第029話 「策 略(クルタナvsボルグ中尉)」
やはり、ラッハ軍曹vsグラム少尉を端折ってしまいました…早く決勝戦を書きたいので…
すみません…
あっ!第029話、執筆終了しました!
ダーイン軍曹との試合が終わり、ABLMから降りた。地面に立ったその時、疲れがドッと出てしまった。
「なんだかんだ言って、気を張ってたんだな…」
そう思い、自動販売機にスポーツドリンクを買いに行った。
思えば、ABLMをこんなに長い時間操縦した事はない。ましてや戦闘行動など初めてである。整備の時も小移動しかしないからな…作動テストの時だって、長くて10分程度だ。
しかし3小隊の2人に勝つ事ができた…よく勝てたな。と思っていると、放送が鳴った。
「本部管理中隊のソハヤ軍曹、至急、出場準備のためABLM格納庫まで来て下さい。」
そんな事を言われても、俺が使ってたABLMは、クーナさんが今から使うんだけど…
呼ばれたからには行くしかない。と思い格納庫に向かった。
到着すると、ダーイン軍曹が待っていた。
「次に乗る機体が無いだろ?俺のを使えよ。まぁ、お前にやられた右脚がまだ壊れてるかも知れないがな!」と言って笑っている。
「ありがとうございます。でも…」
「決勝戦まで行く気なら、今から慣れておいた方が良いぜ?まぁ、ラッハ戦で慣らしってのも厳しいけど、ラッハが負けたらチャンスだぜ?」
「ラッハ軍曹が負ける可能性ありますか?次の試合、3中隊長のABLMを使いたかったんですが…」
次の試合は厳しいものになる。それならクーナさんのABLMを使った方が良いとは思っていたんだが…
「ラッハが負ける可能性は…無いだろ(笑)機体だけじゃなく、AIも俺のを使うしか無いな。もう、中隊長のAIは使えないだろう?」
ガイアが有るから要らないとは言えないなぁ…
「お借りしても良いですか?今から少し慣れておきたいです。」
「あぁ!使ってくれ。ちょっと癖があるかも知れんがな。」
「ここまで来れたのが奇跡の様なものですし。当たって砕けろ!ですよね。」
「おいおい、俺に勝った奴がそんな事言うなよ。ラッハにも勝ってくれよ!中隊長とお前の試合が見たいんだよ。」
「決勝に行ける様に頑張ります。」
準備をしているうちに、第10試合が終わってしまったようだ。
試合結果を聞いたら、やはりラッハ軍曹が勝ったとの事。俺の次の相手は、ラッハ軍曹になった。
また3小隊の人か…これに勝って決勝戦がボルグ中尉だったら、3小隊全員と戦う事になるぞ!
ベスト4は
◯クルタナ・ドヴェルグ大尉 (3中隊長)
◯ガラド・ボルグ中尉 (3小隊長)
◯クロノス・ソハヤ軍曹 (ゲスト)
◯フラガ・ラッハ軍曹 (3小隊)
となった。
ラッハ軍曹の試合を見てないから、どんな戦い方をするのか分からんな…
しかし、次の試合は3中隊長が勝つんだろうな。ボルグ中尉も、クーナさん相手に3分もたないって言ってたしな…
ダーイン軍曹のABLMのコックピットに乗り、ガイアをセットする。
「ガイア、機体性能を確認してくれ。感覚をクーナさんのABLMと同じ様にしたいんだ。」
『了解しました。確認します。』
「リミッターの確認もしたい。両腕は限界まで上げてくれ。それと……」
ガイアとの調整も一通り終わった。
ギャラリーの声援が聞こえる。いつの間にか始まっていた、クーナさんとボルグ中尉の勝負も盛り上がっている様だ。
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ボルグ中尉は試合前、中隊長の所に、勝負に関する提案をしに向かった。クロノスとダーインの試合に触発され、近距離戦を申し込みに来たのだ。
「中隊長…俺との試合は近距離戦をやりませんか?」
「えっ?格闘だけ?まぁ、良いわよ。」
「無反動砲も使って良いです。」
「了解!右手にサーベル、左手は無反動ね?シールドはどうする?」
「シールドは好きなのを使ってもらって構いません。それでは宜しくお願いします。失礼します。」
そう言って中隊長の前を立ち去ると
「中隊長の武器の制限をしたとしても勝てる見込みは無い。格闘戦だけにしたかったが、それも本来のABLMの戦い方では無い気がする…」
そう悩みながら、84mm無反動砲も使用できると言う事に決めたのだ。
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3中隊長はコックピットで笑みを浮かべていた。
「さてと…ボルグ中尉はどうやって攻めてくるんだろうなぁ…」
クルタナは、アサルトライフルを使用出来なくなった事に対し、逆にワクワクしていたのだ。
「私は中距離の射撃戦が得意だからなぁ…近距離戦ならボルグ中尉も上手いからね。」
そう、ボルグ中尉の成長を目の当たりにし、戦って力量を見定める事ができるなんて、中隊の指揮官として嬉しい事だと感じていたのである。
クルタナが中隊で1番だと思っていたのはラッハ軍曹で、次がボルグとダーインが同じくらい?いや、ダーインが少し上かな?と思っていた。
しかし、昨日の競技を見て、ボルグ中尉がこれ程成長しているとは思っていなかったのだ。
「あと少しで始まる〜!楽しみ、楽しみ。」
そう言って、試合開始を待っていた。
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…クルタナとボルグ中尉の試合が始まり3分が経過していた。
お互い、決め手が無いまま膠着状態となった。レーダーに映る範囲の近距離戦とは言え、剣を交える機会は殆ど無かった。
84mm無反動砲を警戒して、お互いに格闘戦に持って行けずにいたからだ。
3発ずつ使っているので、残りは互いに2発である。
「ボルグ中尉、だいぶ腕を上げたなぁ!さてと…どう攻めようかな?」
クルタナは、相手の無反動砲の弾が切れた時が勝負所だと思っていた。しかし、ボルグもなかなか撃って来ないために膠着しているのだ。
このままでは時間だけが過ぎていく。勝負に出ようか迷っていた。
しかし、ボルグ中尉も迷っていた。やはり、お互いに84mm無反動砲を警戒し過ぎてなかなか近づけない展開になったな、と思い後悔していた。
「格闘戦だけにすれば良かったか?まぁ、始まってしまったから今更だが…」と呟くと、思いついた事を実行する決意を固めた。
「中隊長に通用するかは分からんが、仕掛けてみるか!」
と言って、クルタナに背を向けた。
クルタナのレーダーに、ボルグ中尉の逃げる様子が映し出された。
「真っ直ぐ離れていく?何故?」
クルタナがメインカメラで確認すると、ボルグ中尉が、こちらに背を向けて移動している。
「この場面で?あり得ないなぁ。罠かな?」
と疑ったが、どう仕掛けようか迷っていたので
「罠にかかってみるか!」と言ってボルグ中尉をダッシュで追って行った。
ボルグ中尉は賭けに出たのだ。
罠だと分かっていても、中隊長なら追って来るだろうと思っていた。
「やっぱり追ってきてくれたか。しかし、中隊長に通用するか?」と言って、真っ直ぐ走る。
クルタナが、後ろから84mm無反動砲で狙いながら来ている事は分かっている。
警報が鳴り、AIが『後方、ロックオンされました。』と告げて来る。問題は、発射のタイミングだ。そこを読み間違えれば負けは確実となる。
「今だっ!」ボルグは気合いを入れて呟き、左側にあった壁を蹴った。転がりながら上半身を捻り、180°回って無反動砲をクルタナに向ける。
その瞬間、クルタナの無反動砲の弾が、ボルグの横を掠めた。
「もらったぁぁぁ!」と叫び、ボルグは無反動砲を発射した。
無反動砲の弾がクルタナの右脚に命中した。
転ぶクルタナ。
ボルグが「よしっ!」と言って立ち上がろうとした時、予想に反して、伏せ撃ち姿勢のボルグに転がりながらクルタナが近づいて来ていたのだ。
右脚の破壊判定を受けたクルタナは苦笑いした。
「あちゃ〜。やっぱり罠だったか〜!」
と言いながら、転びそうになったABLMを前転させた。
「このまま接近しちゃお〜っと!」と言って前転を繰り返す。
「そりゃ!」
ボルグに近づくと、回転の勢いをそのままに、剣を縦に振った!
「秘技、前転斬り…なんちゃって♡!」
撃破判定が出た。クルタナの勝利である。
「しかし、危なかったなぁ…ボルグ中尉、だいぶ腕を上げたな。」と言ってクルタナは笑った。
ボルグにAIが告げる。
「撃破判定を受けました。敗北です。」
あの中隊長に初めて勝てるかも?との希望が見えたボルグ中尉であったが、まさかこんな体勢から斬られるとは思っていなかった…
「あの体勢から…マジかよ…」言葉にならない言葉が出る。
「中隊長には、まだ敵わないか…」そう呟いたが、次の瞬間、大声で笑った。
「ワッハッハ〜!楽しかったぞ!」
そう言って胸を張って競技場を後にした。




