第104話 「昇 任」
MUC212.7.31
今日は金曜日だが、仕事は休みとなったので昨日の夜から外出し、クーナさんの家に泊まった。
「さぁ!クロ、出発するよー!」と朝早くからクーナさんが張り切る。
どこに行くのかと言うと…リジル中尉のお見舞いに行くのだ。
車に乗ってリジル中尉が入院した病院に向かう。途中でお見舞い品を買っていくついでにマジックも買った。
そう!ギプスに落書きをするのだ!たくさん落書きをしてやるぞ〜!
と意気込んで病院に到着、看護師さんにリジル中尉の病室を聞いて病室へ着くと…レイア軍曹が既にいた。
「レイちゃん、もう来てるの?早いね〜!」と俺が言うとリジル中尉が「昨日も来てくれて…責任を感じる必要は無いって言ってるんだが…」と申し訳なさそうに言った。
その後、クーナさんがある事に気付いた。
「あれ?ギプスしてない!」
「そうなんですよ。金属を脛に入れて固定してるそうです。何でも、こっちの方が筋肉が衰えにくいらしくて…」
「はぁ?リジル中尉、何でですか!落書きするためにマジックまで買ってきたんですよ!」
「そんなの知るか!クロが勝手に思ってただけだろうが!」
「いや…大切な事よ。リジル中尉、今からギプスしてきて!」
「中隊長…そんな無茶な…」
「まぁ、それは冗談として、筋肉が落ちないなら復帰も普通より早そうね。」
「そうですね。ただ、復帰した後にプレートを外す手術を受けるらしいです。半年後くらいに。」
「へぇ…大変だね…」って、クーナさんには人ごとであった…
「中隊長、申し訳ありません。パイロットが少ないのに私が不在となってしまって…」
「大丈夫よ。レイちゃんをパイロットにするし、小隊長代行はクロにやってもらうから。」
「へっ?クロですか?ダーインじゃなく?」とリジル中尉が驚く。
「ええ。クロ、明日付けで准尉になるのよ。だからダーイン中曹じゃなくてクロが小隊長代行をやるのよ。レイちゃんのパイロット申請の手続きは済ませたしね。」
「そうか!クロ、士官候補生試験に合格してたもんな!」
「はい。帰ってきても、リジル中尉の居場所が無いかもしれませんよ?」
「おいクロ…本当にそうなりそうだから止めてくれよ…」
「レイちゃん、来週末にはパイロット申請が通ると思うから、その時にライセンス証とパイロットAIを渡すからね!」とクーナさんが伝えた。
「えぇ〜!やったぁ!ありがとうございます!」とレイアがめちゃくちゃ喜んでいた。
「それじゃ、リジル中尉は早く復帰できるように安静にして療養してね!こんなに休める日もないだろうから、せっかくだからゆっくりして。」
「はい、不在間は負担をかけますが、宜しくお願いします。」とリジルが言った後に、クロノス達は挨拶をして病院を後にした。
「はぁ…あの2人、素敵なカップルですよね…」とレイア軍曹が溜息をつく。
「どんな所が?」
とリジル中尉が聞くとレイア軍曹は
「だって、2人とも本音で話してるみたいだし、お互い遠慮はしていないような感じがするのに、お互いを尊重しあってる…絶妙なバランスですよね…」
「そうだよな…階級や年齢に捉われずに、お互いに思いやりを持って接していると言うか…自分をさらけ出してるのに、お互いにそれを受け入れてると言うか…」
「私達もあんな感じになりたいなぁ…」
「私達?」リジル中尉が驚く。
「あっ…」とレイアが口を手で隠し、顔を赤くして下を向いた…
病室が、そんな良い雰囲気になっているとも知らずに、クロノスとクルタナは車に乗り込んでいた。
「お見舞いの後の予定を立ててなかったね。クロ、どこか行きたい所ある?」
「うぅ〜ん…バイク屋さんに行きたいんだよね。バイクを買おうかと思ってさぁ…」
「えっ?良いね!私も後ろに乗りた〜い!行こう!行こう!」
「良いの?クーちゃん、飽きると思うよ…」
「大丈夫!いつもクロに買い物を付き合ってもらってるから。バイクも見たいし!」
そんな会話をしながら、2人は休日を楽しんでいた。
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MUC212.8.3
月曜日になった。3連休は本当に楽しかった!
バイクも勢いで契約してきてしまった…中古だったが、すぐに乗りたかったし、年式も新しい方だったし。
なんか、クーナさんはレーサーレプリカみたいなバイクが好きだったようだが、俺はカウルの付いていないネイキットにした。
アメリカンタイプも考えたが、楽しく峠道を走るならこちらが最適だろうと思ったし、何よりもパワーがある方が好きなのだ!
納車は1週間後…次の日曜日には納車されるので楽しみだ!
しかし、話は変わるけど…今日は准尉の階級章を付けている。当たり前か…8月1日に昇任したからね…
こんな若造が…良いのか?と思いながら事務室に入る。
「おぉ!クロノス!いや…これからはソハヤ准尉と呼ばんとな!」と先任曹長のブラン曹長に言われたが…
「おぉ!小隊長!准尉の階級章、なかなか似合うじゃないか!」とダーインさんは茶化すし…
まぁ、徐々に慣れるか…
と思っていたら、クーナさんが慌てた様子で事務室に入る。
「先任!今から隊長室に行ってくるから!私が朝礼に間に合わなければ、ホーク中尉に頼んでね!」と言ってダッシュして行った。廊下は走ったら危ないよ!
しかし、朝から隊長がクーナさんを呼ぶとは…何だろうなぁ…
また戦場に行くのかな?嫌だなぁ…




