ジャンヌ・ダルクと公望との出会い!
公望はただただ、途方に暮れるばかり。
だいたいからして、掲げられている旗が、イギリスの旗とはいっても、実際にはまだ今のグレートブリテン連合王国の、あのユニオンジャックの旗ではなく、イングランドの十字の旗なのだから。
「さて、これからどうしようかな…。」
公望は魔法を唱えるような手の動きをしていた。
「まさか、実際に魔法を使ってみて、なにか物が現れたりするわけでも、ないんだけどな…。」
イングランドの兵士たちがうろつく。
当時イギリスはまだ統一されておらず、
イングランド、スコットランド、ウェールズ、そしてアイルランドと、まだ国が分かれていた時期だった。
いやもともと、イングランドが、スコットランド、ウェールズ、アイルランドを併合したから、
グレートブリテン連合王国として成り立ったという経緯があるが、
この時代は、フランスを占領して、イングランドの国王が2つの国の国王になろうということを企てていたようだった。
そんなさなか、公望は偶然、1人の鎧を着た少女を見かける。
もしや、あの少女は…!
いや、そんなはずはないか。しかし、もしかしたら本当に、あの少女かもしれない…。
すると、その鎧を着た少女の方から近づいてきた。
「あのー、すみません。あなたは、このあたりでは見かけない顔のようですね。」
その様子を見て、一目でわかった。
どうやらこの少女こそ、あのジャンヌ・ダルクのようだ。
「それがしは、西園寺公望と申す者にございます。
この国より、はるか東の島国から、はるばるこの国までやってきたのであります。」
こうでも言っておかなければ、相手も納得しないだろう。
何しろ本当に、はるか東の島国、日本から海を渡って、このフランスのパリにやって来たのだから。
「私はジャンヌ・ダルク。見習いの騎士です。」
やっぱりそうだ。オルレアンを解放し、フランスを救うことになる、あのジャンヌ・ダルクだ。
それならば、さっそく城に向かわなければならない。
しかし、さすがにどうやら、腹が減ったようだ。
文字通り、腹が減っては戦はできぬということで、
「カヌレカヌレ…。」
このような魔法を唱えてみた公望。
すると、あら不思議、あの小さなケーキのカヌレが現れた。
魔法というか、ちょっとした手品のような感じで、カヌレが2つ登場した。
公望はジャンヌ・ダルクに、そのカヌレを1つ渡し、もう1つは自分が食べることにした。
「いただきまーす!」
公望とジャンヌはカヌレをほおばる。するとジャンヌが、
「おいしいですね!あなたの国ではこのようなおいしいものを食べているのですか?」
と、尋ねる。公望はその問いにこう答える。
「じつはですね、この私は未来の時代から、こちらの時代にやってきたというか、飛ばされてきたんですよ。」
公望はどうにか説明をする。
「ええっ!?未来の世界から来られたんですか?」
「さようです。未来の世界では科学技術なるものが発展を遂げ、人々の生活は豊かで便利なものになっておりまするぞ。」
「未来の世界とはそのようなところなのですか…。
私もぜひそんな未来の世界に行ってみたいですね。
それでは、西園寺公望さん、よろしくお願いいたします!」
ジャンヌは公望に、にっこりと微笑んだ。
それから、城の緊急会議の場面に移る。
「いよいよ我々はオルレアンを解放するわけだが、イギリス軍は大砲などを持っておる。
その前に、何か秘策を立てなければ…。しかしどうする…?」
まず、国王らしき人物が語る。国王自らが鎧を身にまとっている。
あれが当時の国王か…。
公望もこの緊急会議に参加していた。そして手を上げた。
「ここで提案があります!その提案とは、敵の大砲をぶん取ることです!」
「なんと!?敵の大砲をぶん取るだと!?
そんなことが本当にできるのか!?」
「はい、敵の大砲をぶん取り、こちらの大砲として扱うのです。
そうすれば勝機が見えてくるでしょう。」
公望はこのように提案する。実際、この戦いをきっかけにして、フランス軍は反転攻勢に転じるのだから。




