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アデル★リボン ~万能でサイコパスの魔法少女が、人々の心を救済していく感動物語~  作者: タキ・エーイチ
第7章 凄惨な悪戯好きの妖精達が、相応のお仕置きを受けるまでのお話
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第3話 妖精同士の対立

 妖精達は、森に入ってくる人間達に対して、かねてから不満を募らせていた。


 “妖精の森”の自然は、妖精の力によって育まれてきたものだった。人間達が重宝している妖精草の薬草も、妖精の存在あってこそ育つものであった。森の物は妖精の物、そんなふうに妖精達は考えていた。


 しかし、人間達は、妖精の森に立ち入り、その植物を採取し続けてきた。人間のそのような行為について、妖精から抗議もあったが、人間達は森に立ち入ることを止めなかった。


 痺れを切らした妖精が、武力を以って人間を止めようとした事もあった。そのような妖精対人間の抗争があった。しかし、妖精の力などたかが知れている。彼女達の力では、人間に到底敵う事は出来なかった。せいぜい、人間を驚かすくらいか、道に迷わせる程度しか、彼女達には力が無かった。


 妖精と人間のちょっとした抗争の果て、人間側が森での採取量を適度なものにすることを約束して、抗争は落着いたのだった。そのように抗争が落着いたのは、人間側に穏便的な人がいたおかげだった。そして、妖精とそのような約束を交わした後、実際に人間達は取り決めに従い、森の植物を無暗やたらに採取することを制するようになった。


 そのように抗争は決着したわけであるが、妖精達としては決して満足していなかった。森の物は妖精の物、そのような考えを持ち続けていた。


 今までは、力が無く、仕様がなく人間の狼藉を許していた。しかし、今はもう違う。彼女達は、人間達に立ち向かうだけの力を手に入れた。


「今こそ人間達に目に物みせる時よ! 森の物は妖精の物。人間達に、私達妖精の森を荒らさせないわ!」


 白い羽の妖精ピエリスは、そのように人間への復讐を扇動した。彼女の人間への憎悪は人一倍強く、そして、そんな彼女は、他の妖精と比べても強力な力を得ていた。


 そんなピエリスを中心に、妖精達は、手に入れた膨大な魔力を使い、森の植物を怪物化させて操り、森に入って来た人間を殺し、撃退していった。長年募らせていた不満を爆発させた彼女達による復讐は、凄惨なものになった。人間達に容赦なく襲い掛かり、その断末魔を愉しんだ。



 一方、少数派であるものの、そのような人間に対する復讐に異を唱える妖精もいた。その筆頭が、赤い羽の妖精ルビアであった。彼女は、人間に対して友好的で、かつての人間との抗争の果てに落ち着いた妥協点についても、物分かり良く理解を示していた。


 ルビアは、森に立ち入った人間を、人間に対して敵意を持っている妖精に見つからないように森の中を案内した。そして、森に出現した魔物の正体が実は妖精によって怪物化した植物である、という事実は伝えなかったものの、現在森が非常に危険な状況にあり、近づいてはならない事を伝えた。


「このままではきっと、私達妖精は人間達から酷い仕返しを受けることになる。人間とまた争う事になる。もう、人間を襲う事はやめよう。今ならまだ、間に合うかもしれない」


 妖精と人間の友好を望むルビアは、他の妖精達にしきりにそう訴えていた。しかし、そんなルビアの訴えに、多くの妖精は聞く耳を持たなかった。


「人間とやりあうなら望むところよ、この裏切り者。仕返しは、私達妖精がすることよ」


 ピエリスは、ルビアの事を“裏切り者”と罵った。他の妖精も、ルビアに同調した。強大な力を得た今の自分達が、人間などに恐れる必要は微塵もないと嘯いていた。


 さて、黒い羽の妖精スワロウはというと、人間に対する態度について、どっち付かずの状態だった。


 スワロウとしては、特段人間に対して強い恨みがある訳ではなかったし、人間に友好的なルビアとは親友であった。したがって、スワロウとしては、人間を襲うことについて、正直乗り気ではなかった。


 それでもスワロウは、ピエリス達による誘いを断れなかった。人間達を襲うという誘いだ。誘いというより、それは脅しだった。ピエリスからの誘いを断れば、彼女は怒って酷い仕打ちをしてくることは、明白だった。気弱でいじめられっ子のスワロウは、ピエリスに従うほかなかった。


 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆


 その後も、ピエリス達は、森に立ち入る人間を殺していった。ルビアに注意を受けていたスワロウも、結局、ピエリス達の殺戮に付き合い続けた。


 親友であり、いつも自分を庇ってくれるルビアを裏切って、スワロウはピエリスに従い続けたのだ。ルビアに申し訳ないと思いつつも、スワロウにはピエリスに逆らう勇気はなかった。


 スワロウは、ピエリス達に命令されるがまま、蔦を操って逃げる人間を拘束した。泣き叫び、怪物の花に食される人間を、愉快に笑うピエリス達と並んで眺めた。妖精達の凄惨な悪戯を、一緒になって行っていた。


 スワロウには、他の妖精と違って、そんな悪戯に罪悪感を抱いていた。けれど、ルビアと違って、積極的に異を唱える事はしなかった。スワロウはやはり、ピエリスが怖かった。


__そして、その日も、スワロウは、ピエリスに誘われるがまま、悪戯に参加した。


 その日の悪戯は、いつもよりほんの少し違っていた。悪戯を仕掛ける相手は、一人、二人ではない。相手は、合計10人は超える、傭兵団の人間達であった。


 妖精の森の異変に、人間達が遂に動き始めたのだった。


 しかし、ピエリス達の行う事に変わりはない。十分な武装をして来た傭兵達に対して、怪物化させた植物を仕向ける。


 妖精達の怪物の花は、傭兵達に通用した。彼らの鍛えられた手足を蔦により拘束し、体の自由を奪う。怪物の花の牙のような棘は重厚な鎧の守りをもろともせず貫いた。傭兵の中には魔法使いもいたが問題はない。同じように蔦を操り、魔法が使えないように杖を奪い、指先の動きを封じ、口を閉じさせ、後は怪物の花の餌食にするだけだ。


 屈強な人間の戦士達が無残に敗れる様に、ピエリスは笑いが止まらなかった。傭兵達の断末魔に堪らない歓喜を覚えた。妖精の力が、人間の武力を上回ったことを実感した。


 妖精の森に踏み入った憐れな傭兵団は、悉く怪物の花々に貪り食われ、生き残った傭兵も残すところ一人となった。その生き残った傭兵は、呼吸を乱し顔面蒼白で、森の出口へと走っていた。


 ピエリス達は、生き残った傭兵を、あえて襲わずに、意地悪な笑みを浮かべながら追いかけた。人間が必死に自分達から逃げようとする姿が、面白可笑しかった。そして、そんな傭兵の姿を堪能し、彼が森の出口の手前に来たところで、彼女達は、他の傭兵にしたのと同様に、彼を蔦で縛り上げた。


 傭兵の男は、うつ伏せの姿勢で、手足と胴体が地面から突如生えた頑丈な蔦でぐるぐる巻きにされて、逃げられない状態になった。ピエリス達妖精が、彼の上から、にやにやしながらその姿を眺める。その妖精達の中には、スワロウもいた。


「良い恰好じゃないの、人間。どう? 怖い? 怖いかしら! あなたもさっきの仲間みたいに、私達のお花に体を齧り取られながら死ぬのよ! 低俗な種族に相応しい無様な末路だわ!」


 ピエリスは、喜悦に声を高くして、傭兵の男に言い放った。


 傭兵の男は、必死に命乞いする。その命乞いが、ピエリスを余計に喜ばせる。彼女は、いつも以上に高笑いしながら、怪物の花々を呼び出す。そして、怪物の花々が、傭兵の男に嚙り付いた。__スワロウは、何もすることが出来ず、怯えるようにただその光景をじっと見ていた。


 怪物の花に齧り付かれた傭兵の男は、痛みと恐怖に絶叫し、気絶してしまった。彼は白目を剥き、涎を垂らし、地面でぐったりとなる。


「何こいつ、気絶しやがったわ。根性なしね。もっと悲鳴を聞かせて欲しいのに」


 ピエリスは、つまらなさそうに舌打ちした。そして、怪物の花々に、一旦齧ることを止めるよう、命令した。


「せっかくだから、こいつを森の奥に連れて行ってもっとじっくり悪戯してあげようかしら? ねえ、皆はどうしたいかしら?」


 ピエリスが、仲間の妖精達に振り向き、この傭兵の男の処分を尋ねた。


 その時、森の奥から、赤い羽の煌めきがこちらへ近づいてきた。


「お前達、何をしているんだ!」


 ルビアの声だった。


 赤い羽の妖精ルビアが、そう怒鳴りながら駆け付けた。彼女は、傭兵の男とピエリスの間に、憤然と立ちはだかった。


「森がやたら騒がしいと思ったら、またこんな事をして……」


 そして、ルビアは、妖精達の中に黒い羽のスワロウを見つけ、目を細めた。


「スワロウ……、君もいたのか……」

「ごめん、ルビアちゃん……」


 スワロウは、思わず顔を伏せた。


「……いや。事情は大体分かっている。どうせまた、そこのピエリスに脅されたんだろう」


 ルビアは、スワロウの気の弱い性格をよく知っていた。ルビアは、スワロウの親友であり、彼女の一番の理解者であった。


 ルビアは、いつだってスワロウの味方だった。いじめられているスワロウを庇い、慰め、寄り添っていた。ルビアがスワロウを強く非難する事はなかった。たとえ、今のように、スワロウが“悪戯”に参加していても、ルビアは優しく彼女に理解を示すのだった。


 そして、スワロウは、気の弱い自分自身を恥じながら、ルビアの優しさに甘えるのだった。


「ピエリス!」


 そう叫んだルビアは、ピエリスを睨み付けた。


「お前は……お前達は、どうしても人間達を襲う事を止めないようだな!」

「ふん……そうよ。それが何か悪いの? この森に立ち入ってくる人間に“悪戯”して、何が悪いの? 悪いのは、汚い足を踏み入れてくる人間達じゃない。非難されるべきは、私達の物を勝手に持っていっちゃう人間達じゃない」


 ピエリスは、鼻を鳴らして、そう答えた。ルビアは、ピエリスの返答を聞き、眉間に皺を寄せ、握り拳を作る。


「そうか! なら、私はもう決めたぞ!」

「何を決めたっていうのかしら?」

「この妖精の森で起きている真実を人間達に伝える! この森に現れた“魔物”の正体を明かす! 今までは躊躇っていたが、もう我慢の限界だ。もう人間が殺されるのを黙って見過ごすのは嫌だ。だから、私は決めた!」


 重々しく叫ばれたルビアの宣言に、ピエリスは薄笑いを浮かべる。


「それがどうしたっていうのかしら? どうぞご勝手に、ていう感じなんだけど?」

「また私達妖精と人間達の戦いが始まるぞ。きっと、人間達と本気で衝突し合う事になる」

「望むところよ。今度は、私達妖精が勝利して見せるわ。この森が誰の物が、はっきり分からせてやる」

「正気か……」


 豪語するピエリスに対して、ルビアは唖然となる。二人の間では、妖精と人間の戦力差についての認識が、あまりにもずれていた。ルビアは、今の妖精の力が、人間のそれに劣るはずがないと思っていた。


「黙りなさい、裏切り者。敗北主義者のあんたなんて、私達の仲間じゃないわ。とっとと人間のところにでも行くがいいわ」

「ああ、そうさせてもらう。力に溺れて、傲り昂り、理性を失ったお前達が仲間だなんて、私の方から御免こうむりたい」


 ルビアは、背後で倒れている傭兵の男を庇うように、両腕をゆっくりと広げる。


「このお馬鹿妖精達! 私はお前達を正してみせる!」


 ルビアから、魔力が迸る。彼女の周囲の地面が急に盛り上がり、そして、何本もの蔦が土埃を撒き散らして勢い良く宙に伸びた。宙に伸びた蔦は、倒れている男の周りを囲っている怪物の花々へと、蛇のように絡みついた。


「まずは、この人間をお前達から助ける!」


 怪物の花々に絡みついた蔦は無限に伸び続け、その太い茎に深く食い込み、大きな葉を縛り、花弁の中心で不気味に開閉を続ける粘液の滴る棘だらけの口を封じ込めた。怪物の花々は、突然の蔦に驚き、体を激しくくねらせる。


「大人しくして」


 ルビアのその一声と共に、さらに彼女から魔力が迸り、怪物の花々に巻き付いている蔦の太さが増す。ルビアの力で更なる頑丈さを得た蔦は、完全に怪物の花々の動きを封じる。


 ルビアの力は、妖精の森で一、二を争うほどだ。その実力を、彼女は見せつけたのだった。


「この裏切り者……、誰がお馬鹿妖精ですって……!」


 歯ぎしりをするピエリスは、対抗しようと魔力を怪物の花々に送る。


 ピエリスは、ルビアから勝負を挑まれたと捉えた。ピエリスが倒れている男を襲い、ルビアがそれを守り通せるかの勝負だ。


 ピエリスの魔力を受けて、蔦に拘束されている怪物の花々は、全身を成長させる。茎はより太く、葉はより大きく硬質に、そして、花弁の中心の棘はより鋭さを増す。成長した怪物の花々は、一瞬だけ蔦の拘束力に勝ち、僅かに動きを取り戻し始める。


「どうよ、この裏切り者!」


 だが、ルビアも負けじと蔦に魔力を送る。蔦は、更に太くなり、成長した怪物の花々の動きを再び封じた。


 ルビアの蔦に打ち勝てない怪物の花々を見て、ピエリスはこめかみをひくつかせる。


「このっ……!」


 ピエリスは怒りに任せて、魔力を送る。


 ピエリスは、ルビアに負けるわけにはいかなかった。ルビアはかねてからの宿敵だ。いずれ、雌雄を決しなければならないと思っていた間柄だった。ましてや、大勢の妖精達の目の前での勝負で、もし負けるようなことがあれば、彼女のリーダーとしての威厳は大きく損なわれる。


「殺せ! 殺せ! 食い殺せ!」


 絶対に負けられない勝負に、ピエリスは全身全霊の魔力を送る。凄まじい魔力の奔流が、怪物の花々に注がれる。


 そして、そのようなピエリスの行為が、彼女自身にも予想外な事態を引き起こすことになる。


 ピエリスの魔力を受けて、怪物の花々が成長していく。更に全身を大きくした怪物の花々は、絡まっていた蔦を膨張させた体で引き千切り、拘束から解放される。ピエリスは、怪物の花々が蔦を引き千切るのを見て、勝ち誇ったように笑みを浮かべる。


 しかし、怪物の花々は、蔦を引き千切った後も成長していく。人間の背丈程度だった怪物の花々は、やがて森の木々と同じ程度高さになり__そして、森の木の葉の天蓋を突きつけるほどまで巨大に成長した。


 巨大に成長した怪物の花々は、周囲の木々が邪魔とばかりに、極太の茎をくねらせ、大きな葉を振り回した。怒り狂ったように振り回される怪物の葉によって、疾風が巻き起こり、木々の枝や葉が、引き千切れて飛び散る。


 そんな暴れ始めた巨大な怪物の花々を、妖精達は呆然と見上げていた。誰の目にも、怪物の花の様子がおかしい事は明らかだった。


「__ヤバいわ! 言う事を聞かない……!」


 すると、ピエリスが、焦燥交じり零した。


「皆、逃げて!」


 ピエリスが叫ぶのと同時に、怪物の花の一体が妖精達の方に牙を剥け、飛び掛かかる。ピエリスやスワロウ、その他妖精達は、悲鳴を上げて慌ててその場から素早く飛び散る。木々の葉と葉の間をくぐって、恐怖に顔を引きつらせて激しく羽ばたき、飛んでいく。


 飢えた獣の如く飛び掛かってきた怪物の花が、先ほど妖精達がいた宙を粘液を撒き散らしながら空振りした。少し反応が遅れていれば、妖精達は危うく怪物の花に噛み付かれるところだった。


「……皆、怪我はない?」


 妖精達一同が安全な位置に退避した後、冷や汗をかきながらピエリスは周りの仲間を見渡した。


「ルビアちゃんが……! ルビアちゃんがあそこに!」


 そう叫んだのは、スワロウだった。彼女が真っ青な顔で指を差す先を、妖精達は一斉に見る。


 スワロウが、指を差したのは、先ほどまで妖精達がいた場所。その場所に、赤い羽の煌めきが一つ残っていた。巨大な怪物の花々に囲まれている、ちっぽけな妖精の姿があった。__ルビアだ。


 その赤い羽の妖精ルビアは、倒れている傭兵の男を庇うように両手を広げ、その場に止まっていた。ルビアは戦意を込めて鋭く怪物の花々を睨み付けて対峙しており、退避する様子がない。


「あなた、何しているのよ!? さっさとこっちに来なさい! 逃げるのよ!」


 ピエリスが、驚いた声でルビアに呼び掛けた。強く張り上げた声だった。ピエリスにとって、ルビアは憎たらしい宿敵であるものの、それでも同胞の妖精であることには変わりない。ピエリスは、自分の引き起こした予想外の事態と、それによってルビアが危機に晒されていることに焦っていたのだった。


「いいや、逃げない! 私はこの人間を守る!」


 ピエリスの声を聞いたルビアは首を横に振り、傭兵の男の前から動く事無く、そう答えた。


「はあ!? あんた何言っているのよ! いいからこっちに来なさい!」

「嫌だ、断る!」


 頑なにそう答えるルビアに、ピエリスは舌打ちをする。


「お願い! あのお花達を止めて! ルビアちゃんが死んじゃう!」


 ピエリスの横から彼女の腕にしがみ付いて泣き付いてきたのはスワロウだった。ピエリスは、眉間にしわを寄せて、叩き落とすようにスワロウを振り払う。


「暴走しててもう操れないのよ!」

「そんな……! どうにかして! ルビアちゃんが死んじゃう!」

「黙りなさい! あんな奴、死んじゃえば良いのよ! もう、私は知らないわ!」


 涙を浮かべるスワロウは、遠くのルビアの方を振り向く。


「ルビアちゃん! お願い、逃げて! 死んじゃう!」


 力の限りスワロウは叫ぶ。しかし、ルビアは動かなかった。


 圧倒的な巨体を誇る怪物の花々に囲まれて見下ろされてもなお、ルビアは戦う意思を緩めない。押し潰すように掛かる巨大な影の中で、赤い羽を小さく煌めかせている。


 そして、怪物の花の一体が、ルビアに襲い掛かる。大木のように成長し巨大化した怪物の花は、ルビアを飲み込まんとばかりに粘液塗れの棘を広げて、飛び掛かった。


 圧倒的な巨体を誇る怪物の花を前に、ルビアは退かない。彼女の背後には、気絶して倒れている人間がいる。彼女は、この人間を助けると決意していた。


 ルビアは、もう一度魔力を振るい、迫り来る怪物の花に向けて、蔦を走らせた。今度は渾身の魔力を込め、より太く頑丈な蔦を形成した。


 蔦は、怪物の花の茎に絡み付き、その身体を締め上げる。だが、怪物の花が、勢い良くその巨体を捩じらせると、蔦は呆気なく千切れてしまった。


「なっ……!?」


 自身が渾身を込めて放った蔦を容易く引き千切る圧倒的な怪力に、ルビアは驚き固まる。


 そして、怪物の花は、ルビアの間近に迫り、大きく口を開け伸し掛かった。ルビアは、はっとなって、咄嗟に羽を動かした。


「ルビアちゃん!」


 遠くから青ざめた表情で、スワロウは叫んだ。


 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

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