表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/6

2話

投稿2話目です。よろしくお願いします。

「ヨマ、って呼べばいい? 苗字って私たちの村では使ってないからさ」


レイルは笑顔を俺に見せた。


「ああ、好きに呼んで構わないよ。レイルさんの村は、どれくらいはなれているのかな」


彼女は眉間にしわを寄せた。何か気に触ることでも言っただろうか。


「呼び捨てでいいよ。さん付けされると、背中がムズムズするから」


彼女は笑って、本当に体を震わせた。


「わかったよ、レイラ」


「うん、それでいいよ。で、村の場所だけど、そうだね、ここからだと、星が日が沈む少し前には着くかな」


「そっか。わかった」


「ところでさ、その4匹いる黒い奴、かわいいね。

触っても大丈夫かな」


レイラは俺の護衛のクロヒョウに興味を持ったみたいだ。

まあ、構わないか。クロヒョウが可愛いかはわからないが、あんな化け物みたいなのがうじゃうじゃいる森に、1人で入れるのだし、

クロヒョウくらい怖くないのかもしれない。


「いいよ、噛みつかないから大丈夫だ」


そう俺が言うと

彼女はクロヒョウを撫でる、というより愛でるって感じで、わしゃわしゃ触りだした。


「黒いだけじゃなくて、丸い模様が入っているんだね。

すごいかわいい。毛並みも綺麗」


危なかった。

彼女がクロヒョウに触れるまえに、虫が信号を出してくれ、虫を消すことができた。

彼女はクロヒョウを調べるために、触りたいと言い出したのだろうか。

もう少し警戒した方がいいかもしれない。


「そういえばさ、

さっき、この子からたくさん虫が飛んでいったような気がしたんだけど、気のせいかな」


彼女はクロヒョウに抱きつきながら言う。やはり見られていたか。まあいい。


「とっておきだったんだけど、全部あいつに食べられちゃったよ」


「へぇ、やっぱりあれ、ヨマの虫だったんだ」


「うん。あの虫を手懐けるのに1年くらいかかったんだけど、ね」


残念そうに聞こえただろうか。


「なんか、あいつの口の中に虫が入ったら、苦しみ出したよね。あの虫、なにしたの」


「すごく臭くて、味も最悪なんだ。

悶絶するほどね。

あれをあの量食べさせれば、どんな動物も吐き出すよ」と嘘を吐く。

実際は、皮膚についただけ水膨れになる毒を持つヤケド虫。

見せてもいい切り札として使うつもりだ。


「もういないんだ。残念。

そんなに不味いなら、試して見たかったのに」


「切り札だから、残っていたとしても、食べるのは勘弁してほしいかな」


あえて、まだヤケド虫を飼っているかのように言う。伝わっただろうか。


「そう、なんだ。

じゃあ、また危ないのに襲われないうちに、村に案内するよ。ついてきて」


彼女はクロヒョウから手を離し、歩き出した。

俺はトラに乗りながら彼女の後を追う。今のところ、彼女をトラやクロヒョウに乗せるつもりはない。

自分の逃げ足を確保しておくのは、当然だと思っている。

女の子を歩かせて、男がトラに乗っているのは、客観的に見るとどうなのだろうと思っても、そこは譲れない。

途中で出会った2匹の化け物は彼女が、彼女がすぐに矢で射殺した。

体感的には2時間くらい歩いて、村らしきものが見えた。

木材を並べてできた、5メートルくらいの高さがある塀だ。ぐるっと、見る限り続いている。広そうだ。


「その乗っている奴と、周りの黒い4匹、村にいれた方がいいかな」


彼女は振り返り、俺の目を見ながら訊いてきた。


「入れていいなら、

連れいってもいいかな。

なんか化け物が多いからね。ここに放置してたら、食われそうだ」


本音と建て前を合わせて答える。いざという時の為、こいつらを離れたところに置くのは無しだ。

多少ゴネてでも、こいつらは連れて行く。


「大丈夫だよ、入れても」


そう彼女は言うと、村の塀を最初に5回、少し間を置いて3回ノックした。


「ちょっと待ってね。すぐに開くから」

20秒ほど経つと、人が5人横に並んで通ることができるくらい分、塀が上がる。

塀が上がった高さは3メートルくらいだ。

村は見る限り、等間隔に家が建っており、区画整理がされているようだった。

しかし、人1人として見当たらない。


「人が見当たらないね」


「うん、村人は避難しているだよ。念のためね、外部の人が来ているからさ。気に障ったらごめん」


彼女は笑って謝ると村の中に入った。

ずっとつけて来た、コウモリの反響定位による認識だと、塀の上に壁があり

中の様子は伺い知ることができない。

何もないように見えるが、塀の上には、壁のようなものがあるらしい。

フクロウの視点で見ると、塀の間から見る家の家の数と、明らかに数が違っていた。

罠だと嫌だが、食事も水も用意できていない。

人と関わることは必要だろう。

なんであれ、この村に入らない選択肢はない。意を決して、村へとトラを進ませる。

村にクロヒョウと俺を乗せたトラが入ると、上へ伸びていた塀が降りた。

出れなくなったかもしれない。

少し不安に思いながらも、レイルに尋ねる。


「それで、俺はどうすればいいのかな」


「まずは村長にあってもらうよ。ついてきて」


そう言って彼女は進み出した。

村をキョロキョロ見回しながら、トラの聴覚を使う。

トラやクロヒョウ、レイルの以外に、5人くらいの足音が聞こえる。

レイルの足音も5人の足音も、俺の耳では聞こえないくらい静かだが、トラの耳にはしっかりと聞こえた。クロヒョウを囲うように人がいる。

レイルもそうだ、姿を見えなくする能力を持っているようだ。

これがただの監視だったらいいんだけど。

人里に来たと言うのに気が休まらないのは、慣れてはいるけど、嫌なものだ。

少し歩くと、1つだけ他の家の15倍くらいの大きい家があった。


「ついたよ、さあ入って」


彼女はが家の壁の前に立つと、壁に人が普通に歩いて通れるくらいの大きさの穴が空いた。


「お父さん、流れものがいたから連れて来たよ」


家の中には、ごついプロレスラーのような男が立っていた。

顔はワイルド系のイケメンだろうか。顔はとても白いが、とても若く見える。レイルとは5歳も離れていないと思う。

身長が185センチは超えていそうだ。


「我が家へようこそ、流れもの殿。立ち話もなんです。こちらへ、飲み物を用意してあります」


その雰囲気に似合わず、丁寧な言葉をかけてくれる。


「あの、こいつらはどうすればいいでしょうか」


トラとクロヒョウを目線で指して訊く。


「ああ、そのまま入ってきてかまいませんよ」


そう村長らしき男は言うと、手を一回叩く。すると穴が広がり、今の隊列を組んだ状態で家に入れるようになった。


「どうぞ」


彼について行くと、和室のような雰囲気の部屋に案内された。和室との違いは、木でできた10人がけくらいの机と椅子が置いてあることだ。


「どうぞおかけください」


彼はそういって俺に椅子を進める。レイルは何も言わずに椅子に座った。


「失礼します」


そう言って俺もトラから降りて座る。

しかし、自分の周りにトラとクロヒョウを配置したままにする。それを気にせず、男は話し出した。


「では、最初に自己紹介をしましょう。私は村長のジイラと申します。そこにいるレイルの父です」


「私は」と俺が名乗ろうとすると手で制された。


「失礼ながら、あなたと娘とのやり取りは見させていただきました」


どうやったんだ。正直彼らの狙いもやり方もよくわからない。

答えに困った。


「気を悪くさせてしまったなら申し訳ありません。ただ、言い訳のように聞こえるかもしれませんが、

この村、というよりは、この世界のほとんどすべての村でも街でも国でも、流れものに対しては同じ対応をしています。

盗み見のようなことをするのは、流れものの能力によっては、一般人に対応できないからです」


彼は1度頭を下げ理由を話す。


「いえ、お気になさらず。

確かに外部から来たものに警戒するのは、当然のことです」


笑って、許していることをアピールする。

自分も娘さんを監視していたし、

村に入れてくれているから、そのことを責めるつもりはない。

ただ、敵対していない証拠が欲しかった。


「そう言っていただけるとありがたいです。……ああ、そうだ、せっかくの客人にお茶も出していない。家内がただいま持ってまいります」


そう彼が言うと同時に、レイルの5年後のような妙齢の美女が、お茶を4つと和菓子のような食べ物をトレイに乗せて現れた。

彼女はお茶とお菓子をそれぞれに配膳して、村長の隣に座った。


「私の家内のルイルです」


彼女はぺこりと会釈をした。


「関係のないことかもしれませんが、お二人ともとてもお若いです。レイルさんのご両親には見えません。兄妹のようですね」

と、お世辞じゃなく、単純にその若々しさに驚いたことを伝える。


その瞬間、空気が変わった。


「やっぱりダメね」


レイルが発した言葉とともに、トラとクロヒョウが一瞬で倒れ、俺の首にはナイフが突きつけられていた。

そのナイフはさっきまで、目の前に座っていた男が握っていた。


「ジイラさん、これはどういうことですか」


殺すつもりなら、もうやっているだろう。

わざわざナイフを突きつけたということは、何かしら殺す以外の何かがあるはずだ。


「あなたに部屋を用意しているので、そちらに移ってもらおうと思いましてね」


「せめてお茶とお菓子くらいもらってからでもいいのでは?」


軽口を叩く。


「後で差し入れましょう」


お読みいただき、本当にありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ