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File4-薫side-
独学。
頭の悪い俺からは考えられない言葉だ。
いくら受験生とはいえ、塾や学校で授業がないのは俺じゃ耐えられない。というか、習熟出来ない。
独学…いや違う、俺が聞きたかったのは独学で勉強したっていうことじゃない。
俺は既に感じ取っていた。
あったその瞬間、俺ら3人が出会っていたと同時に、2人の目を見て分かった。
〝俺も含めて、過去がある〟
母親の虐待時には、母親の目は血走っている。
母親が俺を虐待しているときの兄の目は怯えている。
人の目を見て人の感情をくみ取る。
それが、今までの虐待されている俺が唯一出来るようになったことだった。
俺も含めて、初めて会った俺達の目は、ものすごく怯えていた。
人と接するのが怖い。
それは、そういう思いがある人以外は決してなることのない、〝目〟だった。
「独学って、辛くないのか?」
過去は?なんて聞けるはずもなく、俺は質問をした。
〖最初は辛かったけど、慣れたよ。元々本を読んだり勉強をしたりすることは好きだしさ。〗
「そうなのか、すげーな。」
感心する。本当にすごい。
そんなことを思いつつ、聞けるはずのない思いを抱えていた。