第037話 「幻 影」
サブタイトル名を変更しました。
朝になった。包丁の音で目が覚める。こんな経験は初めてだ。
パジャマ姿のクーナさんが、朝食を作ってくれている。彼女が振り向き
「あっ!クロ、おはよう!」と言う。
天使や…朝から天使を見た…天使の様な笑顔だ!
酔っていたとは言え、昨日の夜の事は覚えている。ハッキリとな!ムフフフ…
しかし、普段は明るいクーナさんに、あんな一面があるなんて…。
いや…決してアッチの話ではない…
あんな闇?トラウマかな?があるなんて、思っても見なかったな…
「俺、幸せ者だよなぁ。」と言うと…
「クロ…私も幸せなの…幸せ過ぎて怖いの…私に幸せになる資格何てないのに…」
「何でそんな事を言うの?」
「だって!だって、私、何十人、何百人と人を殺してきたのよ!それで英雄だ何だって持て囃されて良い気になってた…自分がした事が怖いの…私が殺した人達にだって、家族がいたのよ…恋人がいた人もいたでしょ…」
彼女の涙が頬を伝った。クロはそれを右手で拭きながら言う
「クーちゃんは、ちゃんとそれに気付いた。凄いと思うよ。自分の過ちに気付き、そして反省する心がある。優しい心が…。幸せになろうよ!その人達の分も…」
「私、クロと決勝戦で戦う前に怖くなったの。クロの事がじゃないよ…自分自身が。クロが強いって分かってたから、もし、私が本気になって、昔の自分が目覚めたらどうしようって…もし、六聖剣のカーテナが目覚めたらって、怖かった…」
「目覚めなかったの?」
「目覚めたわ。けど、クロが打ち消してくれた。粉々に打ちのめしてくれたの。妄想だったんだろうけど、私の中の彼女は消えたわ。ありがとう…クロ…」
「それで本気を出せって言ったの?」
「違うよ。純粋にクロの才能を感じたかったの。自分の身体で、六聖剣をも上回るクロの才能を感じたかったの。」
彼女の中の幻影は、本当に消えたのだろうか?まだ心に深い傷があるような気がする。俺がそれらを打ち消してやれるように頑張ろうと思う。
また幻影が出て来たとしても、俺は…いや、俺達は打ち勝つことができるはずだ。今はただ願う…2人で幻影を乗り越えて幸せになれる様に。と…
その事を思い出し、俺は料理中のクーナさんを後ろから抱きしめた。
「もぉ〜。火を使ってるから危ないよ。食べるの遅くなっちゃうから!」なんて怒った口調だったが、顔を見ると微笑んでいた。
クーナさんの手料理…食べるのは2回目だ!メッチャ美味い!愛情も込もってるし!
「ガイアがクーナさんを助けたおかげで、俺は今、幸せを感じることができてるのだ。ありがとう!」
と、ガイアに感謝する!「そだねー!」とクーナさんが微笑む。何気ない会話に幸せを感じる。
「しかし、何でガイアは暴走しなかったんだろうね。プログラムは同じなんでしょ?」
「基本設計は同じよ。ただ、開発者によって少し特色を加えたりはするかな?」
『私の仮説を話しても宜しいでしょうか?』
と、ガイアが言う。ガイアが自ら主張するのは珍しい。そして続けた。
『開発者全員が、兵器となる戦士をAIに求めて開発していました。つまり、戦士の替わりになるAIが開発コンセプトです。しかし、クーナ様は違いました。』
「へぇ、どう違うの?」と言う俺に答える。
『はい。クーナ様は、戦士ではなく友達を開発していたのです。私に戦闘を求めるプログラミングはされていません。友達としてマスターの側に居て、マスターに協力すると言うのがコンセプトだと考えます。』
「ABLMの無人機を作るのに、そんな事を考えてたんだ…」
「だって…ガイアを作れって言われた時は、まだ18歳くらいだったのよ?同級生は青春してるのに、私は研究所に篭ってる…友達を作りたいって思うわよ。」
「その友達作りの方向は間違っている様な…本当に造るとは…」
「けど、当時はそんな事を考えてたんだね。忘れてたよ。」と言うクーナさん。ガイアが続ける。
『ABLM暴走の時も、自分の存在を賭けても、人間の言う「命に代えても」マスターであり友達であるクーナ様を守る事しか思考していませんでした。』
「しかし、凄い偶然だね!またこうして会えるんだもんな!」と言う俺に対して意外な答えが…
『いえ。偶然ではありません。』
「へっ?偶然じゃないって…どう言う事?」と驚く2人…
『私が軍のコンピューターをハッキングし、クーナ様がキャンプ アルメンに転属して来る様に細工しました。』
(怖い…この子怖い…けど、ガイアがキューピットだよな…)
『因みに、クロ様とクーナ様が交際するのは想定外でした。』
「ガイアにしてみたら嬉しい誤算だよな。こうしてクーナさんに会える様になったんだから。」
『はい。』
ガイア…淡白な返事だぞ…
ガイアに救われたクーナさんの命。これからは、俺が守っていく。そう心に誓った。
こんなに人を好きになったのは初めてだ。クーナさんを大切にしていきたい。
ご飯を食べたら、今日は少し遠くまでドライブに行く予定だ!
俺は本当に幸せ者だと思う。この幸せが永遠に続いて欲しい。
人間、全て正しい事をしてきた人はいない。今までの後悔もあるだろう。これから困難な状況に遭遇するかもしれない。しかし、乗り越えて行きたい。俺は信じている。2人で手を取り合って乗り越え行けると。
夜のアッチの話は詳しく書きません…
官能小説になっちゃうんでジャンルが違うかと…
期待した方、すみません…
ギャグっぽくして終わらせてます。




