俺の事をパイロット申請したの?」不思議だったので聞いてみた。
「ダーイン軍曹の件の様にバレちゃう可能性があるでしょ?だから、パイロットになって自分のAIを持ってるって事実を作れば、今回の様な事にはならないんじゃないか?って考えたの。」
「クーちゃん、頭良い〜!」
「そかな♡」見つめ合う2人…
「だから、基地内でイチャイチャしないで!」
ナハスは既に呆れている…
「自分の中隊の隊員の前ならしないけど、他の中隊の隊員だし、ましてやナハス軍曹だしぃ〜!」とクーナさんは逆ギレしている。
「基地内の規律が乱れとる…しかも、幹部により乱されとる…」と、ナハスがブツブツ言っている。
「ねぇ、3人で観戦しない?ここの人に、ABLMが壊れて整備の所用ができたら、携帯に電話して!って言えば良いでしょ?」
「そうですね、4中隊は負けたから、後は3中隊だけですし。行きましょう!」とナハスが言うと、3人で小隊戦の応援に行った。
移動中にクーナさんに念を押された。
「パイロット用AIは身分証と同様、絶対に無くさない様にしてね。無くしたら処分されるよ!」と
決勝戦は凄かった!予想通り、3中隊vs連直小隊の戦いとなったのだが、とにかく凄い戦いだった。
勝敗を分けたのは、恐らくテイン中曹の射撃だろう。それと格闘戦。
障害物の多い地域で格闘戦になったが、ボルグ中尉を餌にして誘き出し、ラッハ軍曹が2機を撃破したのだ。
結果だけを聞けば3中隊の圧勝だが、内容はそんなに差が無かったように感じた。
3人で格納庫に行き祝福する。
ダーイン軍曹も喜びながら「小隊長、やったな!」と言う。
ボルグ中尉が中隊長に報告する。
「中隊長!競技会、小隊戦の部で優勝しました!」
そのうち、倉庫内は3中隊の隊員でいっぱいになった。
ボルグ中尉が、中隊の隊員に対して大声で言う。
「今日、優勝できたのは、中隊長を核心として中隊みんなのバックアップが有ったからこそだ!これは、中隊全員で勝ち取った優勝と言えるだろう!しかし、忘れてはならない!3中隊の競技会に参加して全部門で優勝、そして、俺達に指導してくれたソハヤ軍曹が居たからこそ、優勝できたとのだと俺は思う。」
「へっ?俺っ?」大した力にはならなかったと思うが…
「ソハヤ軍曹!ありがとう!」と言って、ボルグ中尉が握手をしてきた。
3中隊の隊員に囲まれ、盛大な拍手を俺は受けている。その時、俺は大声で叫んだ。
「第3中隊、優勝おめでとう!」と。
タイトルを「ブレリアの騎士…」にしたけど、なんかシドニアの騎士に響きが似てるから止めました。
『ブレリア「機兵の絆」』にタイトルを戻しました。
「装甲歩兵ブレリア」や「装甲機兵ブレリア」にしようとも思ったけど、なんかボトムズっぽいし…タイトルが定まらないです…




