File4-飛鳥side-
今回から、各登場人物視点でお送りします。
<飛鳥side>
星の道を辿った先には人がいた。
信じてよかった。
僕は言葉が発せないからなおさらだ。
人がいると、本当に助かる。
「あの…」
女の子、紗楽さんが何か聞きたそうにしている。
僕は首を傾げた。
「あぁ、えーっと、貴方の名前は…」
あ、そっか、僕の番か。
今まで人と話したことなんてほとんどなかったから、自己紹介のタイミングすらよく分からないのである。
僕は紙とペンを取り出して、自分の名前と…名前と…僕は、一体何を書けばいいのだろうか。
みんなみたいに学校に行っている訳でもないし、趣味があるわけでもない。
あぁ、そうか。ちゃんと伝えなければならないことを、伝えればいいのか。
〖僕は斉藤飛鳥。僕は失声症という病気にかかってて、言葉が喋れないんだ。あと、みんなと上手くコミュニケーションを取れないかもしれないけど、よろしくね〗
読み終わったあと、2人は悲しい顔をした。
「失声症…声が、出ない。」
男の子、西島くんは言った。
「声が出ないのって、辛いことだよな…」
〖僕は、もう慣れちゃったからさ。とても小さい時からずっとこうだから〗
「でも、声がない方がいいって思う時だってあるじゃない」
ぽつりと、紗楽さんが呟いた。
その言葉に、闇を感じた。
紗楽さんにも、何かあったのかもしれない。
もしかしたら、僕より酷いことなのかもしれない。
「紗楽さん…何か言った?」
薫さんが尋ねる。
「んーん、何でもない!」
「そう?」
西島さんは鈍感だ。
彼女に闇があるのは確実だった。
言葉が話せない分、他人の顔色ばかりうかがい、それに従い続けた結果、人の心を読む力が発達したらしい。
もちろん、僕は口出ししない。
初対面というのもあるが、やはり自分の意見を言うのは苦手だ。