第021話 「第3小隊」
少し短いけど、切れの良い所で話を切りました。
第21話の執筆は終わりです。
午後の競技開始前、パイロット達の雰囲気は殺伐としていた。
本職ではない整備兵に、格闘訓練装置の部の1位を取られたからだろう。
午後、格闘訓練装置の部に参加する者は、昼食を早々と済ませてABLMに乗り込んでイメージトレーニングを繰り返している者もいる。
(そんなに気負わなくても…3中隊長もお祭りだって言ってたでしょ?)
と思いながら、準備の為に自分のABLMに行く。隣にはボルグ中尉のABLMがあり、そこに3小隊のメンバー全員が揃っていた。
「よぉ!俺はフラガ・ラッハ軍曹だ。午後はお前の記録を抜いてやるぜ!宜しくな!」と言って握手をしてきた。
「あっ!2Gpで1位の人ですね。宜しくお願いします!」
「俺はレーヴァ・テイン中曹だ。宜しく!」
「宜しくお願いします。しかし、3小隊は上位ばかりですね!」
すると、ラッハ軍曹が答える。
「そりゃそうだ。連隊のABLM乗り全員が憧れてる小隊だからな。」
「えっ?そうなんですか?」
「そうだよ。連隊直轄もこの小隊出身者が多いし、みんながこの小隊に入りたがっているのさ!何でか分かるか?」
「いえ…」
「エンブレムがカッコいいからさ!第3機兵連隊 第3中隊 第3小隊。ナンバーが『333』なんだよ。」
「そうか!それはカッコいいですね!」
「だろ?ABLM乗りは、最初はこの小隊に入ることを目指すんだ。だから、必然的に腕の良いのが集まる。連隊直轄小隊よりも人気あるんだぜ?」
「なるほど…」
ボルグ中尉が付け加えて言う。
「歴代中隊長もそれを意識して、凄腕を3小隊に集めるんだ。もう伝統なんだよ。」
テイン中曹が
「それが整備兵に負けたとあってはね。面白くない訳だ。」と言ったが、ボルグ中尉は
「俺は面白いけどな!」と言って豪快に笑った。
ラッハ軍曹が「まぁ、お互い頑張ろうぜ!じゃあな!」と言って午後の準備に向かった。
午後の競技の開始となる。
小隊訓練装置の部、1番目はボルグ中尉だ。
流石はボルグ中尉、経験からなのか、次々に回避していく。
10分が経過した頃、「危ない!」と思ったら、左腕に装着された小型の盾で弾いてしのいだ!
しかし、13分24秒で左足にペイント弾が直撃し、動けなくなった所に集中砲火を喰らい終了した。記録的には13分26秒であった。
次は俺の筈だったのだが、3中隊長に言われて1番最後になったため、ダーイン軍曹の番だ。
やはりダーイン軍曹も上手い!
この人は、動きがスムーズで流れるように避けていく。
「ABLMに負担を掛けない動きだな。長期戦タイプかな?」
と独り言を言ったつもりだったが、いつの間にか競技が終わりABLMから降りて来たボルグ中尉が隣にいた。
「俺達3小隊は、長期戦ができる様に訓練しているからな。」とボルグ中尉が言った。
ダーイン軍曹の記録は12分15秒だった。暫定3位である。
順調に競技が進む。
いよいよ俺の番になった。
格闘訓練装置の部は順位に変動は無い。
2Gpも競技が終わり、格闘訓練装置の部は俺の優勝が決まった。あとはこっちだな。
2Gpの競技が終わった為、選手もギャラリーもこちらの会場に来て、かなりの人数が集まっている。
俺の競技が始まる前、隊員が慌ただしく装置の周りで動いている。
マイクを集音にして会話を聞いてみると「良いんですかね?本当に…」とか言っている。
何をしているんだろう?と思っているうちに準備が終わり、競技開始となった。
始まってすぐに分かった。
「難易度を上げやがったな。やってくれる…」
他の人が競技をしているのを見て、俺が昨日やった時より難易度が下がっている様に感じた。
けど今は先ほどまでより、いや、昨日よりも難しい。
今までより明らかに撃ってくる弾数が多いし、ターゲットが出てから射撃をするタイミングが速い。
「これ…避け切れるか?無理か?」
と呟き、俺は剣を構えた。




