File2「虐待」西島薫
高校3年、受験生。
受験生なのに、センター試験控えてるのに。
手を、止めてくれない。
「あんたなんて、産む気なかったのよ!!」
バンッ!!
俺は、突き飛ばされた。
足には無数の痣、傷。
俺は抵抗出来ない。
昨日も俺は母親から虐待を受けた。
「あんたなんか死ねばいいのよ!!」
ロボットのように、感情のない声。
母はいつもこの言葉を叫ぶ。
今日の舞台はお風呂場。
浴槽の蓋は開いている。
そこには刃物があった。
俺は殺されるのだろうか。
「早く死になさいよ…!」
母がまた叫ぶ。
そんなに死んで欲しいのならその刃物で俺を殺せば?
ドンッ!!
突き飛ばされた。
…浴槽に。
「…っ」
身体が動かない。
激痛が走る。
頭が、痛い。
どうやら俺は、頭から浴槽に落ちたらしい。
頭に熱い感覚がした。
軽く血が出てる。
身体が、痛い。
いや、それだけじゃない。
激痛とはいっても、そこまで痛みは感じない。
痛いのは、心だ。
深く深く傷ついた心は、俺を蝕む。
悶えてる間に、母はいなくなっていた。
心の傷を変えるために
傷は身体にあった方が楽で。
俺は、頭を切った刃物で、リスカをした。
その日の夜。
外に出たくなったから、俺は外に出た。
身体には激痛。
唯一動かせる左足で、足をひきずりながら外へ向かう。何度も転んだ。
小さな傷が出来た。
寒い夜空の中、俺は願った。
愛がほしい。
誰からでもいい、無償の愛を。
そして、俺は大泣きした。
死ぬことは逃げることだ。
そんなの、分かっていた。