1431年、火あぶりで処刑されるはずのジャンヌダルクを救い出して1871年に連れていってしまった!
公望の考え出した、敵の大砲をぶん取るという作戦は、見事に効を奏した。
イギリス軍の1つの大砲が、使えなくなってしまったために打ち捨てられ、それがフランス軍の手にわたった。
それをもとにしてフランス軍も大砲を製造し、実戦配備した。
オルレアンを解放する戦いは、ここが英仏百年戦争の天下分け目、といわれる戦いで、見事にイギリス軍を撃破したフランス軍。
しかも、勝った勢いで、それまでイギリス軍に占領されていた地域を、次々と奪還していった。
ここまではよかったのだが、ここから、あの悲劇へと向かっていくことになる…。
わずか19歳で、理不尽な死を…。公望は無性に、それが許せなかった。
「どうすれば、あの少女を助け出せるのか…。」
しかしなぜ、公望はジャンヌに、そのような考えをいだいたのか。
もしかして、恋…?
それも、禁断の恋というやつか。
かりにも遠い祖先の代の人物に恋をするなど、それこそ、逆縁ということになってしまわないか?と。
しかしそれでも公望は、無性にジャンヌを助けたいと思っていた。
「ジャンヌ…。」
「どうしたの?公望さん…。」
すると公望はいきなり、ジャンヌを抱き寄せる。
そして、ジャンヌのその髪をなでながら、抱き寄せ、キスをする。
「公望さん…。あっ…、あっ…。」
2人はこうして、いつまでも、いつまでも、抱き合っていた。
公望は無類の女好きとしても知られていたが、よもや、あの有名な少女騎士にまで、手をつけるとは…。しかしそれが、公望なりの愛情表現だったのだ。
そして2年の時が流れた、1431年のことだった。
「大変だ!ジャンヌが、ジャンヌがイギリス軍に捕らえられた!」
ジャンヌはイギリス軍によって、魔女の疑いをかけられ、捕らえられてしまう。
イギリス軍からすれば、ジャンヌが現れたことがきっかけで、それまで勝っていたものが、たちまち形勢逆転され、敗走を繰り返すようになっていったのだから。
だから、何らかの理由をつけて、排除しなければと考えていた。
そして、宗教裁判にかけられ、魔女だという判決が下され、火あぶりの刑に処せられることが決まった。
フランス軍の騎士たちはジャンヌを救出するべく、奔走していた。
「大変なことになった。
ジャンヌが火あぶりの刑に処せられるそうだ。」
「な、なんだって!?」
「ジャンヌが魔女だなんてありえない。
一刻も早く我々で救出するんだ。」
そこで手を上げたのが、公望だった。
「私が、ジャンヌ・ダルクを、イギリス軍の手中から救出いたします。
それには大変よい考えがあります。」
公望があみ出した秘策とは…?
そしてこちらは、今まさにジャンヌの処刑が行われようとしていた広場。
周囲にはイギリス軍の兵士たち、執行人、それとこの様子を見届けようという野次馬たちが集まっていた。
ジャンヌは手足を縛られ、十字架にかけられていた。そして足元には、藁が敷きつめられていた。
この藁に火をつけて、火あぶりにしようというようだ。
「よし、火をつけろ!」
イギリス軍の兵士がそう命じた次の瞬間、何者かが忍び込んできた。
「うわっ!」
イギリス軍の兵士たちと、執行人たちを突き飛ばしたその何者かは、ジャンヌを縛りつけていたロープを切り、
そしてそのまま、ジャンヌを連れ去っていった。
その何者かこそ、公望だった。それからまもなく、
「公望さん…。」
「いいから、ここは逃げるんだ。」
「逃がすな!追え!追いかけろ!」
「うわあっ!」
公望は追っ手を振り切り、同志のフランス軍の兵士たちが足止めをしている間に、まんまとジャンヌを連れて、逃げ去ってしまった。
本当ならこのまま処刑されていたはずのジャンヌ・ダルクを、公望はあろうことか、救出して、生かしておくことにしたのだった。
そして、気がついたら、逃れ逃れて、2人きり。
もう、追っ手も追いかけてはこない。
その時だった。目の前に光の入り口が現れた。たぶんこれが、元の時代に戻るための入り口だろう。
「よし!それじゃあ、飛び込むぞ!」
公望とジャンヌの2人は、その光の入り口に飛び込んだ。
キュイーン!
そして、気がついた時には、日付は1871年になっていた。やれやれ、どうやら2人して、元の、いや、ジャンヌ・ダルクからすれば遥か未来の時代の、1871年に、戻ってきたようだ…。
なんか、表現が多少曖昧だが、まあいいか。
「さてと、とりあえずは戻ってはきたのだが…。」
これからどうしようかと、まずは考えねばならなかった。しかし、公望には迷いはなかった。
「ここが、この公望が、本来生きるべき時代なんだ。
ジャンヌ、ジャンヌも、これからはこっちの時代で生きていくことになるんだよ。」
それは、中世の騎士であるジャンヌが、この近代の時代で生きていく、ということになるのだが…。




