第033話 「不信感」
続いて書こうと思いましたが…
3000字を超えてたのでここで切ります。
2日間の競技会も終わり、第3中隊は来週の7月30日〜31日にかけて行われる「連隊 ABLM競技会」上位入賞に向けて動いている。
昨日の夜、クーナさんとメールをやり取りしたが、選手選考はだいぶ固まっているとの事であった。
まだ、小隊戦に力を入れるか、個人戦をメインにするかで悩んでいる様だった。
選手は、第3小隊の4名+クーナさんで決まりだろう。問題は小隊戦の選手を、この中の誰にするかだな…
そう!クーナさんとメールをしたのだ!なんて言ったって、俺の彼女だからな〜!夢みたいだ。
クーナさんも「私は良いけど…6歳も年上なのよ?クロは良いの?」って気にしていたけど、俺が好だから良いのだ。
人生、楽しくなってきた!今日も爽やかな朝だ!
中隊事務室に行くと、事務室が大騒ぎしていた。昨日の俺の公開告白が話題になっているのだ。
「やったな!ソハヤ軍曹!」
「あんな美人と付き合えるなんて羨ましいぜ!」
「あの場で告白って…スゲェ度胸あるなぁ!」
って、競技会で全部門優勝した事なんて、全く話題になっていない…
口々に言う事は「公開告白」の事だけだ…そうだよ!彼女が出来たんだよ!羨ましいだろ?
うちの中隊の人達も、昨日の閉会式を見ていた人が多かったからな…
あれ…見られてたんだよな。今更ながら恥ずかしい思いがこみ上げできた…
しかし、俺らしからぬ大胆な行動だったな…
整備班のみんなにも祝福された。整備班長のレート曹長を筆頭に、みんな喜んでくれていた。
女性と付き合う事になったからって、こんなに祝福される人もいないよね?俺は本当に幸せ者だと思う。
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昼休み、ダーインは整備工場に来ていた。
午前中に、自分のABLMを整備していた。そこで、自分のAIの戦闘記録を確認していた時だ。
「あれ?クロの戦闘記録が無いぞ…」
クロノスに自分のABLMとAIを貸したので、クロノスの戦闘記録が残っていると思っていた。
それを見て参考にしようと思っていたのだが、ダーインのAIにクロノスの戦闘記録が残っていなかったのである。
「どういう事だ?あいつ…誰のAIを使ったんだ?」
誰かからAIを借りれる訳も無い。整備用の擬似AIでは、移動はできても戦闘行動が出来るほどの性能は無い筈なのだ。
あの場で戦闘記録を消す事など出来ないだろう。PCに繋げなければ消す事はできないからだ。また、そこまでの労力を使ってやる意味も無い。
AIはガイアを使ったため、クロノスの戦闘記録が無いのは当たり前の事であるが、ダーインがその事を知っているはずもない。
「なんかあるな…取り敢えず、調べてみるか…」
そう思い、整備工場まで来たのだ。ナハス・エデン軍曹に会いに。
「ナハス、ちょっと良いか?」とナハスを呼ぶ。
「あれ?スライブさん…じゃなくてダーイン軍曹、どうしたんです?」
「内緒で確認して欲しい事があるんだ。クロの事なんだが…」
「えっ?中隊長のために身辺調査か?義兄がそんな事をねぇ…」
実は…公にはしていないが、ナハスの妻はスライブ・ダーインの妹なのである。これは、大隊でも知る者は少ない。
「そんなんじゃねぇよ!いやぁ、不可解な事があってね…」
「クロに不可解な事?あるんですか?そんなの…」
「ああ。実はな…」とクロノスに貸した自分のAIに、戦闘記録が残ってない事を説明した。
「確かに…それは変だよな…他から借りた形跡は無いんですか?」
「無いな…借りれる状況でも無かったしな。」
「分かった…確かめてみる。けど、あまり期待しないで下さいね。」
「ああ、頼んだぞ!」そう言って帰って行った。
「クロは誰のAIを使ったんだ?ABLMは確かに義兄のを使っていた…確認するか。」
「クロ、今、時間あるか?」ナハスがクロノスを呼ぶ。
「はーい!なんですか?」
「何だ?やけに明るいな。やっぱり嬉しいのか?彼女が出来たのが!」
「えっ?そうですかね?けど、嬉しいですよ!」
(こいつ…相当浮かれてんな…)そう思いながら質問する。
「クロは準決勝、決勝って、違うABLMを使っていたみたいだけど、誰から借りたんだ?」
「3小隊のダーイン軍曹です。助かりました!」
「そうか、ダーイン軍曹からか。AIもそのまま借りて使ったのか?」
「はい。そうですが…何かしましたか?」すると
『ワン!ワンワン!』とガイアが騒いでいた。
「どうした、ガイア?」と言ってガイアの方に向かった。しかし、ガイアが逃げるのだ…
「何だよ?待てよ!」
ガイアが無意味にこんな事をすることはないはずだ。何だろう…と思っていると、誰もいない工場の裏で止まった。
『マスター、私の存在が暴露る可能性があります。』
「えっ?どういう事だ?何故?」
『マスターは昨日の競技会で私を使用しました。クーナ様のABLMなら問題無いでしょう。しかし、ダーイン軍曹のABLMにも使用しました。』
「そうか!ダーイン軍曹のAIも借りて使った事になってたけど、そのAIには戦闘記録は残らない…不味いな…」
『その通りです。なので、ダーイン軍曹のAIを使用したと言ってしまうのは都合が悪いのです。』
取り敢えず、ダーイン軍曹と会って戦闘記録を確認したかを聞かなきゃならないな…しかし、今やってる仕事を終わらせなきゃいかん…
俺は浮かれた気分など吹っ飛んでしまった。どうしよう…
仕事に戻り、急いで整備を終わらせ、ダーイン軍曹に確認しに行こうと思っていたが、整備が終わるのを見計らったようにナハス軍曹に呼び出された。
「クロ、お前に聞きたい事がある。」
ナハス軍曹は真面目な顔で質問した。
「はい。何でしょうか?」(不味い…ガイアの事を感づかれたのか?しかし、ダーイン軍曹から確認しないと分からない事だよな?)
「お前、ダーイン軍曹のABLMを使った時、誰のAIを使って戦ったんだ?」
(ヤバイ!ヤバイやばい!どうしよう…)
「いやぁ…もちろん…ダーイン軍曹のです。」
「ダーイン軍曹のAIには戦闘記録は残って無いと言う…使ったとしたら、あの短時間でどうやって消したんだ?」
「それは…その…」と言いかけたその時、俺の携帯電話が鳴った。ナハス軍曹が出て良いと言うので、俺は電話に出た。クーナさんからだ。
「もしもし、クロ?今、こっちに来れるかな?」
「えっ?どうしたの?今?」
「うん。大変な事?かな?になってさぁ。私では対応できないのよ。ダーイン軍曹に質問されてね…」
「ガイアの件ですね…分かりました。ナハス軍曹も連れて行って良いですか?関係ありそうですので。」
「あっ!そうなの?分かった。どうしましょうかねぇ…まぁ、待ってるよ。」
電話を切った後、ナハス軍曹に質問された。
「誰からだ?俺が関係あるって…俺をどこに連れていくんだよ?」
「3中隊長室です。ダーイン軍曹もいるみたいです。ナハス軍曹、今日、ダーイン軍曹と何か話ました?」
「歩きながら話そうか…」ナハス軍曹はそう言うと、レート整備班長に2人で長い休憩をする事を伝え、3中隊長室へ向かった。




