File3「言葉と裏切り」斉藤飛鳥
家にはお金が無い。
だから、僕は学校に行けない。
年齢にしてみたら高1の僕だけど、教養がないわけじゃない。
学校に行けないとは言ったが、図書館なら行けた。だから、僕はいつも図書館に寄って本を読む。図書館なら、お金がかからない。
いつも、本を読んでいた。
ある日
僕はいつものように図書館に行った。
気がついたら時計はPM6:00を指していた。
閉館の時間だ。
閉館の音楽が鳴り響く。
やけにいつもよりうるさい気がした。
僕は図書館を出た。
借りた本を手に、家に帰る。
「あれ、飛鳥じゃん」
…あぁ、爽香。
「あれ?本持ってどうしたの?」
僕は言葉を発することが出来なかった。
小さい頃、両親を亡くした。
そのショックで、その日から声を失った。
失声症というらしい。
「ねぇ、警察行こ」
…え?
「それ、盗んできたんでしょ?」
違う、そんなんじゃない。
「見たの、盗んでるとこ。」
違う、盗んでない!!
「ほら、行くよ!!」
手を引かれるが、必死に抗う。
その顔は…口角が上がり、にやけていた。
必死の抵抗もあって、警察沙汰は免れた。
…僕、爽香に裏切られたんだ…
夜、星が出てる。
僕は泣いた。
声は出ない。
僕に声があったら、こんなことにならなかったのに。
星に願う、声をください、と。
そして
今日失った、心をください、と。