中世の騎士にフレンチトーストを
公望は英仏百年戦争の時代に来ていたが、
本当のことを言うと、西園寺公望は本来、この時代にいるべき人間ではない。
一刻も早く本来いるべき時代に戻り、本来成し遂げるべきことを成し遂げなければならない。
「そうなんですか、元の時代に戻れないで、困っているのですね…。」
ジャンヌも心配そうに話していた。
しかし、それならそれで、未来のものを中世の時代に持ち込んでみたら…。
「フレンチトースト!」
公望は『フレンチトースト』と唱えた。すると、『フレンチトースト』が姿を現した。
「これはフレンチトーストという食べ物ですよ。
我々の時代では、このようなものを食することが、流行りとなっております。」
他の騎士たちも集まってきていた。この部隊では平民出身でも力量があれば、チャンスを得られ、重要な作戦にも起用してもらえるのだという。
ちょうど食事の時間のようだ。食事は、公望が持ち込んだフレンチトーストと、肉料理、サラダ、それと、ワインだ。
戦場でもワインは欠かせないようだ。
それに、腹が減っては戦はできぬというのは、どこの国に行っても、世界共通のようだ。
「おお!うまい!このフレンチトーストというのは、今まで食べたことのないような味だぞ!」
「そう言ってもらえて、ありがたい。では私は、この時代のワインをいただこう。」
「ははは、ワインはもっと古い時代からあったのだよ。」
食事をしながら、話は盛り上がる。たわいのない話をしながら盛り上がるというのは、普段戦場で戦っている騎士たちには、なかなかないことのようだ。
さて、公望は直接は戦場には赴かない。
直接戦場に赴いたとして、万が一こっちの時代で戦死した、なんてことになったら、それこそ歴史の流れがおかしなことになってしまう、と考えた末の結論だった。
公望の役割は、前線で戦う騎士たちや、兵士たちの食料や武器を調達し、支給するという役割。いわば、後方支援だ。
「さて、フレンチトーストに、シャンパン、白ワイン、それとバーガンティの赤ワイン、
そうだ、このカヌレもすすめてみようか。この時代の騎士たちは、気に入るかな…。
それから、できれば長期の戦場での滞在となるから、保存が効くようなものがいい。」
そうこうしているうちに、いよいよオルレアンを解放する戦いが迫っていた。
公望はこの戦いの結果を知っているので、あえて見届けるだけ。
「これが結果通りにいっていなかったら、それこそ、その後のヨーロッパの歴史は、めちゃくちゃになってたかも。
だから、このままフランス軍が形勢逆転するのを、見ていればよいと思ったのだが…。」
騎士たち、兵士たちの武器や、鎧などの準備もできた。
「これで準備は整った。あとは勝利を祈るだけだ。神よ。フランスを救いたまえ。」
公望は、間接的にはフランス側に肩入れしていたようだ。
一方こちらは、1871年のフランス、パリ。
こちらではちょっとした異変が起きていた。
「フレンチトーストは、英仏百年戦争の頃には、既に騎士たち、兵士たちによって食されていたという。
あとは、カヌレというケーキも、既にその頃から食されていたという。
なお、フレンチトーストとカヌレを、フランスをはじめヨーロッパに広めたとされるのは、
なぜか、東洋風の風貌の人物だったという。
その人物は、英仏百年戦争が終了した後、なぜかジャンヌ・ダルクとともに、風のように姿を消したという。
その後、その2人の行方は知れないという…。」
古い書物に、なぜかこんな記述があることが、発見されたのだった。