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プロローグ+1話

習作になります。暖かい優しい心で見ていただけると幸いです。

また、誤字脱字等ありましたら、ご連絡ください。

感想は励みになります。

「君には異世界行ってもらう。

拒否権はないから」


目の前にある白い玉が、

そう伝えて来た。

辺りは真っ暗で白い玉しか見えない。

夢でも見ているのかと思うが、

体が震え、

夢だとは思えない現実味がある。

とりあえず、

聞いてみることにしよう。


「あなたは誰で、今僕はどういう状況なんでしょう?」


「面倒くさいな。

あー、君はバグってるから消去したいんだけど、この前、

創造神会議で被創造物保護条約が押し通されて、

バグはそれに対応できる世界が引き取ることになったんだよ。

バグを消去すると、他の世界に悪影響が出るだの、

被創造物は大切にしなきゃいけないだの五月蝿いんだ。

説明も送り出す方が

しなきゃいけないし。

ってな、訳。わかったでしょ?

質問はないよね、

じゃ、異世界を楽しんで」


「ちょっと待ってください。

バグってなんですか。

僕は一体どこに行くことに

なるんですか。

きちんと説明してください」


「黙って送り出されればいいのに、

面倒だなあ。

要は、君がこの世界に

合わない能力を持っているってこと。

魂そのものが

この世界のルールから逸脱してるの。

その片鱗として、君、

一度触った生き物は、

運動能力や習性、そういったものの

細部まで全部覚えてるでしょ。

それが君の能力の一部」


「その程度で追い出されるんですか⁉︎

それならもっと、

追い出されそうな能力を持った人は

いくらでもいると思います」


「……君の能力は

"一度触った生き物をコピーして、

いくらでも創り出すことができる上、それを完全に意のままに操れる。

さらにその創り出した生き物と感覚を共有することもできる"ってもの。

こんな能力を持っているのは君だけでしょ。

これを持っていることが、君を異世界に送り出す理由。

君がこれから行く世界には、

君みたいに能力を持った生物が

沢山いるから。

まあ、頑張って。

ああ、そうだ。一番多く使われている言語を使えるようにしてあげるよ。

もういいでしょ、さようなら」


そう言って白い玉は強い光を放った。

思わず目を閉じると、

空気がいっきに変わり、

耳には色々な音が入ってくる。

目を開けると僕は木に囲まれていた。

多分、森の中だと思う。

風と匂いが現実であることを主張する。

そして、生えている草や木が見たことのない色や形をしている。

幹か極彩色で六角棒みたいに角張っていたり、草がネズミのような生き物を締め上げていたりしている光景は初めてみた。

ていうか、角張ってるのは何の意味があるんだろう。食虫植物がネズミを襲ってるのも凄いな。食チュウ植物か。馬鹿らしいことを考えて現実逃避しても、元の場所には戻れない。


「あの光の玉が言ってたことを試さないと」


あまりにも心細く、言葉に出した。

とりあえず、切り替えよう。

あの光の玉が言っていたことを確認することにした。


「能力とやらは、どうやって使うんだろう。出ろ」と言ってみる。


何も出ない。掌をを上に向けて強く、スズメをイメージして出ろと念じる。すると

まるで最初からそこに居たかのように、掌にスズメが載っていた。

スズメはチュンと鳴くと飛び立つ。

自動で動くのか。

降りてこいと念じると、スズメは降りてきた。

タップダンスをしろと思うと、掌の上で跳ねだした。

言うことを聞かせることはできそうだ。

あとは、スズメが見ているものが見えるかだが。

スズメの視覚を俺にも寄越せと念じる。

鏡で見慣れた、良くも悪くもない顔が若干暗い感じで見えた。

なんというか、ダブルスクリーンみたいな感じだ。

俺が見ているスズメと、スズメが見ている俺も、両方が見えている。


「これ、増やすとどうなるんだ」


スズメをもう一羽作り出した。そして視覚を共有すると、トリプルスクリーン的に見える。

これ、俺が処理しきれないかもしれない。

注意を払えるのは2つの視界が限度かも。


「ああ、そうだ、消せるのかな」


消えろと念じると、スズメが消えた。それと同時に見えている世界が1つに戻った。

離れた場所に作り出すことはできるのだろうか。

試してみたができなかった。

とりあえず、動物を作り出すと同時に制御しないとヤバイな。

それができないと、ゾウとかライオンとか、作り出した瞬間に俺が死にかねない。

まあ、でも、動物園での診察もしていてよかった。

能力で呼び出せる動物に、そこそこ強い生き物がいたことはラッキーだった。

何度か動物を作り出し、作り出した時点で制御ができている状態にできた。とりあえず護衛として、クロヒョウを5匹呼び出す。

そういえば、この能力、何かエネルギー使うのか。

まったく体調に異変はない。

良くわからないが、生き残るために、この能力を活用するしかないだろう。

今の目標は、コミュニケーションを取れる生き物を探すことだ。

次に、移動用のベンガルトラを作り出して、トラの背に跨がる。

まずは何か適当な動物に偵察させるか。

どの程度命令を実行できるのか、

実験も兼ねて100匹のツギホコウモリを作り出した。

自分より大きな動物か、川などの水の飲める場所を見つけたら、俺に教えろと命じてみる。

一斉に俺がいることを教えてくれた。コウモリが音で世界を見ている、その感覚がわかって感動したが、少し数が多すぎるな。

俺のことは報告しないでいいことを理解させて、数を80匹に減らして放った。

一斉に地面からコウモリが飛び立ち、四方八方に低空を進んでいく。

数分後には42匹から連絡が来た。

離れているコウモリがどこにいるのかは、なんとなくわかる。

大型の動物に出会ったコウモリがほとんどだったが、1匹、見逃せない映像が見えた。

飛んでくる矢を避けて

逃げている映像だ。

人がいるのかもしれない。

その場所にコウモリとメンフクロウを5匹と2羽作り出し、そのコウモリが襲われている場所に向かわせる。

見えた。

フクロウの視点で見ると、

白い人形のような整った顔をした、

髪の長い金髪の16歳くらいの少女がコウモリを狙って矢を構えているのがわかる。

映画で見たエルフみたいな女の子だ。微かな胸で性別がわかる。

服は未開の部族って感じじゃなく、

きちんとした洋服だ。

ピッタリとしたスタイルがよくわかる丈の短いワンピースを

腰のあたりで帯で絞り、

足はスキニージーンズのようなズボンを履いている。

さてどうするか。

姿を見せた瞬間、攻撃してくる可能性もある。

とりあえず、女の子のいる方に向かって歩いているが、対応が決まらない。すると、コウモリの感覚が消えた。

女の子が矢を放つと同時に何かを呟き、矢が一気に加速してコウモリを貫いたのだ。

そういえば、俺みたいに能力を持った生き物がたくさんいると、

あの光の玉が言っていた。

あの子もそうなのかもしれない。

だとしたら、不用意に姿を見せるべきじゃない。

コウモリは殺されても消えることはなかった。どうやら俺が消さない限り、俺が作り出した動物は消えないらしい。

女の子は、あのコウモリをどうするつもりだろうか。

もし食べるのであれば、嬉しい。実験になる。

自分が作り出した動物を食べることができたら、食料には困らない。

あとは水を確保できれば、生きるのに困らなくなる。

女の子はコウモリの死体を手で取ると、腰の帯から吊り下げた袋の口を開け、突っ込んだ。

だいたい、女の子と俺の距離は80メートルメートルくらいだ。

森の中だが、見つからない為に、これくらいの距離を保ちながら女の子を追う。

フクロウとコウモリをこのまま尾行させて、あの子の住んでいる所を調べるか。

なんか、考えていることがストーカーみたいで嫌だが、しょうがない。

女の子はその後、黒いりんごみたいな形の果物? を取ったり、

腕の代わりにコウモリの羽と鉤爪をつけた猿みたいな生き物を

矢で撃ち落としたりして、

その度に袋に突っ込んでいた。

明らかに、袋の大きさと突っ込んだ物の大きさが合っていない。

そして、狩った獲物と果物みたいなものを、一緒の袋に入れているのはどうなのだろう。

あの袋を調べたいけど、それを考えると、ちょっと嫌な気分になる。

そうしていると、彼女が突然、

俺のいる方向に向けて走り出した。

なんだ、俺に気づいたのか。

慌てて、トラに逃げるように伝える。しかし、彼女との距離は徐々に縮まっているように感じる。

くそ、不用意に近づくんじゃなかった。

すると、コウモリとフクロウが同時に映像を送ってきた。

なんだ、角の生えた巨大なムカデみたいなのが、彼女を追いかけていることがわかる。

俺に気がついたわけじゃなく、あれに気付いて反対側に逃げただけか。

なら、逃げる方向を変えればいいか。トラに右寄りに逃げるように命令する。

そしたら、彼女もきっちり俺と同じ方向に方向を変えた。

確実に彼女は俺に気がついている。

どうやって俺の位置を把握しているかは知らないが、

クロヒョウ1匹に別の方向へ行かせた。

しかし女は迷わず俺を追ってくる。

仕方がない、残りの放ったコウモリを使い、いい場所を探す。5メートルほどの岩壁があり、そこに直径3メートルほどの洞窟を見つけた。コウモリを先行させ、問題がなければそこに逃げ込むか。迎え撃つか。

彼女が、どういうつもりで俺を追いながら逃げているのか、それを見極めながら、対策を取る。

コウモリが洞窟を探索し終えた。

特に何もいないようだ。

洞窟を目指してトラを走らせる。

自分を客観的に見るとダサいよな、トラの背にしがみついているんだから。そのトラを超えるスピードで走ってくる、

女の子の格好良さと比べると落ち込む。

あえて、洞窟の前で待ち構える。

洞窟の壁に後ろ手で触れて、色々仕込んだ。

その後すぐ、女の子は現れた。

話が通じるかわからないが話しかけてみる。


「なんで俺を追ってきた」


「あなたがずっと、私を尾けてきたから、囮にしようと思ったの」


おい、こいつを俺を囮にするつもりだったのか。


「どういうことだ。そもそも、なんでそれを俺に言う」


「あなたが生き残れたら、教えてあげる。

もしあの虫を倒せたら、私の村で歓待するわ」と笑い、姿が消えた。


コウモリの反響定位(エコロケーション)には引っかかっている。

光化学迷彩みたいなものか。

よくわからない奴の前で能力を見せたくないな。

散らしていたコウモリと離れていたクロヒョウを、

視認できないギリギリの所まで呼び戻す。

あの女を見張るように伝えた。

まず、ムカデをどうにかしないとな。2匹のクロヒョウに手をあてると、

能力で200匹ずつ、

アオバアリガタハネカクシ(ヤケド虫)を作り、

クロヒョウの上でじっとしているように命じた。

そしてそのクロヒョウ2匹を巨大ムカデに向かわせる。

できればあのムカデに触れて、ムカデを作り出せるようになりたいが、

あの正体不明の女の前で賭けには出たくない。

あまり能力のわからないであろう範囲で倒す。

クロヒョウに、ムカデが届かないであろう距離を保たせて、威嚇させる。

ムカデは足を止め、体を半分持ち上げた。

キモい。開いた口に向かって、クロヒョウに乗せた虫を100匹飛ばした。

ムカデは虫には注意を払わなかった。

ラッキーだ。口の中にヤケド虫を入れることができた。

自爆しろ。ヤケド虫に命令すると、

体内に虫が入ったムカデは暴れ出す。そこを後ろから、女に対する囮として離れさせたクロヒョウが、一気に駆け寄り、

ムカデの頭に横から噛り付いた。

頭の半分近くが噛み切られ、さらに暴れまわるが、だんだん動きが鈍くなっていき、動かなくなった。


「やるわね。動物を操る能力かしら」

女が姿を見せた。


「かなり長い時間、一緒にいないと操れないけどね」

能力は生命線だと思う。

他人にはあまり知られない方がいい。嘘を混ぜて彼女の問いに答える。

失敗したな、思ったより強くなかった。

ヤケド虫は使わなくても倒せたかもしれない。

本当の切り札は見せていないから、まあいいか。


「約束通り、私の村に連れて行ったあげる。流れ物さん」


「流れ物? なんだそれ」


彼女が使った

不思議な名称について尋ねた。


「あなた達みたいに、異世界から流れてきた生き物のことよ」


「で、なんで俺にあのムカデをけしかけた?」


「流れ物って時々、危険な能力を持っているから、ね。

村に連れて行っても

平気かどうか見ていたの。

ごめんなさい」


そう言って彼女は頭を下げた。

どちらにしても現地人が案内してくれるのはありがたい。


「いやいや、そういう事情なら仕方ない。

村に案内してくれるだけで十分だよ。俺は危険人物とは思われなかったんだよね?」


「ええ、ついてきて。……そういえば自己紹介をしてなかったわね。私はレイル。狩人よ。あなたは?」


「貝蔵世真。動物の医者、って言ってわかるかな」


「医者はわかるけど、動物の? よくわからないわ。それにしてもカイクラヨマ、変な名前ね。長いし呼びづらい」


「ああ、世真が名前で貝蔵が苗字だよ」


読んでいただき本当にありがとうございました。

以下、生物紹介です。


・ツギホコウモリ

地面を歩くことができる上、地面から飛び立つこともできるコウモリ。

(コウモリの中で、地上から飛び立てるものは多くない、というより、この種類だけかもしれない)

さらに反響定位(エコロケーション)と呼ばれる、音の反射で障害物等を探すこともおそらく可能、だといいな。

偵察に最適。

ニュージーランドに生息。

大型のもの(でかいけど同じように地面を歩いていたやつ)はすでに絶滅したかも。


・クロヒョウ

名前通り、黒いヒョウ。普通のヒョウからも生まれることもあるらしい。身軽で、木登りもできる。身体能力がとても高いため、体重差のある動物も狩れる。音を立てずに近づき、その牙で獲物を突き刺すハンター。

生息地が減り、個体数も減っている。


・ベンガルトラ

トラの中で最強と名高く、全陸上生物の中でも、20位以内には入るくらい強いネコ科。

ネット上の噂では尾ひれが多少ついているが、その能力は疑いようがない。人間と戯れ合えば、お菓子でできた人形を、3歳児に渡した時と同じ状態になると思う。

個体数は減少ぎみ。


・メンフクロウ

お面みたいな顔のフクロウ。

かわいいと言う人がいる一方、顔が怖いと言う人もいて、ちっちゃい子が見たら泣くかも。

目と耳がメッチャいい。偵察に便利。

でも、夜行性。主人公は昼間に働かせている。


・アオバアリガタハネカクシ

体に毒を持った羽虫。画像を見るとアリみたいな頭に、体がアリに比べて長い体。筆者的にはキモい。検索はしない方が良さそう。

この虫の毒は、触れただけで火傷したみたいになる。だから通称ヤケド虫。

潰れると毒が皮膚に付く憎い奴(本当の意味で)。

慌てず、騒がず、息で吹き飛ばすのが吉。

こいつの通称ヤケド虫、昔は別の虫のことを言っていたと言う人もいる。

つまり、こいつは2代目ヤケド虫かもしれない。3代目がでないことを祈っている。

(ムカデにこいつの毒が効くかはちょっとわからないです)


*巨大ムカデ

古代を這い回っていたという、アースロペラウラ(体調2〜3mのムカデかヤスデ)をモデルに筆者の想像で作成。

さらにでっかくして4メートルにした。

本来、酸素濃度の問題で、あんまり動けない(もしかしたら呼吸ができずに死ぬ)が、そこを能力でカバーし、トラに負けないスピード(時速80kmくらい?)で走行。しかし、能力が目に見える形ではないため、現地人にも異世界人にも能力を持っていないと思われている。

主人公は気が付いたかもしれないが、どうでもいいからスルー。

本当は強力な毒液を吐くが、その前にヤケド虫に体の中から攻撃され、もがいているところを、クロヒョウに噛みつかれ絶命。100キロくらいの衝撃では傷1つつかないほど丈夫だが、クロヒョウは100キロ以上の力の顎の力を持っていた為、噛み砕かれた。



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